はじめに
最近、オープン・データやオープン・ソース・ソフトウェアのライセンスについて聞かれることが多い。法務部に相談してくださいと言いたいところだが、情報をオープンにして行こうという素晴らしい動きなので、協力することにした。
オープン・データとオープン・ソースのそれぞれで使い勝手の良い(適した)ライセンスは異なる。定義が違うのだから当たり前と言えば当たり前だ。
それぞれについて簡単にまとめる。
なお、本記事は簡単なまとめなので、実際にライセンスに関わる場合は、法律の専門家に相談すべきである。
オープン・データ
日本におけるオープン・データの定義
国、地方公共団体及び事業者が保有する官民データのうち、国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)できるよう、次のいずれの項目にも該当する形で公開されたデータをオープンデータと定義する。
- 営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの
- 機械判読に適したもの
- 無償で利用できるもの
via. オープンデータ基本指針
各国政府のオープン・データに対するライセンスの考え方
世界各国、ライセンスの考え方は異なるが、政府の発行するデータがそもそも著作権保護対象とならないアメリカを除き、基本的に Creative Commons lisence の CC-BY 4.0, CC0 への互換性を強く意識したライセンス対応をしている。
日本においても同様であり、CC-BY 4.0, CC0 が基本となっている。
例えば、総務省のオープン・データ・ポータルサイトであるデータカタログサイトの利用規約などを参照。
機械判読に適したものとは
ティム・バーナーズ・リーは、5★オープンデータで、オープンデータの5つの段階を提案している。
段階 | 名称 | 説明 | ファイル例 |
---|---|---|---|
1 | OL: Open License | オープンライセンス | PDF, jpg etc |
2 | RE: Reusable | 編集・改訂が可能 | Word, Excel, PowerPoint etc |
3 | OF: Open Format | ソフトウェアを問わないフォーマット | csv |
4 | URI: Uniform Resource Identifier | 外部からリンクが可能 | rdf/xml |
5 | LD: Linked Data | 外部へのリンクがある | 外部へのリンクがある rdf/xml |
オープンデータにも段階がある。どのような形で提供するか考える際に、まずは一読すると良い。サイト内で日本語訳では利益とコストとあるが、お金の話ではなく、メリット・デメリットのことである。
Creative Commons Lisence とは
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは、クリエイティブ・コモンズが定義する著作権のある著作物の配布を許可するパブリック・ライセンスの1つであり、All rights reserved と Public Domain(PD or CC0)の間のいわゆる Some rights reserved のライセンスである。
オープンデータのライセンスとしては、世界で最も利用されているライセンスである。
クリエイティブ・コモンズには、4つの条件と、その組み合わせによる6つのライセンスが存在する。
4つの種類
種類 | 意味 | 説明 |
---|---|---|
BY | 表示 | 作品のクレジット表示が必要 |
SA | Shar Alike 継承 | 同じCCライセンスでの公開が必要 |
ND | No Derivs 改変禁止 | 作品を改変しないこと |
NC | Non Commercial 非営利 | 営利目的での利用禁止 |
6つのライセンス
ライセンス | 表示 | 継承 | 改変 | 営利目的 |
---|---|---|---|---|
CC-BY | 必要 | 不要 | 可能 | 可能 |
CC-BY-SA | 必要 | 必要 | 可能 | 可能 |
CC-BY-ND | 必要 | 不要 | 不可 | 可能 |
CC-BY-NC | 必要 | 不要 | 可能 | 不可 |
CC-BY-NC-SA | 必要 | 必要 | 可能 | 不可 |
CC-BY-NC-ND | 必要 | 不要 | 不可 | 不可 |
CC0とPD
CC0 と PD は内容としてはほぼ同じである。CC0 は権利を法律上許される限り放棄するとともに、法律上放棄できない部分について、補完的に広く一般講習に対して無制限に利用を許諾する。PD には制限はなく、単なるマークである。
CCライセンスの変更と失効
著作権者が、途中で気が変わってCCライセンスを取り消すということはできないので、そのまま使い続けても問題ない。一方で、著作権者は他のライセンスを追加することはできる。
権利を失った場合、または違反があり是正されなかった場合に、CCライセンスは失効する。
個人の場合、死後50年まで、共同著作物の場合は最後に死亡した著作権者の死後50年まで、無名・変名の個人または法人や団体の場合は、公開後50年、映画は70年まで権利が保護される。
オープン・ソース
オープンソースソフトウェアの定義
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスはソフトウェアのライセンスとしては適していない。クリエイティブ・コモンズは、OSI(Open Source Initiative)または FSF(Free Software Foundation)の定めるライセンスを使うことを推奨している。
