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「仕組みで解決」を楽しむ文化の育てかた

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はじめに

Livesense - 学 Advent Calendar 23日目を担当します、ktmgです。

カレンダーの縛りが「学」ということで、2年ぶり参加の今年は、非エンジニア向けのちょっとだけ技術っぽい研修について書きます。


前提1:地方オフィス

リブセンスは、東京都品川区の本社のほか、宮崎県にも拠点を持っています。

2015年の秋に小さなコールセンターとして始動し、現在は90名規模に成長。顧客サポート業務を中心に、複数の機能が東京から移管されました。


前提2:越境文化

リブセンスは、職種間の越境という文化を大切にしています。

エンジニアも事業を企画する。営業もSQLを書く稀に完全にエンジニア化したりもする。それを歓迎して楽しむ空気があり、今年のAdvent Calendarにも、非エンジニアが多く参加しています。


→ 地方オフィス+越境文化?

とはいえ、専業エンジニアがいない地方オフィスでは、さすがに自然発生的な交流・越境は起こりません。なにも職種転換を目指す必要はないのですが、Webサイトに関する一定の知識や、システム的な効率化への意識は重要です。自然発生しにくいのであれば、どんげか起こしていかんと。


「仕組みで解決」を楽しむ文化

というわけで、営業やカスタマーサポートにも「仕組みで解決」を楽しむ文化があると楽しいよね。というのが本記事の主旨です。

私もカスタマーサポート出身の非エンジニアで、今年の春に「楽しいよね↑」を広める目的で宮崎に転勤しました。10ヶ月の試行錯誤のなかでのびを以下にまとめていきます。


スキルと到達点


職種別のおすすめスキル

業務との親和性を考えると、このあたりでしょうか。

ディレクターなどは含めていません。

職種
スキル
使いどころ

営業
SQL、Excel
提案材料となるデータの引き出し、統計やグラフ作成

営業アシスタント
SQL、Excel、簡易なプログラミング
データの集約、効果測定&見える化、ルーチンワークの自動化

カスタマーサポート
テーブルやカラムの把握、Web系知識、簡易なプログラミング
サイト上の施策目的や影響範囲の察知、ルーチンワークの自動化

ライター
Excel、正規表現
データ整形

上記職種のリーダー
SQL、Excel、Web系知識
KPI設定&可視化、分析、他部署との連携


めざしたい到達点

上限はないですし、「$は末尾だと覚えた」も偉大な一歩です。

目安として、「これができると、かなりパソコンが楽しくなる」と思われる到達点を列挙します。



  • 正規表現で大量のデータを検索&置換し、必要な形に整形できる


  • VLOOKUP関数, IF関数, COUNTIF関数 がわかる


  • ExcelやSpreadsheetで、データに合わせたグラフを作成できる


  • Spreadsheet独自の関数と仲良くしている


  • 担当サービスの主要なテーブルについてカラム名で話ができる


  • サブクエリとCASE式が使える


  • 変数と条件分岐と繰り返しを理解し、とりあえず手元で動く何かが作れる


  • 作成した業務ツールについて説明ができ、安心して誰かに引き継げる


文化の広め方


やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。(山本五十六)


有名すぎる名言を持ってきました。

意識していたわけではないのですが、だいたいこれに沿っています。

ただひとつ「ほめてやらねば」のところは、今回は不要だなと思いました。

自分の書いたコードが動く、できなかったことができるようになる、というのは、誰かにほめられるよりも何倍も嬉しいことです。だから「してみる」を応援するところまでで十分。


  • やってみせ = 業務改善の事例を作り、興味を持ってもらう

  • 言って聞かせて = 研修を設計し実施する

  • させてみせ = 実践の機が訪れたら全力でサポートする

  • ほめてやらねど

  • 人は楽しむ

以下に「させてみせ」までのポイントを記載します。


やってみせ

業務改善の事例を作り、興味を持ってもらう

なんといっても、みなさん忙しいのです。

今月の数字を全力で追っている営業チームに、転勤者がフラッと入ってきて「秀丸マクロで遊びませんか」とか言い出したら頭おかしいですよね。

ですから、はじめは自分でやります。極力、仕事の邪魔にならないようにしながら業務プロセスを観察し、データを調査して、まずは何か「使えそうなもの」を作って見てもらいます。

受注のお知らせを自動でチャットに流す仕組みでもいいし、KPIが分かりやすくまとまったスプレッドシートでもいい。地味に、毎日10人が50回ずつやる「ぽち、ぽち、ぽち、ぽち」をワンクリックにするブックマークレットなんかも喜ばれます。チリツモの不便ってかなりのストレスです。

小さな改善で「ちょっと空いた時間」を提供できれば、より大きな改善のためのヒアリングができますし、何より「これも便利だけど、もっとこうしたい」「自分でやってみたい」というリクエストが上がるようになります。


言って聞かせて

= 研修を設計し実施する

場があたたまってきたら、座学です。

幸い、私の転勤したオフィスには、既に社員のための研修プログラムがありました。「サービス領域の市場理解」「ビジネスマナー」等があったところに、ITスキルのコースを追加しました。

内容は、上の「職種別のおすすめスキル」で列挙したものを中心に「このツールを使って: どこまでやる」を設計。期によって多少のばらつきはありますが、いずれも45分×10回(週1)程度での実施です。


  • 学期1・Microsoft Excel: 基本機能/関数初級(SUM,VLOOKUP,IF程度)

  • 学期2・秀丸エディタ: 正規表現/マクロ(プログラミング入門)

