概要
第5世代移動通信システム (5G) のコアネットワーク (以下5GC) について勉強する機会があったのでメモを残します。
今回はコアネットワークのアーキテクチャについて勉強します。
5GCの仕様は3GPPという団体が標準化しており、
仕様を把握するためには英語のドキュメントを読み込んでいく必要があります。
5GCのアーキテクチャについては3GPPが提供しているTS 23.501の資料の4章に記載があるので、こちらを和訳しつつ勉強を進めていきます。
※英語の解釈が誤っている場合がありますのでご注意ください。
学習を始める前の準備として本ページ一番下の参考資料に目を通しました。
非常にわかりやすくまとめられていて理解の助けになりました。
5GCのアーキテクチャについて
概要を掴むために、資料を一部抜粋して和訳していきます。
今回はTS 23.501の4章 Architecture model and Conceptsの頭から4.2.3章 Non-roaming reference architectureまでを対象とします。
以下、和訳です。
4. Architecture model and concepts
4.1 General concepts
5Gシステムアーキテクチャはデータ接続とサービスをサポートするように定義されており、ネットワークファンクションの仮想化およびソフトウェア定義ネットワークといった技術を使えるようにデプロイできます。
5Gシステムアーキテクチャは、識別されたコントロールプレーン(CP)ネットワーク機能間のサービスベースの相互作用を活用します。
いくつかの重要な原則と概念は次のとおりです。
- ユーザープレーン(UP)機能をコントロールプレーン(CP)機能から分離し、独立したスケーラビリティ、進化、柔軟なデプロイを可能にします。
(例えば、集中化された場所や分散された(距離的に離れた)場所など) - 機能設計をモジュール化します。これにより柔軟で効率的なネットワークスライスを可能にします。
- ネットワーク機能間の一連のやりとりをサービスとして定義し、それらをいつでも再利用できるようにします。
- 各ネットワーク機能とそのサービスが、必要に応じてサービス通信プロキシを介して直接または間接的に他のNF※およびそのネットワーク機能サービスと対話できるようにします。
※NF : Network Function
このアーキテクチャは、コントロールプレーンメッセージのルーティングに役立つ別の中間機能(DRA※など)の使用を妨げるものではありません。
※DRA : Diameter Routing Agent - アクセスネットワーク(AN)とコアネットワーク(CN)間の依存関係を最小限に抑えます。
アーキテクチャは、さまざまなアクセスタイプを統合する共通のAN-CNインターフェイスを備えた統合コアネットワークで定義されています。
(例: 3GPPアクセスと非3GPPアクセス) - 統合認証フレームワークをサポートします。
- 「ステートレスな」NFをサポートします。「コンピューティング」リソースが「ストレージ」リソースから分離されます。
- (各NFの)機能の公開をサポートします。
- ローカルサービスと集中サービスへの同時アクセスをサポートします。
低レイテンシサービスとローカルデータネットワークへのアクセスをサポートするために、U-Plane機能をアクセスネットワークの近くに配置できます。 - visited PLMN※のホームルーティングトラフィックとローカルブレイクアウトトラフィックの両方でローミングをサポートします。※PLMN : Public land mobile network
4.2 Architecture reference model
4.2.1 General
ここでは5Gシステムのアーキテクチャについて説明しています。
5Gアーキテクチャはサービスベースとして定義され、ネットワーク機能間のやりとりは2つの表現方法で図示されます。
- サービスベースの表現
コントロールプレーン内のネットワーク機能(AMFなど)により、他の承認されたネットワーク機能がサービスにアクセスできるようになります。
この表現には、必要に応じてポイントtoポイントの参照ポイントも含まれます。 - 参照ポイント表現
参照ポイント表現は、任意の2つのネットワーク機能(AMFやSMFなど)間のポイントtoポイント参照ポイント(N11など)によって記述されたネットワーク機能のNFサービス間に存在するやりとりを示します。
サービスベースのインターフェースは、4.2.6節にリストアップされています。
リファレンスポイントは、4.2.7節にリストアップされています。
5GCコントロールプレーン内のネットワーク機能は、互いのやり取りにサービスベースのインターフェースのみを使用します。
注1:1つのNF内のNFサービス間のやりとりの仕様はこのリリースでは指定されていません
注2:UPFは、このリリースの仕様ではサービスを提供していませんが、5GCコントロールプレーンNFが提供するサービスを利用できます。
NFおよびNFサービスは間は直接的に通信でき、これをDirect Connectionと呼びます。
また、間接通信と呼ばれるSCP※を介して間接的に通信することもできます。
※SCP : Service Communication Proxy
通信オプションの詳細については、付録Eおよび6.3.1および7.1.2の条項を参照してください。
4.2.2 Network Functions and entities
5Gシステムアーキテクチャは、次のネットワークファンクション(NF)で構成されています。
- Authentication Server Function (AUSF) : subscriber認証用機能
- Access and Mobility Management Function (AMF) : アクセスと移動管理機能
- Data Network (DN) : インターネットなど、5GC外部のネットワーク
- 例えば、運用サービスやインターネットアクセス、サードパーティーのサービスなど
- Unstructured Data Storage Function (UDSF) : 非構造化データストレージ機能
- Network Exposure Function (NEF) : 各NFのサービスを公開する機能
- Network Repository Function (NRF) : 各NFのサービスを登録する機能
