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株式会社ビットキー DeveloperAdvent Calendar 2023

Day 6

FIT(Failures In Time)という指標を用いて自社デバイスの品質を可視化したお話

Last updated at Posted at 2023-12-05

この記事は株式会社ビットキー Advent Calendar 2023 6日目の記事です。
ハードウェア製品の品質保証(HWQA)を担当をしている高石 (@ksk_taka)が執筆します。
※昨年までファームウェアのチームマネージャを担当していましたが、現在は主に品質可視化・改善を主業務としています。

はじめに

ビットキーではbitlock MINIなどのスマートロック製品をはじめとした種々のハードウェアデバイスを市場に提供しています。

筆者が入社したのは2019年10月で、その時点で複数の製品を市場に投下していました。更に2021年には新機種を投入し、現在もなおシェア拡大を目指しています。

市場に提供するデバイスの種類や台数が急速に増えている中で、社内でも「発売済の製品がどの程度の品質なのか」という指標を可視化する重要性が非常に高まって来ました。

品質可視化をする上で、今回着目したのがFIT(Failures In Time)という指標です。

FITの定義と、FITを利用するメリット

FITの定義

FITは特に電子部品業界でよく使われる指標で、製品が単位時間あたりにどの程度故障をするのか、を表す指標です。
機種ごとのFITの値が算出できれば、「どの製品をどのくらいの期間利用した場合にどの程度故障するのか」を容易に把握することができるようになります。

具体的にはFITの値は以下の計算方法で算出できます。

FIT = (故障件数  \div 稼働時間) \times 10 ^ 9

FITを利用するメリット

FITという指標を導入することにより、以下が見込めます。

  • 複数存在する機種について共通の品質指標で見れる・語れる様になる
  • 業務の優先順位付けが容易になる
  • (FITという概念を社内認知してもらえば)技術者以外とも品質に関するコミュニケーションがしやすくなる

実際のFITの算出方法

上述した計算方法の通り、機種ごとに累計の稼働時間故障件数 が分かれば、それぞれの機種におけるFIT値が算出できることになります。

機種ごとの累計駆動時間の算出

ビットキーが扱っているデバイスは、ほぼ全てBLE機能を搭載しています。「利用開始する際にスマートフォンアプリから初期設定をする」ということが必須になっており、その利用開始期日はログとしてサーバーに記録されています。

この「利用開始日」から現在までの時間(=稼働時間)を機種ごとに集計すれば、機種ごとの累計駆動時間が算出することができます。

機種ごとの故障件数の算出

故障件数を割り出す為には、そもそもの故障について定義をする必要があります。

理想を言えば機種ごとに「故障」を厳密に定義した上で故障の件数が出せれば良いのですが、まずは手っ取り早く現状を可視化したかったため、いささか乱暴ではありますが以下の様な定義をしました。

故障の定義

故障数 = 市場からの問い合わせ発生件数

問い合わせ発生件数の集計方法

故障について定義ができたので、次は故障数の集計方法を考えます。
ビットキーでは、市場にリリースしたプロダクト(ハードウェア製品/ソフトウェアサービス問わず)についての問い合わせ対応を、dev_前衛と呼ばれるSlackのチャンネルに集約しています。

参考:製品改善を最前線で。我ら「dev前衛」

このdev_前衛チャンネルに投稿されているもののうち、ハードウェアデバイスに関する問い合わせを機種ごとに集計することにしました(集計方法も工夫しているのでこちらはまた別途)

デバイスごとに算出したFIT値の管理方法

上述までの方法で、機種ごとの特定期日におけるFIT値は算出できるようになりました。

ただスポットで現在の品質を可視化するだけではせっかくFIT値を算出した意味が薄いので、現在は以下のような運用をしています

  • 機種ごとに月次でFIT値を算出
  • 月次FIT値の推移をグラフ化
  • FIT値の高い(=問い合わせ数=故障数が多い)機種から順に、不具合の対策を実施

上記の様にすることで、機種ごとの品質を可視化するだけでなく、その品質の変化推移も容易に確認することができるようになりました。

実際の可視化イメージ(サンプルデータであり実態とは異なります)

image.png

終わりに

上記の様に機種ごとのFITをまとめることで、機種ごとの品質の可視化ができ、優先順位の決定なども非常にしやすくなりました。

今回の説明では割愛していますが、実際には更にこのFITを細分化して、「機種・事象ごとのFIT値」を算出した上で、どの課題から解決していくかの意思決定に繋げています。

今後は更に、以下の様な検討を進めて行く予定です。

  1. 「どの機種のどの不具合が発生したときにどの程度のコストが発生するのか」の算出・整理する
  2. その不具合を対策する場合、どの程度コストが掛かるのか、の算出・整理する
  3. 「1」「2」を踏まえ、費用対効果が最大となる選択肢はどれか、を意思決定できる状態にする

7日目の株式会社ビットキー Advent Calendar 2023 は @arasan01 が担当します!

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