OSIの定義(The Open Source Definition)では、「オープンソースを名乗るソフトウェアは、単にソースコードを公開するということではなく、以下の10項目を満たす必要がある。」とされている。
- 自由な再配布
- ソースコードの公開
- オリジナルのライセンスを継承する派生物
- 原著作者のソースコードとの区別
- 特定人物・集団に対する差別の禁止
- 仕様分野に対する差別の禁止
- ライセンスの権利配分
- ライセンスは特定製品に限定してはならない
- ライセンスは他のソフトウェアを制限してはならない
- ライセンスは技術中立でなければならない(他の技術に依存してはならない。クリックで同意させるなど)
オープンソースソフトウェアライセンスの3つのタイプ
OSS License には、大きく分けて Copy Left, Weak Copy Left, Non Copy Left の3つのタイプがある。
タイプ | 再配布 | 改変 | 改変部分のコード公開 | 他のコードと組み合わせた場合の、他のソースの公開 | 代表的な License |
---|---|---|---|---|---|
Copy Left | 可能 | 可能 | 必要 | 必要 | - GNU GPL - GNU AGPL - EUPL |
Weak Copy Left | 可能 | 可能 | 必要 | 不要 | - GNU LGPL - MPL - SUN Public - Apple Public - CPL - IBM Public - Artistic |
Non Copy Left | 可能 | 可能 | 不要 | 不要 | - BSD - ISC - MIT - X11 - ZPL - Apache |
ライセンス誓約には何が書かれているのか
OSS のライセンスには以下のような内容が書かれている
-
基本的な誓約
作者が瑕疵担保責任を負わない -
著作権表示条項
著作権表示の程度について -
コピーレフト条項
改変後の再配布におけるライセンスの継承について -
原作者特権条項
原作者には適用されない禁止事項など
同じタイプでも内容がそれぞれ異なる。
TOP5
OSS License として利用されているライセンスのトップ 5 は、
- MIT License
- GPL 2.0
- Apache License 2.0
- ISC License
- GNU 3.0
であり、MIT が圧倒的に多い。
各ライセンスの特徴
分かりやすい。詳細はLICENSE原文を確認すること。
何ライセンスにしたら良いか?
こういったものを参考に適切なライセンスを、慎重に設定する。
MIT ライセンスのソフトウェアの使い方
Non Copy Left 型である MIT ライセンスは、基本的に自由に使って良いが、それを使ってソフトウェアをつくる場合は、ライセンスと著作権の表示はしなくてはならない。どこに?
ソースコードの場合は、基本的にライブラリとしての利用が多いと思うが、だいたいダウンロードしてきたソフトウェアの中に書いてあるので気にしなくて良い(と理解している)。
バイナリ(アプリなど)の場合は、個別に表示する必要がある。
github におけるライセンス誓約
トップ階層に LICENSE というファイル名でライセンス誓約をすると、github がライセンスを認識する。以下のテンプレートが提供されており、簡単に誓約することができる。
- Apache License 2.0
- GNU General Public License v3.0
- MIT License
- BSD 2-Clause "Simplified" License
- BSD 3-Clause "New" or "Revised" License
- Boost Software License 1.0
- Creative Commons Zero v1.0 Universal
- Eclipse Public License 2.0
- GNU Affero General Public License v3.0
- GNU General Public License v2.0
- GNU Lesser General Public License v2.1
- Mozilla Public License 2.0
- The Unlicense
やり方は、「github ライセンス 後から」などとググれば出てくる。
github 上の No License ソフトウェア
なお、github 上では、およそ半数のパブリックリポジトリでライセンスが設定されていない。パブリックリポジトリは見ることも fork することもできるが、法的には極めてあやふやである。ライセンス的には、No License とされ、将来的に著作権侵害の訴訟になる可能性がある。
なお、前述のライセンス選びのサイトで、No License について github は、
- 著作権者に License をつけるよう依頼する
- 使わない
- Private License を交渉する
ことを推奨している。システム的に使える(ようにする)ことと、実際使って良いかは別ってことですね。
ライセンスが記載されていないパブリックリポジトリは、All Rights Reserved と考え、使わないのが懸命だ。
なお、利用しているライブラリのライセンスは、以下ツールを使うことで調べることができる。
このツールは、あくまで補助ツールであるため、最終的には人が判断する必要があるが、有用なツールである。
おわり
本文章は、No Warranty です笑
難しいですね。特にオープンソースは、ライセンスがたくさんあるし。