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ベトナム・オフショアの展望2024

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はじめに

ベトナム歴あと数日で10年、ハノイで起業して数日前で3年、元マーケターな現役エンジニア兼経営者をしています。最近すごく広い新築のタワマンに引っ越しました。

ソフトウェア開発会社を立ち上げてから2年間は、ビジネスモデルおよび戦略の検証を行い、3年目はそれを加速させるための研究開発(遊んでただけ)にあてましたが、4年目からはより特殊なポジショニングでやっていくことにしたので、私に見えているベトナム IT の現状とこれからを、まとめてみたいと思います。

さて、近年の円安をとどめとして、ベトナム・オフショア開発の現状は一昔前とは状況が異なってきています。円高にならないと、対日本のベトナム・オフショア開発の状況は、双方にとって厳しい状況のままなのかなと思います。アメリカではトランプ元大統領が再選を果たし、今後のドル円のレートがどうなるのか見守りたいと思いますが、トランプさんのドル安にしたい気持ちと、やったら円安になるだろう政策とを踏まえると、今後緩やかに円安が更に進むのかなぁと思っています。さて、どうなることでしょう。

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オフショア開発は、大きく2種類に分類できます。

  • 日本企業の開発拠点
  • アウトソーシングを受ける地場の開発会社

日系開発拠点は、収支を見ながら好きにやってください。ということで、今回は大部分の地場の開発会社について考えたいと思います。

ベトナム・オフショアは詰んでいる

私がハノイで起業した2021年11月は、もはや人類の記憶から薄れつつある Covid-19 により、ハノイは長く厳しいロックダウン中でした。1ドルは113円くらいでした。

当時のオフショア開発のエンジニア単価のミニマムは、大バーゲンのスタートアップを除けば、オフィス賃料の平米単価や人件費の相場を勘案すると、1人月4,000ドル(当時45万円くらい)が限界でしたが、その場合、税引・配賦後利益は、200ドル程度と、やる意味あるの?いやない。って程しか儲かりませんでした。利益に対してリスクがデカすぎる。例えば、10人フル稼働の場合、年間に

  • 売上: 48万ドル(当時5,400万円)
  • 利益: 2.4万ドル(当時270万円)

逆算して、コストが5,130万円。少ない利益を無理やり内部留保と株主還元で半々にしたら、株主が得るのは、135万円。まったく不健全なビジネスでした。

日本経済が停滞する中、対日本クライアントに対しては値上げも難しく、一方で、ベトナム経済は高度成長爆進中なため、給料はスキルが現状維持で毎年8%程度上がるという状況で、破綻寸前。

そこへ円安が突き刺さり、大量のリストラ。再就職先なし。起業にも旨味なし。

ただ、私の知り合いの IT 企業経営者の中で、廃業した人は 1 人もおらず、皆、苦しみながらも成長を続けています。対日本のオフショア開発から、リターンの大きい国内市場へとシフトしているからです。国内市場は、対日本市場に比べるとまだまだ小さいため、当然のように争奪戦になり、うまく行くところと行かないところが出ています。うまく行かないところは、大量のリストラへとつながっているわけです。

というわけで、対”日本”の”オフショア”開発は、とっくに詰んでいるんですが、ベトナム IT 業界は、健全な方向へとシフトしているのが現状です。

ベトナム・オフショアは詰んでいない

外部環境の変化に経営をアジャストする方向性として、多くのベトナム人経営者たちは、対日本オフショアから、国内スタートアップに人と金を投資するというアプローチを取りましたが、他にもアプローチはあるはずです。

ベトナムのソフトウェア開発会社の3大支出は、

  • 地代家賃
  • 採用費
  • 人件費

です。これ以外は経営に対した影響がありません。従来型のビジネスモデルでは、この3大支出のうち、採用費をリファラルで抑えるくらいしか、コストカットの方法がありませんでしたが、コロナがもたらした大きな2つの要因が、従来型のビジネスモデルを大胆に変更可能にしました。その2つの要因とは、

  • リモートワーク
  • 副業

です。これらの是非は賛否両論ありますが、極論をすれば、

  • 地代家賃 → フルリモートにすれば、限りなくゼロにできる
  • 採用費 → リファラルでゼロにできる。副業の場合、会社間の人材争奪も関係なく採用費もかからない
  • 人件費 → 副業(ギルド制)にすれば、固定費ではなく変動費にできる

ということで、4,000ドルの単価に対して、200ドルだった利益を、低リスクで3,000ドル以上の利益に変えることだってできます。繰り返しますが、極論です。(極論ですが、弊社はこれでうまく回せてます)

重要なのは、コロナによって、リモートワーク上等・副業上等な土壌ができあがったということです。

アフター・コロナのビジネスモデルは、従来のやり方に囚われず、これらのポジティブな外部要因の変化を取り込んでいくことが重要です。Face to Face 型のマネジメントでリモートワークがうまく行かないなどと嘆くのは、ナンセンスな思考停止です。

というわけで、ベトナム・オフショアはまだ詰んでいませんでした。

ただ、低利益体質から抜け出せるか、抜け出したとして日本案件に積極的になるかは、経営者次第ですし、特に小回りの効かない大きな会社はしばらく難しいかも知れません。

ちなみにですが、IT というとソフトウェアな感じがしますが、ベトナムの IT は大部分がハードウェア込みであり、ウェブやらアプリなどに限定したソフトウェア開発が占める割合はほんの一握りです。また、欧米系のオフショア開発は単価が高く、利益でないなんて事態にはなっていません。

日本企業は詰んでいる?

