はじめに
プログラマ時代は同僚のプログラマやSEなど、システムに精通している人とのやり取りがほとんどだった。そのため、システムの知識などの前提条件をお互い共有しているため、意思疎通が図りやすい。しかし、SEになりエンドユーザやお偉いさんと会話したりプレゼンすることが多くなると、彼らは基本的にシステムに詳しくないのでとたんに意思疎通が難しくなる。なぜなら、こちらは前提条件をベースに話を組み立てているが、彼らはその前提条件を知らないからである。その結果、彼らからしてみればこちらが話している内容は論理の飛躍に受け止められる。彼らに納得してもらうためには、ひとつひとつの当たり前の論理を丁寧に積み重ねて、誰が読んでもわかりやすい文書を作る必要があると考えた。
ということで、この記事では論理的な文書の書き方のヒントを自分用の覚書としてまとめてみました。
参考サイト
NHK高校講座 ロンリのちから
https://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/ronri/
接続詞について (一覧と解説)
https://pothos.blue/setuzokusi.htm
クリティカル・シンキングで始める論文読解
https://jrecin.jst.go.jp/seek/html/e-learning/900/index.html
推論
推論とは前提から結論を導くこと。推論の仕方には、演繹法、帰納法、アブダクション の3種類がある。
演繹法
2つの前提から結論を導く推論の仕方。
例)
前提1:人間はいつか死ぬ
前提2:ソクラテスは人間である
結論 :ゆえにソクラテスはいつか死ぬ
つまり、2つの前提が与えられてそれらの前提が正しければ、そこから導かれる結論も必ず正しくなる、という事。上記の例も書いてみると一見当たり前に見えるが、当たり前だからこそ説得力がある。
帰納法
複数の個別的な前提から、より一般的な規則を導くこと。
例)
前提1:フランスの戦車がポーランドの国境にいる。
前提2:ドイツの戦車がポーランドの国境にいる。
前提3:ロシアの戦車がポーランドの国境にいる。
結論 :ポーランドが戦車によって侵略されようとしている。
演繹法では前提が正しければ、そこから導かれた結論も必ず正しい。しかし、帰納法の場合は必ずしも結論が正しいとは限らない。(例えば上記の例だと、ポーランド、フランス、ドイツ、ロシア連合によってヨーロッパ全土を侵略しようとしている、という結論も考えられる。)それゆえに、結論の導き方に飛躍がないか、より注意をする必要がある。
アブダクション(仮説的推論)
結果や結論を最も良く説明する仮説を導くこと。
例)
結果:赤ちゃんが泣いている。
仮説 :赤ちゃんはお腹が減っているのだろう。
アブダクションでは、複数の個別的な事象(結果)からもっとも妥当だと考えられる仮説を導き出す。しかし、これも帰納法と同じで仮説が必ず正しいとは限らないので注意が必要。(上記の例だと、もしかしたらおしめが汚れて泣いているのかもしれない。)
暗黙の前提
お互いに分かっていると思って省略する前提。しかし、その前提が分からない人にとっては論理の飛躍となる。例えば、「失敗は成功のもと」という言葉も実は論理の飛躍が発生している。「失敗は成功のもと」の暗黙の前提部分を明示的に書き出すと例えば以下の様になる。
失敗する
↓
(失敗の原因を見つける)
↓
(対策を実施する)
↓
その結果、成功する
人に読んでもらう文書を書くときは、相手にとってもその暗黙の前提が通じるのかを意識することが大切である。もし、通じるのであれば、冗長さを避けるためにも省略してしまって構わないと思うが、そうでないならひとつひとつ丁寧に書き出す必要がある。
また、暗黙の前提自体が間違っていることが往々にしてあるので注意が必要。
接続表現
言葉と言葉を繋ぐ役割。例えば、以下のようなものがある。
・AそしてB → AにBを付け加える。
・AしかもB → AにBを付け加える。さらに強調の効果がある。
・AしかしB → Aとは対立するBを述べる(強調したいのはB)
・AただしB → AにBを補足する。(強調したいのはA)
・AなぜならB → Aの理由Bを述べる。
・AだからB → Aの結果Bとなる。
・AつまりB → Aの本質Bを述べる。
参考サイト「接続詞について (一覧と解説)」が良くまとまっていて参考になる。
否定について
ある事柄の否定は、そのこと以外の全ての可能性を表している。例えば、「インターネットの情報は全て正しい。」の否定は「インターネットの情報は全て間違っている」ではなくて、「インターネットの情報には間違っているものもある。」となる。
水かけ論・合意形成
意見を主張する際には、その根拠となる理由を明示する必要がある。なぜなら、互いに自分の意見を主張するだけでは、平行線のまま結論にたどり着かない(=水掛け論)からである。根拠を示すことで検討が可能になり、議論が深まる。
また、議論の際には意見の対立を人と人との対立にしないこと。つまり、意見そのものを検討すること。その際に、相手の意見から取り入れることができる要素がないかを考えること(歩み寄り)で合意形成に近づく。