🚀 ~はじめに~
この記事は、私たちが日々直面する「もっと良いシステム運用はないのか?」という問いから始まりました。
開発者と運用者の間にある壁、環境の違いから生まれるトラブル、そしてスケールするたび複雑になる管理…。
これらの課題を解決する手段として、コンテナ化という技術にたどり着きました。
コンテナ技術の中でも、特に強力な組み合わせとして知られているのがDockerとKubernetesです。
今回は、これらの技術を実際に導入し、理想とする運用を実現できるか試してみました。
まずは第一歩として、この「#0」で、DockerとKubernetesがそれぞれ何であるか、そしてなぜ両方を組み合わせて使うのかを、分かりやすく丁寧に解説します。
🐳 ~Dockerとは~
Dockerとは、アプリケーションとその実行に必要なすべての環境(ライブラリ、設定ファイルなど)をひとつのパッケージにまとめるための技術です。
このパッケージをコンテナと呼びます。コンテナは、どんなコンピュータ上でも全く同じように動作することを保証します。
これを料理に例えてみましょう。あなたは腕のいい料理人で、新しいレシピを開発しました。このレシピを友人や家族に作ってほしいのですが、問題が起こります。
- あなたの家には、特別なミキサー(特定のバージョンのライブラリなど)があります
- 友人の家では、そのミキサーが古く、レシピ通りに作るとうまく動かないかもしれません
- 別の友人の家には、そもそもミキサーがありません
このように、レシピ(アプリケーション)だけを渡しても、料理を作る道具や材料(OSやミドルウェアなど)が人によって違うため、同じ味(同じ動作)にならない可能性があります。
これが、従来のソフトウェア開発でよく直面する「自分のPCでは動くのに、本番環境では動かない」という問題です。
Dockerは、この問題を解決してくれます。Dockerを使えば、料理(アプリケーション)と、それを完璧に作るための必要な道具や材料をすべてひとつの箱にまとめてしまいます。
あなたは友人にこの箱を渡すだけです。友人は、箱を開けて、その中にある環境で料理を始めれば、誰がどこで作っても、あなたの作った料理と全く同じ味になります。
これが、Dockerの最大の価値です。
Dockerを使うことでなにができるのか
- 環境の違いによるトラブル解消: 開発者のPCでも、テスト環境でも、本番環境でも、同じように動作することを保証します。これにより、「私のPCでは動くのに…」という言い訳がなくなります
- 環境構築の簡略化: 新しいプロジェクトに参加した際、複雑な手順を踏んで開発環境をセットアップする必要はありません。たった1つのコマンドを実行するだけで、必要なすべての環境が自動的に構築されます
- リソースの効率的な利用: コンテナは、仮想マシン(VM)よりもはるかに軽量です。VMが家全体を仮想化するのに対し、コンテナは部屋(特定のアプリケーション)だけを独立させて使うイメージです。そのため、1つのサーバー上で多くのコンテナを動かすことができ、サーバーのリソースを無駄なく使えます
☸ ~Kubernetesとは~
Kubernetesとは、大量のコンテナ化されたアプリケーションを効率的に管理・運用するためのプラットフォームです。
コンテナの数が増えたり、サーバーに障害が発生したりした際に、人間が手動で対応するのではなく、すべての管理を自動的に行ってくれます。
これを町の管理者に例えてみましょう。あなたの料理が評判を呼び、たくさんのキッチン(Dockerコンテナ)が必要なレストランを経営することになりました。しかし、ここで新たな問題が発生します。
- お客さんが急増したとき、キッチンの数を増やさなければなりません
- キッチンのどれかが故障したとき、誰かがすぐに新しいキッチンと交換しなければなりません
- お客さんが減ったとき、電気代節約のためにキッチンの数を減らしたいです
これらの作業をすべて手動でやるのは大変です。キッチンが10個、20個と増えていくと、もう手が回りません。
Kubernetesは、この「たくさんのコンテナを管理する」という複雑な作業を自動化してくれる、町の管理者のような存在です。コンテナの数が増えたり減ったりする状況を監視し、状況に応じて適切な対応を自動で行ってくれます。
Kubernetesは、あなたが「キッチンの数を3つにしてください」とか、「もしどこかのキッチンが使えなくなったら、すぐに新しいものに交換してください」といった指示を出すと、あとはすべて自動でやってくれるのです。
これが「コンテナオーケストレーション」と呼ばれる、Kubernetesの重要な役割です。
Kubernetesを使うことでなにができるのか
- 自動スケーリング: アプリケーションへのアクセスが増えたら、Kubernetesが自動的にコンテナ(キッチン)を増やして、アクセスを分散させます。逆にアクセスが減ったら、自動的にコンテナを減らしてコストを節約します
- 自己修復機能: もしコンテナがクラッシュしたり、応答しなくなったりしても、Kubernetesはそれを検知し、自動的に新しいコンテナを起動し直します。これにより、システムが止まることを極力防ぎます
- デプロイの自動化: アプリケーションを新しいバージョンに更新するとき、Kubernetesは少しずつ新しいコンテナに置き換えていくことができます。これにより、システムのダウンタイム(サービスが使えない時間)なしでスムーズに更新が可能です。もし問題があれば、すぐに前のバージョンに戻すこともできます
🤝 ~Docker + Kubernetesを使う理由~
Dockerが「料理と道具をまとめた箱(コンテナ)」を作るためのツールだとすれば、Kubernetesは「たくさんの箱を、状況に応じて効率よく管理・運用する」ためのツールです。
1つのアプリケーションしか動かさないのであれば、Dockerだけで十分かもしれません。
しかし、WEBサービスや大規模なシステムでは、データベース、WEBサーバー、バックエンドAPIなど、複数のアプリケーションが連携して動いています。
これらをすべてコンテナ化し、さらに多くのユーザーに対応するために数を増やしていくと、手動での管理はすぐに限界を迎えます。
そこで、Dockerで個々のアプリケーションをコンテナ化し、それらをKubernetesという強力な町の管理者に任せることで、システムの信頼性、可用性、スケーラビリティを飛躍的に高めることができるのです。
この2つを組み合わせることで、開発者はアプリケーションの中身を開発することに集中でき、運用者はシステム全体の安定化に集中するできるようになります。
この分業と自動化こそが、現代のシステム開発と運用において、DockerとKubernetesが不可欠な存在となっている理由です。
👤 プロフィール
![]() |
セントラルソフト株式会社
|