なぜなぜ分析とは
ドラマ「ガリレオ」で福山雅治さんが数式を解いて犯人を導き出すように、原因を論理的に突き止める手法です。
次のような手順で進めていきます。
①課題の抽出と事象の絞り込み
②目的文、改善範囲を記載
③前提条件の確認
④分析と検証の実施
⑤再発防止策案の立案と評価
⑥再発防止策の実施と効果の確認
⑦総点検と横展開
今回は⑤までを進める上でのポイントについて書いていきます。
なぜなぜ分析の議論を、より白熱しやすくする為には、パソコンは使わずに付箋で実施することをおすすめします。分析のログが必要であるような場合は、付箋の写真を撮ってアップすれば良いでしょう。
①課題の抽出と事象の絞り込み
まず最初に、今回の課題と事象を「単語」ではなく「文章」で書きます。事象はより具体的に書くことが重要で、次のように書いてみてください。
×「伝票が入力されていなかった」
△「100枚の伝票の内、伝票1枚が入力されていなかった」
◯「100枚の伝票の内、60番目の伝票1枚が入力されていなかった」
また、あいまいな表現は極力さけて書きましょう。
×「小集団活動が活発ではない」
◯「〇〇ミーディングで、みんなからあまり発言が出ない」
×「製品にキズが発生した」
◯「製品に引っかきキズが発生した」
No | ポイント |
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1 | 「伝票入力ミス」のような単語1で書くことは止めましょう。 |
2 | 文章を見て絵を描ける2ようにしてください。 |
3 | 「量が少ない」ではなく「容器の容量に対して量が少ない」という表現にしてください。 |
4 | 標準やルールをただひたすら守ることが大切なのではなく、職場の担うべき使命3を念頭においてください。 |
5 | 全てに取り組もうとせず、まずは一つ一つ取り組んでください。 |
6 | 「された」「されていた」では時刻が違うことに気を付けてください。 |
②目的文、改善範囲を記載
目的文とは、今回のなぜなぜ分析を行う目的を文章で表したものです。
例えば「~を無くす」「~トラブルを防止する」「~な状態にする」「復旧時間を〇〇時間以内にする」というようなことです。
そして改善範囲として、今回改善する作業名や業務名、部署名などを限定しておくことも重要です。
No | ポイント |
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1 | 目的をはっきりさせて「しゃべりやすい状況」を作り上げてください。 |
2 | 目的文は、具体的な数字を感覚で良いので、目標設定4してください。 |
3 | 改善範囲を広くしすぎないようにしましょう、1つか2つに限定してください。 |
③前提条件の確認
初回、再発かを確認してください。
再発の場合は、原因が複雑な場合が多いので、より細かい情報5を得てください。
メンバーの経験値、作業頻度を書いてください。
「20年目でこの作業は3年目」「年に2度ある作業」のように。
No | ポイント |
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1 | ベテランも失敗することがあります。「失敗した時にこそ、今まで成功してきたことを褒めて」ください。 |
2 | 新人だからミスをしたという意見が出た場合は、あなたが新人の時もミスをしたのか確認してください。 |
3 | 新人が間違えるポイントには問題が潜んでいる可能性があります6。詳しく内容を確認しましょう。 |
現象を時系列で整理してください。
客、自社、ベンダーなどの全ての体制図を書いてください。
次に、いきさつフロー図7を書いていってください。
No | ポイント |
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1 | 情報の伝達手段8も記載してください。 |
2 | 送信を書いたら、必ず受信も書いてください。 |
3 | 原因と思われるプロセスの部分にフォーカスを当て、細かく掘り下げてください。 |
成功した時と失敗した時の違いをあげておいてください。
違いを先にあげてもらうことで、話のすり替えの防止につながります。見間違い、勘違いなどの言い訳もここで全て上げておくと、なぜなぜ分析の時に出なくなるので良いでしょう。
④分析と検証の実施
③までをしっかり準備することで、情報が揃いあとは理路整然とガリレオのように原因を見つけ出すだけです。なぜなぜ分析を始めましょう。
次のようになぜを繰り返します。
15時 12時 11時
間違えた品が入っていた→〇〇さんが間違えた品を棚から入れた→〇〇さんは間違えた品を入れて良いと判断した・・・中略・・・ NG(対策)
↓
13時
→〇〇さんが間違えた品を入れたことに気づかなかった ・・・中略・・・ NG(対策)
↓
14時
→第三者が間違えた品が入っていることに気づかなかった ・・・中略・・・ OK(対策無)
No | ポイント |
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1 | 決して悪人探しをしない9ようにしましょう。 |
2 | ビデオを巻き戻す10ように、写真を浮かべて書いていきます。 |
3 | 動詞だけで逆向きに読み、話が繋がっているかをチェック11してください。 |
4 | 「設定が悪い」などではなく「5ではなく2が設定されていた」のように具体的に記載していってください。 |
5 | 「〇〇し忘れた」という表現が出たら、その時点でなぜなぜ分析は止め12ましょう。 敢えて次を書きたいなら「〇〇をし忘れない"工夫"をしていなかった」はOKです。 |
