今回は自給的農家のシミュレーションを作ってみました。
①では設定の説明をし、次回の②でコードを説明します。
農家行動の理論的な説明は今回省きました(本当は書きましたが、読むのがかったるいから消しました泣)。
##今回やりたいこと
前回は、1農家と1消費者が存在して、市場を介して2者が農産物の生産と消費を行うシミュレーションを行いました。価格の変動を表すために、前期消費量の多い作物の価格が約1.01倍上昇し、前期消費量の少ない作物の価格が約0.99倍低下することにしました。
しかし、①次期価格を算出する際に均衡価格を計算しなかった点、②生産消費行動の影響を受けて価格が変動→生産消費行動の変化→価格が変動…というループが起こり、価格や生産・消費量が安定しなかった点
で問題が生じたので、今回は価格変動を単純化しました。
また、新しい要素として、今回は「自給農家行動」をシミュレートしてみます。
以上の状況を反映させるために、以下のステップを踏みました。
①class「Autarky(自給的)」を作る。
②初期価格で価格を固定して生産・消費行動をさせてみる。
③換金作物の価格増加後の反応をみる。
④消費財の価格低下後の反応をみる。
⑤換金作物の価格増加、尚且つ消費財の価格低下後の反応を見る。
##自給的農家に関する理論
日本には自給農家があまりいないので、自給農家の存在理由が意味不明だと思います。しかし、一定の条件下では自給的農家が生じる可能性があります。その理論を説明しようと思いましたが、長いのでやめました。詳しくはJanvry(1991)を見てください。
まあ、ざっくりいうと、市場参加が困難な自給的農家は自分が食べる主要穀物を自分で作るということです。
##クラス(登場人物の説明)
###クラスAutarky(自給農家)
特徴1:
自給的穀物Aと換金作物Bを生産する。
特徴2:
労働力と固定資本という生産要素を自家保有しており、AとBの生産に振り分ける。また、労働力の一部は農外労働に振り分けて賃金を得る。
特徴3:
①ランダムに生産要素を振り分けてAとBを生産し農業収入を得て、同時に農外労働によって農外賃金も得る。②農業収入と農外賃金に基づいて嗜好品oを購入し、その時の効用を計算する。③指定回数①と②を繰り返し、効用が最も大きかった時の生産要素配分を記録する。
##クラスMarket(価格変動を起こす神のような存在)
特徴1:
換金作物Bの値段を50円上げる。
特徴2:
嗜好品oの値段を50円下げる。
##生産関数と利潤関数と効用関数
###生産関数
Q_A = 3*L_A^{0.3} +K_A^{0.7} \\Q_B=1*L_B^{0.7} +K_B^{0.3}
L: 労働力(L=LA+LB+Ln+l)
K: 固定資本(K=KA+KB)
※Aは穀物、Bは換金作物です。一般的に、穀物は資本集約的であり、園芸品目などの換金作物は労働集約的だと思うので、以上のようなパラメータ設定にしました。
###利潤関数
\Pi = p_B*Q_B+w*L_n
Ln: 農外労働に費やした労働力
w: 農外賃金
pB: Bの価格
QB: Bの生産量
###効用関数
U = Q_A^{0.2}+C_o^{0.45}+l^{0.35}
QA: Aの生産量(自給量)
Co: Netflix等の嗜好品の消費量
l: 余暇時間(l = L-LA-LB-Ln)
※パラメータは適当にそれっぽく割り振りました。また、予算制約(po*Cp < π)が満たされています。
##価格の変化
1~10期:初期価格で効用最大化を行う
11~20期:Bの価格が50上昇して、効用最大化を行う
21~30期:oの価格が50低下して、効用最大化を行う
31~40期:Bの価格が50上昇し、尚且つoの価格が50低下して、効用最大化を行う
##締めの言葉
以上の条件設定の下、シミュレーションしてみました。
色々と細かく改良したい点は多いですが、少しずつ進めていきましょう。
なお、先取りして今回のシミュレーションの問題を言っておくと、ズバリ最適化問題のやり方です。
じゃあ、また次回あいましょう。
##参考文献
~論文~
[1]Alain de Janvry, Marcel Fafchamps and Elisabeth Sadoulet(1991) “Peasant household behavior with missing markets: some paradoxes explained” Economic Journal. Vol.101, pp.1400-1417.