はじめに
現代のサイバーセキュリティの脅威の中で、特にアカウントの侵害に繋がる攻撃手法は多様です。その中でも「辞書攻撃」「パスワードスプレー攻撃」「パスワードリスト攻撃」「ブルートフォース攻撃」は特に一般的な手法として知られています。本記事では、それぞれの攻撃方法の特徴や違いを解説し、対策方法も紹介します。
1. 辞書攻撃(Dictionary Attack)
概要
辞書攻撃とは、一般的に使われている単語やフレーズをまとめたリスト(「辞書」)を利用して、順番に試行することでパスワードを割り出そうとする手法です。多くのユーザーが単純なパスワード(例: "password123", "welcome2023" など)を使っているため、これらを短時間で試すことができます。
特徴
辞書リストを利用するため、単語ベースのパスワードに対して効果的。比較的早い段階で成功することが多いが、複雑なパスワードには弱い。
対策
簡単な単語や一般的なフレーズをパスワードに使用しない。パスワードマネージャーを利用し、ランダムで複雑なパスワードを生成・管理する。
2. パスワードスプレー攻撃(Password Spraying Attack)
概要
パスワードスプレー攻撃では、多数のアカウントに対して少数の一般的なパスワード(例: "password", "123456")を試す手法です。具体的には、攻撃の時刻と攻撃元IPアドレスを変え、アカウントロックを回避しながら、よく用いられるパスワードを複数の利用者IDに試し、ログインを試行します。
この手法は、同じアカウントに対して短時間に多くのパスワードを試すのではなく、広範囲のアカウントに対して少量のパスワードを試すことで、アカウントロックを避けることが目的です。
特徴
多数のアカウントに対して一斉に攻撃を行う。単純なパスワードを使用しているアカウントがターゲットになる。ロックアウトメカニズムを回避するため、比較的ゆっくりとした速度で行われる。
対策
アカウントに対する多重認証(MFA)を有効にする。簡単なパスワードの使用を避けるようにユーザーに啓蒙する。一定回数のログイン失敗後、アカウントロックを設定する。
3. パスワードリスト攻撃(Credential Stuffing Attack)
概要
パスワードリスト攻撃は、他のサービスやサイトで漏洩したユーザー名とパスワードの組み合わせ(「クレデンシャルリスト」)を利用し、他のサービスに不正ログインを試みる攻撃です。ユーザーが複数のサービスで同じパスワードを使い回している場合に、成功率が高くなります。
特徴
既に漏洩したユーザー名・パスワードを利用する。ユーザーが異なるサービスで同じパスワードを使っている場合、効果的に攻撃が行える。成功率は漏洩データの品質に依存する。
対策
各サービスで異なるパスワードを使用する。パスワードマネージャーを使用して複雑かつユニークなパスワードを生成する。多重認証(MFA)を導入し、パスワードのみではログインできないようにする。
4. ブルートフォース攻撃(Brute Force Attack)
概要
ブルートフォース攻撃は、可能なパスワードのすべての組み合わせを順番に試す方法です。コンピュータの処理能力に依存し、大量の試行が行われます。複雑なパスワードでも、時間さえかければ破られる可能性がありますが、組み合わせの多さが成功率に影響します。
特徴
すべてのパスワードの組み合わせを試すため、非常に時間がかかることがある。パスワードが長く複雑であればあるほど、成功するまでにかかる時間が増える。処理速度の向上に伴い、短いパスワードは破られるリスクが高まっている。
対策
長く複雑なパスワードを使用する(推奨:12文字以上)。一定回数のログイン失敗でアカウントを一時的にロックする。キャプチャ(CAPTCHA)や他のボット対策を導入する。
まとめ
本記事では、辞書攻撃、パスワードスプレー攻撃、パスワードリスト攻撃、ブルートフォース攻撃の違いと、それぞれの対策について解説しました。パスワードの強度を高めることや、多重認証を導入することが、これらの攻撃に対する強力な防御策となります。インターネットの世界では、自分のセキュリティを守るために、少しの注意が大きな差を生むことを忘れないようにしましょう。