  • 学期3・Googleスプレッドシート:DBからのデータ取り込み/関数上級/GAS

※:DBからのデータ取り込みは専用の社内のツールを介して

 

色々な方法をトライしてみた中で、良かったな、と思う取り組みはこちらです。

いずこかで何かの参考になれば幸いです。


  • 開講前


    • 受講希望者の現在のスキルをアンケートで把握しておく。

    • この講座が終わったら何ができるようになります。とワクワクしてもらう。

    • 各回、実施日の前日を目安に資料を公開。やる気がある人は予習してくれる。



  • 開講中


    • 講師を2名体制とし、進行役とフォロー役で分業

    • ITスキル研修は「ではサンプルを触ってみましょう」が多く、途中でつまづきやすい。しかし、なかなか本人からは言い出しにくいため、見守りのフォロー役をおいて、素早くヘルプできるようにする。


    • 「このツールではこんなことができる」だけを覚えてもらう

    • だけは言い過ぎだが、まじめな人ほど細かい暗記に走って力尽きてしまいがち。知識はググれば出てくるので、ググるために脳内にインデックスをはってほしいと強調する。

    • 開始時には、前回の内容を軽く要約する。結構アウトラインを忘れている。


    • すでに知っている知識と結び合わせて説明する

    • 基礎知識ほど理解されづらいので、応用で出てくるたびに「あのときのアレです」と返し縫いをする。逆に、基礎知識の解説段階では「使うとわかるのでいまはフーンでOK」と安心してもらう。

    • 各回の後にアンケートを実施し、理解度チェック&質問を回収

    • 全体の理解度が低ければ次回にまとめて補足解説を入れる。例示たくさんが有効。

    • 届いた質問は全体に向けて回答する。1人の疑問はみんなの疑問。



  • 開講後


    • 全回終了後に総括アンケートを取り、次期の同講座で改善する。


    • 講師を別のメンバーに引き継ぐ。(2名体制なのは、次期講師を育てるためでもあります)




させてみせ

= 実践の機が訪れたら全力でサポートする

正直なところ、研修で学ぶことのうちで「今日から使える!」という内容は2割もないと思います。「あの研修、よくわからないけど面白いことをやったなあ」で十分です。

面白い記憶と共に「ああいうやり方があった」という記憶が残れば、実務で類似のケースに遭遇したときに「あ、これはもしかして」と勘がはたらきます。その機が来たら気兼ねなく声をかけてもらえる関係を結んでおき、常に暇そうな顔をして待ちましょう。「あのページを見れば自分でできるかも」という親切設計な資料も有効です。

前述のとおり「させてみせ」までうまくいったら、チヤホヤする必要はありません。「仕組みで解決」の楽しさに魅せられて、ぐんぐんと学びが深まっていきます。


番外:「仕組みで解決」を楽しむ上での心構え


  • 非エンジニアが技術っぽいことを学ぶと、便利と同時に爆弾を作ることがあります。

  • たとえばブックマークレット。手元のPCでは便利ですが、開発者はその存在を把握していないため、ちょっとした画面の変更で簡単に動かなくなります。チーム全体に広まっていたりすると(特に本人が退職などしていると)、ある日のリリースで悲惨なことに。このへんの「私はどこまで何をやっていいか」は、できるだけ本職のエンジニアと相談しておくのが吉です。

  • Spreadsheetで作った業務ツールなども同様に。自分が明日トラックに轢かれてもなんとかなるよう、どのシートがどこからデータを取ってきていて、何を処理しているかを明らかにしておきましょう。

  • はい、私もいろいろ反省があります。


おまけ:秀丸かわいい

これだけだと技術エントリではなくなってしまうかな…と思い、研修で使ったもののなかから、一番ネタっぽいのを持ってきました。

秀丸エディタを使った「変数・条件分岐・繰り返しを学ぼう」の回です。

何に使うんだという感じですが、「秀丸はメモ帳ではない」という認識は浸透しました。

※ リブセンスのWindowsPCには、秀丸がインストールされています。

sample1.gif

question "喫茶店に入りますか?";

if( result == yes ){
insert "┌────────────┐\n│  いらっしゃいませ  │\n└────────────┘\n\n\n";

mousemenu "紅茶を頼みます","コーヒーを頼みます";
if( result == 1 ) {
$drink = "紅茶";
$cup = "□";
$price = "300円";
} else if( result == 2 ) {
$drink = "コーヒー";
$cup = "■";
$price = "350円";
} else {
endmacro;
}

message($drink + "が運ばれてきました");
insert("     ∬\n    C" + $cup + " ◎◎◎\n   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\n\n");

message("サービスのクッキーが3枚もらえました");
#cookie = 3;
while (#cookie > 0){
message("クッキーは残り" + str(#cookie) +"枚です");
message("クッキーを食べます");
replaceallfast "(◎?)(◎*)" , "\\2" , regular;
#cookie = #cookie - 1;
}

message($drink + "を飲み終わりました");
replaceallfast "∬" , "";
message("お会計は" + $price + "です");

replaceallfast "  いらっしゃいませ  " , " ありがとうございました ";

} else {
endmacro;
}


おわりに

最後までお読みくださりありがとうございました。

「仕組みで解決を楽しむ文化」と大見得を切りましたが、「生産性向上」や「業務効率化」と味気ない言葉で括るよりも面白くなりそうじゃない?という雰囲気が伝わっていれば嬉しいです。

少々早いですが、みなさま、良いお年を。