- Network Slice Specific Authentication and Authorization Function (NSSAAF) : ネットワークスライスの認証・認可機能
- Network Slice Selection Function (NSSF) : ネットワークスライスの選択機能
- Policy Control Function (PCF) : ポリシー制御機能
- Session Management Function (SMF) : セッション管理機能
- Unified Data Management (UDM) : 統合データ管理
- Unified Data Repository (UDR) : 統合データリポジトリ
- User Plane Function (UPF) : ユーザープレーン機能
- UE radio Capability Management Function (UCMF) : UE無線機管理機能
- Application Function (AF) : 外部アプリケーション
- User Equipment (UE) : ユーザーの端末
- (Radio) Access Network ((R)AN) : アクセスネットワーク
- 5G-Equipment Identity Register (5G-EIR) : 5G機器識別機能
- Network Data Analytics Function (NWDAF) : ネットワーク分析機能
- CHarging Function (CHF) : 課金機能
注:CHFの機能説明は、TS 32.240 [41]で指定されています。
5Gシステムアーキテクチャには、次のネットワークエンティティも含まれます。
- Service Communication Proxy (SCP) :
メッセージの転送のルーティングや、通信セキュリティなどを行うプロキシ - Security Edge Protection Proxy (SEPP) :
通信会社間のC-Planeのやりとりにおいて、メッセージのフィルタリングとポリシー制限をするプロキシ
これらのネットワーク機能とエンティティの機能の説明は6章で指定されています。
- Non-3GPP InterWorking Function (N3IWF) : 信頼できない非3GPPへのアクセスを可能にする機能
- Trusted Non-3GPP Gateway Function (TNGF) : 信頼された非3GPPへのアクセスを可能にする機能
- Wireline Access Gateway Function (W-AGF) : 5Gコアへの有線アクセスを可能にする機能
- Trusted WLAN Interworking Function (TWIF) : N5CW (Non-5G-Capable over WLAN) デバイスが5GCにアクセスできるようにやりとりする機能
4.2.3 Non-roaming reference architecture
図4.2.3-1は、非ローミングリファレンスアーキテクチャを示しています。
サービスベースのインターフェイスは、コントロールプレーン内で使用されます。
図4.2.3-2は、さまざまなネットワーク機能が互いにどのように相互作用するかを示す参照ポイント表現を使用して、非ローミングの場合の5Gシステムアーキテクチャを示しています。
注1:N9、N14は他のすべての図には表されていないが、他のシナリオにも適用できる場合があります。 注2:ただし、表されているすべてのネットワーク機能は、必要に応じてUDSF、UR、NEF、およびNRFと通信できます。 注3:UDMはサブスクリプションデータと認証データを使用でき、PCFはUDRに格納できるポリシーデータを使用できます。 注4:明確にするために、UDRとPCFなどの他のNFとの接続は、ポイントtoポイントおよびサービスベースのアーキテクチャ図には示されていません。 注5:明確にするために、NWDAFと、PCFなどの他のNFとの接続は、ポイントtoポイントおよびサービスベースのアーキテクチャ図には示されていません。図4.2.3-3は、参照ポイント表現を使用して、複数のPDUセッションを使用して2つの(たとえば、ローカルとセントラル)データネットワークに同時にアクセスするUEの非ローミングアーキテクチャを示しています。
この図は、2つの異なるPDUセッションに対して2つのSMFが選択されている複数のPDUセッションのアーキテクチャを示しています。
ただし、各SMFには、PDUセッション内のローカルと中央の両方のUPFを制御する機能もあります。
図4.2.3-4は、リファレンスポイントの表現を使用して、単一のPDUセッション内で2つの(ローカルとセントラルなど)データネットワークへの同時アクセスが提供される場合の非ローミングアーキテクチャを示しています。
図4.2.3-5は、参照ポイント表現を使用して、Network Exposure機能の非ローミングアーキテクチャを示しています。
注1:図4.2.3-5では、NEFの信頼ドメインは、TS 23.682 [36]で定義されているSCEF※の信頼ドメインと同じです。※ SCEF : Service Capability Exposure Function 注2:図4.2.3-5では、3GPPインターフェースはNEFと5GCネットワーク機能間のサウスバウンドインターフェースを表しています。 NEFとSMF間のN29インターフェース、NEFとPCF間のN30インターフェースなど。簡単にするため、NEFからのサウスバウンドインターフェースはすべて表示されていません。おわりに
5GCのアーキテクチャの概要を学ぶことでシステムの全体像を掴むことができました。
コンポーネント自体はEPC(4G)と似ていますが、サービスベースアーキテクチャの採用によってより柔軟にネットワークを構成することができそうです。
ネットワークスライスをサポートしているところも興味深いですね。
次回は5GCを構成する各ネットワークファンクションの役割について見ていきたいと思います。
参考資料
- 5Gの主要な要求事項について
https://iot.kddi.com/column/5g_business/ - 5GCアーキテクチャについて
https://www.ctc-g.co.jp/report/column/5g_system/vol03.html - 5Gシステムのプライベート利用について
https://www.ctc-g.co.jp/report/column/5g_system/vol06b.html