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「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?を読んでみた

Last updated at Posted at 2024-12-03

本の紹介

今回は、ミノ駆動さんもXで紹介していたこちらの本を読んでみた感想を残そうと思い執筆しました!

チーム開発をする中で発生するコミュニケーションの困難に立ち向かうためにどうしたら良いかの助けになる一冊だったので、この感想記事を読んでみて気になった方はぜひ購読してみてください!

書籍リンク

前置き

あくまで筆者の感想文かつ備忘録的な立ち位置なので綺麗な要約文ではないためご容赦ください。
また、書籍の内容自体も絶対な正解とはならないと思うので面白い意見・結果の一つとして捉えていただければ幸いです。

概要

読んでみて(私にとって)重要だった箇所

この書籍では、タイトルにもあるとおりコミュニケーションにおける認知度合いの差異について言及されています。「言ったのに伝わらない」は「丁寧に説明したら伝わる」というのは思い込みであり、受け手の持つそれぞれのスキーマによっては同じセリフでも異なる解釈となります。

例えば、「猫って可愛い」と言われた場合

  • ペットの猫が可愛い
  • ハローキティみたいなキャラが可愛い
  • トムとジェリーのように可愛い

など、人それぞれの前提条件が違うために同じ言葉を受け取っても意図が全く異なることがあります。

この書籍でいう「スキーマ」とは個々人が持つバックグラウンドです。
経験や学習、興味関心、生活習慣で変わっていきます。

人間の記憶の曖昧さ

先ほどスキーマの話がありましたが、記憶の保存のされ方についてもスキーマが強く働きます。
例えば、AさんがBさんに語りかける時、Aさんにとってはとても重要なものだとしても、Bさんは同程度重要だと思っているのでしょうか?
人間は感情を伴う記憶の方が定着しやすいのもあり、この場合Aさんは「言ったのに」となるもののBさんは「言われたっけ?」となってしまいます。

記憶のすり替え

人は「正しい」を誤解してしまいます。書籍には以下のように記されています。

例え嘘をつくつもりがなくても、誰かの発言や自分の願望、感情、そして自身のスキーマによって、記憶は影響を受け、あなたにとっての「事実」がいつの間にか作り上げられてしまう P52

そう言われるとどうでしょう?
自分の意見とメンバーの意見が対立した時、リーダーが自分と同じ意見だった場合それを「正しい」と確定させてしまってはいませんか?
今自分で場面を想像しても、「正しい」と判断してしまいそうです。

そこに逆らって「自分らではなくメンバーの方が正しいのではないか?」とワンテンポおいて考えることができるのでしょうか?この場合メンバーの人も「二人が言うならそうか」と飲み込んでしまわないでしょうか?

生成AIが記憶の曖昧さに拍車をかける

ChatGPTのような生成AIの途上により、我々はとても恩恵を受けていると思いますが、それが人間の「正しさ」の判断をより一層鈍らせています。
著書にもありましたが、私もクライアントやエンジニアではない友人に「ChatGPTはこう言ってたから」という説得のされ方をされたことがあります。

しかし、ChatGPTは必ずしも正解のみを学習して答えを出しているわけではないことと、極力回答をするようにしているため間違った情報でもそれらしい理由をつけて回答してしまいます。
「根拠となる情報もセットで表示して」と言った場合リンクや参考サイトを添付してくれるのですが、現実に存在しないものを提供される場合があります。

人間の記憶メモリの少なさ

諸説あるかもしれませんが、人間は1GB程度しか記憶容量がないようです。
しかし、日常は情報で溢れています。そのため人間には「不要なものは忘れる・記憶の奥にしまう」と言う能力が元からあります。その取捨選択はその人のスキーマによって変わってくるのです。

身近に存在するバイアス

書籍の中で、さまざまな認知に関するバイアスが紹介されていました。
時間のない方はここだけ目を通すだけでも意識が変わると思います。

代表性バイアス

ある人が印象の強い行動をした時、そのグループ全体がそうだと思い込んでしまうこと

過剰一般化

少ない代表的な事例を全てに当てはめてしまうこと
子供の言う「みんな持ってる」はよく聞いてみたら2~3人程度であるような事象

エコーチェンバー現象

SNSなどで同じような意見を見聞きすることで自分の思い込みが強化されること
人間は本能的に都合のいい意見を取り入れやすい

信念バイアス

自分が正しいと思っていることは他の人にとってもある程度正しいと思い込むこと

相対主義の認知バイアス

多様性を認めすぎるが故、全ての物事について「それぞれ違っていい」と判断してしまい重要な判断ができなくなってしまうこと

AかBかのバイアス

はっきりさせたいがため、AかBで決着をつけようとしてしまうこと
抽象的な議論の中でAかBかの2択を迫ってしまうと中間層の人が置いてかれてしまう

流暢性バイアス

スムーズにわかりやすく説明されるとその内容を信じやすくなること

人間の意思決定について

上司に判断を押し付ける

上司やPRのレビュワーに対し、「確認をお願いします」と一方に投げてしまったり、逆に部下やレビュイーから投げられたことはありませんか?
レビュワーは確かに「確認してくれる人」と捉えられるのかもしれませんが、自分ですべき意思決定や判断までぶん投げてはいけません。
逆に「それくらいセルフチェックしてよ」と言う項目があれば投げ返すのも優しさになると思います。

