「考える技術・書く技術」に代表されるような、文書の全体構造について書かれた書籍は多い。例えば、「考える技術・書く技術」で提唱されている文章のピラミッド構造では、まず、文書全体をひとつのピラミッドで構成し、一番伝えたいことをピラミッドのトップに配置する。そして、ピラミッドのボトムの各段落で詳細を説明する、という構造となっている。ピラミッド構造で文書を構築することで書き手の考えの整理になるとともに、読み手にとってもわかりやすい文書となる。
しかし、ピラミッド構造で文書を構築したとしても、実際に各段落の中身を書く際に上手く書けないことが多い。それは、各段落の中身について書き手の考えが整理されていないためである。各段落の中身の文章を整理するためには、接続詞を適切に用いて論理を明確にすることが重要である。「文章は接続詞で決まる」は接続詞について深く掘り下げた書籍で、接続詞の全体像や各接続詞の使用方法や効果について詳しく書かれている。
今回は書籍「文章は接続詞で決まる」をまとめてみた。
第一章 接続詞とは何か
- 接続詞とは、独立した先行文脈の内容を受けなおし、後続文脈の展開の方向性を示す表現である。
- 接続詞は、論理学のような客観的な論理ではなく、文脈の関係を書き手がどう意識し、読み手がどう理解するのか、という解釈の論理である。
- 例えば、接続詞「そして」には「そして」の、「しかし」には「しかし」の固有の論理がある。しかし、その論理は論理学のような客観的な論理ではなく、前後の文脈の背後にある論理をどう読み解くかを示唆する解釈の論理である。
- 人間が言語を理解する際は、文字から得られる情報だけではなく、文字から得られる情報を手掛かりにさまざまな推論を行いながら理解している。接続詞は、その推論のヒントとなる。
第二章 接続詞の役割
- 接続詞は読者の理解や印象に特に強い影響を及ぼす。
- 接続詞の機能は以下の6通りある。
- 連接関連を表示する
- 文脈のつながりをなめらかにする
- 重要な情報に焦点を絞る
- 読み手に含意を読み取らせる
- 接続の範囲を指定する
- 文章の構造を整理する
第三章 論理の接続詞
- 接続詞を、大きく以下の4種10類に分類する。
- 論理の接続詞
- 順接の接続詞(だから系、それなら系)
- 逆説の接続詞(しかし系、ところが系)
- 整理の接続詞
- 並列の接続詞(そして系、それに系、かつ系)
- 対比の接続詞(一方系、または系)
- 列挙の接続詞(第一に系、最初に系、まず系)
- 理解の接続詞
- 換言の接続詞(つまり系、むしろ系)
- 例示の接続詞(たとえば系、とくに系)
- 補填の接続詞(なぜなら系、ただし系)
- 展開の接続詞
- 転換の接続詞(さて系、では系)
- 結論の接続詞(このように系、とにかく系)
- 論理の接続詞
- 「だから」系:原因―結果の橋渡しに活躍
- 先行文脈と後続文脈が原因―結果の関係にあることを明示し、それによって文書の説得力を高める働きがある。
- 原因―結果の因果関係の知識は、読み手が一般的知識として持っていることが前提となる。
- 「しかし」系:単調さを防ぐ豊富なラインナップ
- 順接の「こうなればこうなる」という前提に反することを予測する表現。「こうなってもこうならない」ということを表す。
- 「しかし」のかわりに使える逆説の接続詞には、「だが」「でも」「それでも」「ただ」がある。
- これらは、「しかし」の単調さを防ぐ豊富なラインナップとなる。
- 「ところが」系:強い意外感をもたらす
- 想定外の展開を表す接続に使う接続詞。
- 同系統の「にもかかわらず」は、硬い文章でよく使われる接続詞。先行文脈から考えて、そうなるのが当然の理である。しかし、現実はそうはならないという流れを表す。
第四章 整理の接続詞
- 「そして」系:便利な接続詞の代表格
- 添加の接続詞とも呼ばれ、最後にひとつ、大切な情報を付け加える働きがある。
- もともと、帰着点を表す「そうして」に由来する。
- 同系統の「それから」は「そして」とは異なり、ひとつだけでなく何度も重ねて使うことでいくつもの情報を付け加えることができる。
- 「それに」系:ダメを押す
- 累加の接続詞とも呼ばれ、「それだけでなく、まだ他にもある」という、すでに示したものに重ねて示す働きがある。
- 同系統に「それにくわえて」「そればかりか」「そのうえ」「しかも」「ひいて」などがある。
- 「かつ」系:厳めしい顔つきで論理づけ
- 「AかつB」で、AもBも両方同時に満たすことを意味する。法律の条文や論文など、論理を明確にしたい文書に使われる。
- 「一方」系:ふたつの物事の相違点に注目
- 対立を表す接続詞。同系統に「他方」「それにたいして」「反対に」「反面」「逆に」がある。
- 「一方」が一番よく使われる。それは、「それにたいして」や「反対に」などより、前後の関係を制約する程度が低く、使いやすいためである。
- 「一方」は前後でなんらかの点で違っていれば使える。
- 逆に、「反対に」や「逆に」は、前後の文脈の内容が文字通り反対でなければ使えない。
- 「または」系:複数の選択肢を示す
- 選択を表す接続詞。同系統に「もしくは」「ないしは」「あるいは」「それとも」がある。
- 「AまたはB」で、AかB、いずれか一方を選ぶことを意味する。
- 「第一に」系:文書のなかの箇条書き
- 列挙して整理する働きがある。「第一に…」「第二に…」「第三に…」のように、接続詞のなかに数字が入る。
- 列挙される項目に時間的順序性はない。つまり、その出現順序を入れ替えても文意に矛盾が生じることはない。
- ただし、情報の重要性という意味では「第一に…」に一番重要な項目が配置されるのが一般的である。
- 「最初に」系:順序を重視した列挙
- 列挙して整理する働きがある。「第一に」とは異なり、列挙される項目に時間的順序性がある。
- 「まず」系:列挙のオールマイティ
- 「第一に」系と「最初に」系の接続詞の両方の特徴を兼ね備えており、時間的順序性のあるもの、ないもの、両方に使うことができる。