Facebookの試練
2012年、Facebookは急成長を遂げ、世界中で数十億人がこのソーシャルメディアを日々利用していた。しかし、その裏では、技術的な困難が迫っていた。特に、急速に進化するモバイルアプリにおいて、パフォーマンスの低下が深刻な問題となっていた。
問題の本質
非効率なAPIコール
Facebookのモバイルアプリには、あらゆる面で非効率が蔓延していた。特に問題となったのは、複数回にわたるAPIコールである。
- ニュースフィードを表示するために4~5回ものAPIコールが必要
- 毎回必要以上のデータを転送
- モバイルネットワークは限られており、データ通信は高コスト
その結果、ユーザーの待機時間は長くなり、モバイルデバイスのバッテリーは急速に消耗していた。Facebookは、その速度と効率の問題に対応する必要があった。
具体的な問題点
- ユーザー情報取得
1回のAPI呼び出し - 投稿データ取得
別のAPI呼び出し - コメント情報取得
さらに別のAPI呼び出し
解決への道のり
新しい設計思想の誕生
リー・バイロンを中心に、従来のRESTful APIの限界を徹底的に分析し始めた。従来のアーキテクチャでは、リソース間の相互関係やデータの柔軟な取得が難しく、無駄なデータ転送が続いていた。
そこで、まったく新しいアプローチを考案した。これが、後に「GraphQL」として知られることになる。
- 単一のエンドポイント
- クライアントが必要な情報を正確に指定
- 型安全性を持たせた設計
この新しい設計により、クライアントとサーバー間のデータのやり取りが劇的に効率化されることが期待された。
GraphQLクエリの革新
query {
user(id: "123") {
name
profileImage
newsFeed {
posts {
content
likes
comments
}
}
}
}
開発者はこのシンプルで直感的なクエリによって自由なデータ転送を実現できるようになった。
GraphQLが解決した課題
-
データ転送の最適化
- 必要な情報のみを取得し、無駄なデータ転送を排除
- ネットワークリソースを劇的に削減
-
クライアント-サーバー間の柔軟性
- 動的なデータ構造により、複雑な要求にも柔軟に対応
- 型安全性を確保し、信頼性を向上
-
開発者体験の向上
- 直感的なデータ取得が可能になり、開発者の生産性が向上
- 自己文書化されたAPIにより、APIの利用方法が自然と明示される