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運用保守に携わる人において、あえてルールを無視したいと思う人はそうそういないと思います。
ですが、故障情報などを分析している、「手順書にない作業をした」とか「想定外の際にストップしなければいけないのに進めてしまった」とか「~~のルールの徹底が出来ていなかった」といった、ルール違反による事故をよく見かけます。

以前、とある現場でこれに関連した講演をしたことがあるので、何か参考になればということで書いてみます。

違反の種類

そもそもルールを無視するという行為は「組織事故 ~起こるべくして起こる事故からの脱出~」という書籍(ジェームズ・リーズン著)において、以下の3つに定義されています。

  1. 日常的な違反
  2. 楽観的な違反
  3. 必要な違反

これについて、私なりに運用保守の例も交えて紹介してみます。

日常的な違反

スキルベースの作業において、短絡的行動をとる違反のことを指します。
運用保守現場の例でいえば、何らかの作業をする際に作業前の状態でバックアップを取っておく場合があったとします。この作業が毎月実施している定常作業で、100回やって100回成功するような状況になってくると、徐々に「どうせ成功するし、面倒だからバックアップは今回は飛ばしてもいいか」となってしまう可能性がある(かもしれません)。
これに該当する違反は結構身近に潜んでいるものではないかと思います。

楽観的な違反

個々人の行動パターンなど様々な動機で引き起こされる違反のことを指します。
運用保守現場の例だとあまりないパターンかもしれませんが、とあるコマンドを実行する際に、A→B→Cと実行しなければいけない手順だったとします。ここで作業者が「これ、XXXXで条件も入れたら1回でいけるかも?」と好奇心で実施してしまったというようなイメージになるかと思います。(ちょっとわかりにくいか・・?)
この楽観的な違反は、さすがに運用保守現場ではあまり起こりえないような印象があります。
(というよりも、これが起こってしまう現場ではそれ以前に色々な問題を抱えていることでしょう)

必要な違反

これは規則を守っていると仕事が終わらないような場合に引き起こされる違反のことを指します。
これの怖いところは、この違反に慣れると日常的な違反に変化することがあるということです。
(個人的にはこれが最も危険、かつよくある違反なのではないかと思う)

運用保守現場でもベテランの人が長年の経験の間に習得した、作業手順書には記載されていない裏技のようなものがあり、作業者の間でこっそりと引き継がれることもあるかと思います。そして、気づいたころにはこの違反は日常作業へと変化し、違反していることすら認識されなくなるということになります。
(事故が起きた時には、もはやいつからなど追うことも難しいかもしれません)

で、どうする?

人間が作業をする以上は、全ての違反を100%防ぐことは難しいかもしれません。
ただ、日常的な違反も必要な違反も、共通するのは指定された手順通りにやっていると仕事が終わらないような設計になっていると起こりやすい環境になるということかと思います。

オペミスを防止するために作業を細かく分割することは非常に重要ですし、過去のトラブル経験から作業手順書もより重厚なものになっていくことでしょう。
しかし、作業手順書が手厚くなっても作業終了時刻が変わっていなければ、作業者を圧迫する可能性もあります。逆に作業者は、冗長だと感じた部分について、なぜこの手順があるのか、なぜこの手順じゃダメなのかを確認することが必要だと思います。

悪いルールに違反するのは正か悪か

先ほどあげた書籍のなかで他に印象に残ったのは、悪いルールに違反することについての事例でした。
パイパーアルファ油田の事故の例ですが、この件では、緊急時に退避するルートが予め定められており、ルールを順守した人々はそこに集合していました。
しかし、不幸にもそこが事故の際の爆発の通り道になってしまったそうです。そして、このルールに違反した人(違反した理由は色々あったと思いますが)は、別のルートに退避しており、爆発から逃れることができたそうです。

ルールを守ることは当然であり、とても重要なことではありますが、そのルールが良いルールか、悪いルールかによって結果は異なります。そして、ルールに違反して成功するのは正しいのか難しいなと感じました。(おそらくケースバイケースでしかない)

人命にかかわるようなシステムは話は別ですが、そこまでのインパクトがないシステムの運用保守のケースでは、悪いルールだと気づいたら立ち止まること、ルールを守りながらも何か違和感があれば突き進まずに確認することが重要なのだろうと思います。

結論

  • ルールは必ず守ること
  • でも、ルールが必ず正しいとは限らないことも意識しておく
  • 経験値による直感も時には大事な道しるべになることもある(※)

※似たような話の記事もあるのでリンクを紹介します
https://un4navi.com/management/23157/

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