はじめに
現職ではスクラムを用いた開発を行っており、その中でスプリントボードを自作して運用しています。本記事ではその背景や構成、実際の活用方法についてご紹介します。
読んでいただいた方々から、さまざまなご意見やご感想をいただけると嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。
スクラムイベントとスプリントボード
まず本題に入る前に、スクラムの基本的なイベントについて簡単に触れておきます。
スクラムガイド( 2020年版 )では、以下の5つのイベントが定義されています。
- スプリント
- スプリントプランニング
- デイリースクラム
- スプリントレビュー
- スプリントレトロスペクティブ
各イベントの詳細はスクラムガイドをご参照いただくとして、ここでは私のチームがどのようにスプリントボードをこれらのイベントに活用しているかにフォーカスします。
特に、スプリントボードで視覚化したいと考えているのは、以下の3つのイベントです。
- スプリント:スプリントゴールを意識し、チームでタスクを進める
- スプリントプランニング:達成すべきことと必要な作業を明確にする
- デイリースクラム:障害や課題を共有し、早期解決を図る
自作したスプリントボードは、これらイベントのインプット・アウトプットを視覚化し、チームがスムーズにスプリントを進められるよう支援するツールとして設計しています。
なぜ自作したのか?
私たちのチームでは JIRA を利用していますが、スプリントの運用においては JIRA のボードを活用していません。理由としては以下の通りです。
- 動作が重く、表示に時間がかかる
- 情報が分散していて視認性が悪い
- 過去スプリントの履歴が追いづらい
※これらは私自身が JIRA をうまく使いこなせていないことも一因ですが、実際の運用上で不便を感じているのは事実です。
そこで、 Figma などのホワイトボードツールを活用して、より柔軟かつ軽快に使えるスプリントボードを自作することにしました。
自作スプリントボードの構成
ボードは以下の4つの要素で構成されています。
- スプリントの番号とスプリントゴール
- 日々のトピック( デイリースクラム )
- スプリントで対応するアイテム( Epic, バックログ, 差し込み )
- 進捗ボード( WIP状況 )
これらはスプリント期間中に随時更新していきます。スプリントが完了したら、新たなスプリント用にボードを複製して運用しています。
※なお、私たちのチームでは1スプリント=1週間で運用しています。
1. スプリントの番号とスプリントゴール
目的:スプリントの目標を常に意識し、過去スプリントをたどりやすくする
スプリントゴールはボード上で目立つ場所に配置し、チームが常に目標を意識できるようにしています。また、スプリント番号も明記することで、履歴をたどりやすくしています。
2. 日々のトピック( デイリースクラム )
デイリースクラム( Daily Scrum、以下 DS )の効率化と対話の促進
DS が進捗報告の場になり、予定時間( 15分 )をオーバーするケースがありました。そこで、私たちは以下のような運用に切り替えました。
- 各メンバーは、その日に話したいこと・相談したいこと・実施予定のイベント( ペアプロ, レビュー等 )を「トピック」として記載
- タスクの進捗状況は後述の進捗ボードで確認できるため、 DS ではトピックベースで会話を展開
- トピックがなければデイリースクラムを迅速に終了し、メリハリある運用を実現
3. スプリントで対応するアイテム
目的:対応中・予定・差し込みタスクを明確に分けて管理する
このセクションには、以下のようなアイテムを配置しています。
- Epic:現在進行中のプロジェクト単位で常に参照可能に
- バックログ:スプリントプランニング時に「余裕があれば対応する」タスク
- 差し込み:スプリント中に緊急対応が発生したものを記録
特に「差し込み」は、スプリント開始時点では存在しなかったタスクなので、それに対応したことで他の作業にどう影響が出たかを振り返りやすくなります。
4. 進捗ボード
目的:タスクの状態を視覚的に把握しやすくする
以下のステータスを用いた進捗管理を行っています。
- バックログ
- 作業中
- レビュー中
- 待ち( レビュー待ち、外部依存など )
- 完了
ストーリーに紐づくタスクを2レーン、ストーリー外の作業用に1レーンを用意しています。これは、1週間スプリントにおいて同時に進められるストーリー数が1〜2程度であるという実体験に基づいています。
なお、以下のようなイレギュラーも想定しています。
- 前スプリントからの継続ストーリーがある
- 予定より早く終わったタスクがあったため、新しいストーリーに着手した
柔軟な運用を可能にするため、レーンやステータスはFigma上で簡単に調整できるように設計しています。
おわりに
自作スプリントボードは、スクラムイベントに沿ってチームの活動を「見える化」し、対話や改善を支援するための重要なツールとして機能しています。
JIRAの代替として運用していますが、それ以上に「チームの文化や現場感に合わせた柔軟性」を重視した作りになっています。
今後も改善を続けながら、より良いスクラム運用を目指していきたいと思います。
この記事をご覧になって、感想やアドバイスなどがあれば、ぜひコメントいただけると嬉しいです!