ファスト思考スロー思考

  • 直観や感情で選択するファスト思考
  • 熟考し、時間をかけて決定するスロー思考

とある研究の中で、上記の「ファスト思考」は「おおむね正しい」と言う結果が出ています。
しかし、裏を返すと「たまに間違えている」と捉えることができます。
そのため、テストの見直しやPRのセルフレビューにように自分の思考を振り返ることが重要です。

感情による判断

「仕事上のディスカッションに感情を持ち込んではいけない」「自分は感情を出さず論理的に結論を導いている」と思っている方はどのくらいいるでしょうか?

しかし、人間は選択や意思決定の多くは最初に感情と共に決断し、後で論理的な理由を肉付けしているに過ぎないケースが多いようです。
なので、実はほぼ最初の直観で意思決定をし、後から理由を用意して意思決定をしています。自分が伝える側に回るとすれば、「理由を添えてしっかり伝える」ことをすれば相手は納得しやすいと言えます。

忖度は目的を狂わせる

忖度は「他人の心をおしはかり、それに配慮すること」と言う意味です。いいことのように聞こえるのですが昨今の使われ方はネガティブな理由として使われがちがと思います。

ビジネス上で上司と逆の意見を主張することは難しいかもしれません。しかし、忖度の「配慮すること」を強くしすぎるとビジネスにおける成功から道を外してしまいます。
配慮し過ぎた挙句やるべきことを見失ってしまわないようにだけ気をつけましょう。

コミュニケーションの達人の共通点

最後に、書籍のまとめとしてコミュニケーションで気をつけるべきポイントを押されられている「コミュニケーションの達人」のセクションについて紹介して終了とします。

① 失敗を成長の糧にしてる

  • 他人より多くの失敗談を記憶している
  • 失敗談と、そこからの気づきと反省をしっかりと持っている
  • 失敗を「分析・修正」とセットで扱えている

よく「失敗は成功のもと」と言いますが、失敗し続けているだけだと「学習のしない人」と思われてしまいかねません。「どこが悪かったのか?」「どう改善しようか」まですることで「失敗が成功につながる」と言えます。

② 説明の手間を惜しまない

  • フィルター(スキーマ)が違っていても伝わるように伝える
  • その前提であるフィルターの違うを受け入れる
  • 暗黙の了解は使わない
  • 人間は前提として分かり合えないものであると理解している

③ コントロールしようと思わない

  • 相手といい関係性を築く
  • 相手の成長を意識してコーチングするように接する

④ 聞く耳をいつも持つ

  • 自分にとって耳が痛い話にもしっかりと聞く耳を持つ
  • ネガティブな報告を受けた時ほど相手を褒める・感謝する

嫌な報告を嫌な態度で受け取ってしまったらメンバーは報告が嫌になってしまいます。
「教えてくれたおかげで助かった」のようなポジティブな発言をすればポジティブサイクルが回り出します

おまけ:生成AIの危険性

人間は思考をしながら直観力を培います。
思考プロセスを何度も繰り返すことで知識が豊かになりよりファスト思考が正確になります。

しかし、生成AIは部分的に集めた回答を論理的に統合しながら結論を出すことが苦手です。
その上、すらすら回答するので「流暢性バイアス」に陥ってしまいます。

また、生成AIが回答を導いているので我々ユーザーは何も思考していない状態です。
大きい問題は、生成AIの思考プロセスは人間と全く異なるため、その知識に触れても直観の習得には一切つながらないとのことです。

直観力を育てたいと意識している場合、生成AIとの接し方には十分注意しましょう。
ブラウザを開く感覚でChatGPTを立ち上げてしまっている週間の方には要注意です。

私個人的には、「理解しているけど面倒な作業」は生成AIに頼り、「理解が難しい」と言う内容については生成AIに依存せず自分の手で答えを探すようにしています。

まとめ

全体的に読んで面白かった箇所のピックアップとなってしまいましたが、この本は常に首が取れそうなほど頷きっぱなしの内容でした。ぜひ一読してみてください。

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