6 | 怠った、軽視した、ルールを逸脱したなどはNGワードです。 |
7 | 「しなかった」のか「できなかったのか」を明確に13しましょう。 |
8 | 「知らなかった」は「気づかなかった」に変換することで、分析しやすくなります。 |
9 | しょっちゅうを十把一絡げで考えず、一つ一つ確認してください。 |
10 | なぜの深さ5つは精神論なので気にする必要はありません。 |
11 | 主語を省かず、5W1Hで表現してください。 |
12 | 写真のワンカット表現にしてください。 「太郎さんは両手に道具を抱えていたので、段差に引っかかって、よろけて、転んだ」(動画) →「太郎さんは転んだ」(写真)→「よろけた」(写真)「体のバランスが取れなかった」(写真)→「段差に引っかかった」(写真) |
13 | 「いつも」と「たまたま」は全然違います。たまたまに理由が無かったらそこでやめましょう。 |
14 | 人間なので、エレベータで行きたい階と違う階のボタンを押すこともあります。つまりヒューマンエラーは発生します。それを防止する「工夫」を考えていくことにします。 |
15 | 「~にもかかわらず」を使うと良いです。 例:「平日にもかかわらず大勢の人が・・・」 |
⑤再発防止策案の立案と評価
担当者は次の視点で再発防止策案を考えてください。
・手順
・フォーマット
・表示/標識
・ツール
管理者は次の視点で再発防止策案を考えてください。
・体制
・役割分担
・責任範囲
・業務の流し方
・日常管理
・案件管理
No | ポイント |
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1 | 担当者は「手順」を「確認しなくて良い」ようにしたり「しないと次に行けない」ようにしていきましょう。 |
2 | 担当者は「表示/標識」は同じ目線で書いてください。 「スピードを落とせ」→「事故が多発しています」 |
3 | 管理者はサッカーの監督14になったように指示してください。 |
4 | 管理者は日常管理、案件管理も大切です。看板に付箋で、当日の作業を書いておいてもらい、いつでも見えるようにしておくのも良いでしょう。 |
5 | 出した対策はすべてやるとは限りません。人・モノ・金で判断してください。 |
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単語は発想力には役に立つのでブレインストーミングなどでは有効ですが、理詰めで行う原因究明には向きません。 ↩
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写真を見るような表現にします。※ワンカット表現と呼ぶ。 ↩
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「〇〇を起こしてはいけない」「起きてたとしても迅速かつ的確に処置する」など、ある意味今あるルールを破ってでも「使命を全うできれば良い」という精神です。 ↩
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前回の半分とか、30%削減とかで良いです。実際にできるかどうかは関係ありません。 ↩
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手順を超えて動作や画面の配置まで細かく確認してください。 ↩
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ベテランは作業に慣れていて気が付かなくなっています。 ↩
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縦軸に今回関係したアクターを一人ずつ並べ、時系列で事象を書いていくフロー図のこと。 ↩
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電話、FAX、メール、口頭など。 ↩
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求めるものが得られません。 ↩
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「右から左」と「上から下」に過去に遡ります遡ります。 ↩
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「判断したから入れた、入れたから入っていた」のようにチェックします。 ↩
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「彼女にフラれて落ち込んでいた」のような、個人的な話には踏み込まないこと。そして対策が出ないような事にもそれ以上踏み込まないこと。「なぜ?と聞かれ"うっ"と言葉が詰まった」場合も同様にそこでやめましょう。 ↩
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特に、まじめなベテランなどは、もともとのスケジュールがめちゃくちゃで、したくてもできなかったことを隠している可能性があります。 ↩
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W杯のコロンビア代表監督ようにレッドカードで選手が退場になった際に、すぐに体制、役割、責任範囲、業務の流し方(プレイスタイル)をしっかりと選手に伝えてください。 ↩