これは業界ごとに全然違うので一概には言えませんが、開発者確保 + 低コストに魅力を感じベトナム・オフショアを利用してきた企業はどうか?というのを考えてみたいと思います。

私の肌感覚になってしまい、ちゃんと検証していませんが、私の知り合いの会社(ベトナム)などを見ていると、ベトナム・オフショアのコスト上昇や円安の影響を直接の原因として、ベトナム・オフショア開発から撤退している日本の企業は少ないように思います。思い当たる要因は、大きく2つありますが、長くなるので割愛します。

さて、ではベトナム・オフショア開発を縮小したり、撤退している理由は何でしょう?それは、売上減による事業縮小です。例えば、2019年にホーチミンで、某社の大型ラボが解散になり、エンジニアが大量に放出されました。採用面接するとみんな同じところから来る。それはその某社の大口顧客との契約が解除されたため、のようでした(株価はドカンと下がりましたが、業績への影響は軽微だったようなので、本当にそれが理由?というのは分かりません)。コロナ後だと、ゲーム業界などはかなり厳しい状況です。

つまりは、自社のビジネスがたちゆかないのであり、ベトナム・オフショア会社の現状と一緒です。コスト構造・レベニューストリームは、ベトナムの開発会社ほどシンプルではないので、何を変えるかはビジネスごとに違うと思いますが、自社ビジネスをよく分析し、合理的に優先順位を間違えずに対処していく必要があります。売上減が厳しい中、開発効率向上に注力するの?いまそこ?みたいなアプローチになってはいけません。

昨日、TikTok でベトナム在住◯年の何とかさんという社長さんが、「いま日本人はベトナム人にどう見られているのか?」について語っているのを見かけました。曰く「非合理な判断を時間をかけてする人たち」だと。全くその通りだと思いました。日本人である私もそう思います。

そうなってしまうのは、「予算」と「組織」に原因があるんだろうなと、個人的には思います。あと「精神論」。日本企業のアジリティを著しく損なう、バジェット・コントラクト文化からの脱却、セクションごとのバジェット、情報の非対称性の解消あたりがポイントになるのかも知れません。難しそうですけど。このあたりは私は全然詳しくないので、話し程度に。

ベトナム・オフショアの展望

ますます成長するベトナム IT マーケットにおいて、対日本の案件は積極的に取りに行きたいものではなくなっています。日本企業においても、為替の影響も含め、コストメリットはなくなったと言っても言い過ぎではなく、お互い良い関係とは言えません。

個人的な意見としては、対日本のベトナム・オフショア開発はなくなりはしないものの、ゆるやかに縮小していくと思います。対日本のオフショア開発をやっていた会社は、活発で還元率の高い国内マーケット、単価が高く責任範囲が明確な欧米系、もしくは数の暴力なファクトリーの組み込み系にシフトしていき、日本企業の開発拠点は、それほど大きな変化はないと思われます。

先日発表された SCSKとFPTの合弁会社「COBOL PARK」のような、期間限定っぽいけどニッチで高単価みたいなのはすごく面白いと思います。

SCSKとFPTが合弁会社、ベトナムの若手技術者にレガシーシステムのノウハウを伝承

ベトナム・オフショア開発で、期待するアウトプットが出るかどうかは、マネジメント次第というのは、今も昔も変わらずで、そしてそれはまぁそんなに簡単ではないというのは周知の事実です。スキルの問題であり、適切な人材がいません。

日本企業がベトナム・オフショア開発を続けうまく回すには、それを補うために、コンサル、言うなれば「現場に入れる外部 PM」を入れるのが手っ取り早いと思います。財務諸表が読めて、事業計画が書けるくらいのベトナム在住の日本人エンジニアのマネージャークラスがベストです。採用できるならしたら良いと思いますが、ひとところに留まるような人物とはかけ離れているかも知れません。エンジニアじゃない PM はオススメしません。いま、ベトナムに必要な外国人材は、経験あるスキルの高いエンジニアです。

そんな特殊スキルの人材がどこに?!と思う場合は、弊社までご相談ください笑 そんなビジネスやってるところないので、うちで始めました。そういうキャリアを積みたいという方も是非お声がけください。

開発拠点の場合は、社員をお金以外でいかにグリップするかを考え、全力でコミットすれば良いと思います。

以上、今日から突然冬になったハノイからお届けしました。

(おしまい)

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