はじめに
今月頭に転職をした。
ついこの間までは採用やマネジメントもやっていた側の人間なので、迎え入れていただく立場になったのは数年ぶり。
そろそろ一ヶ月が経つ...というのもあるが、これまでの転職先での経験も交え、新規参入者としてどういう点に困り感があるか、今後どうしていけば良いかを言語化していこうと思う。
免責事項
新規参入者の立場になってみて改めて感じた・思い出した内容を書いています。
特定の企業や関係者への批判ではありません。
オンボーディングの計画がよくわからないと困る
保険証、マイナンバー、住民税、健康診断、研修、開発環境のセットアップなど、やるべき作業は多い。
それらを複数の関係者から、思いつくままポンポンと投げられるとかなりテンパる。
しかも、関係者(複数)同士で連携を取っているわけではないので
事務Aさん「書類の記入できました?」
経理Bさん「住民税の通知書くださーい、あと健康診断の予約しました?」
先輩エンジニアCさん「環境構築どこまでできました?」
私「わあああ」
みたくなる。
私がマルチタスク下手、というのも往々にして有り得るが、
全容としてどのくらいのタスクがあり、どこまで出来れば本業(?)に集中していくフェーズになるのかを先に示してくれると有り難い。
開発部門ではチェックリストを用意してくれている所もあって、次に何をすべきかいちいち訊ねなくても良くなっていたりする。
こういった部分が仕組み化されているととても助かるので、バックオフィスでも同じように整理できていると助かるなあと思う。
抜け漏れも発見しやすいしね。
相談の仕方(5W1H)がわからない
いわゆる、相談の仕方の相談。
なるべく早いタイミングでしたほうがいい鉄板の話題だと思う。
- そのタスクの相談相手(担当者)は誰なのか
- 担当者が1人の場合、その人が居ないときはどうすれば良いのか
- どんな手段で相談するのが良いか:テキストベースなのか、口頭なのか
- 組織によっては、相談のフォーマットがあるのか、無いのか
- どのタイミングで相談すれば良いのか
- 矢継ぎ早でも次々相談して良いのか?1日にまとめてが良いのか?
また、チームメンバーにほぼ無関係な細かい相談事は1対1の場でやりたいとか、個別の事情がある場合には、参入者側からどんどん伝えていくのが良いと思う。
こういった部分のコミュニケーションをスムーズにするためにも、はじめのうちは定期的に1on1などで会話する機会を作る方が良さそうかな。
例えば前職では週1→隔週と1on1していて、仕事の話もそこそこにひたすら雑談をしていたこともあったが、おかげで心理的なハードルはかなり下げられたと思う。
話し好きでないメンバーの参画時やクールな上司には苦痛かもしれないが、それでも 「ああ、この人、あまり話すのが好きでないんだな」と分かってもらえる/分かることが収穫だったりする ので、個人的にはコミュニケーションの機会はまず作っておけ、と思う。
いずれ不要になったら解体すれば良い。
期待値調整ができていない
自分を採用した人と一緒に働く人は、必ずしも同じとは限らない。
中途採用なら特に、「何はともあれ即戦力であること」を求められていると思う。
ただ、いきなりバリューを発揮できる人は決して多くない。
ビジネスモデルからアーキテクチャまで、前職と100%一致していれば良いかもしれないが、そんな偶然はほぼ無い。
ところが先人は 既にその環境に慣れ親しんだプロフェッショナル なので、場合によっては
え?こんなタスク3日で終わるでしょ?じゃ、よろしくー!
となる場合がある。
相手が自分を何者と思っているのか、どう期待されているのか、それは何をすれば叶えられそうか、自分にできるのか、得意不得意、といったことは履歴書には書いておらず、仮に書いてあったとしても、誰にも伝わっていない。
業務委託であればそもそもの要求に応えられるかどうかがポイントなので、あまり悩むことはないかもしれないが、正社員の場合は特に期待値調整が重要なように思う。
ではどうすれば調整できるかというと、やはり会話する機会を設けることではないかと。
新規参入者側から伝えに行く場合は、「相談」という形で腹を割って話すのが良いと思う。
また、そもそも期待値調整というのは、自分のことをメタ的に認知していないと難しい。
- 自分の特性(得意、不得意、好き、嫌い)
- 自分が不明点を理解するためにどんな要素が必要そうか
- どのような性格、どのような仕事ぶりか
- 自分に何がどのくらいの速度で実現できるのか
- 自分の知識がない・丸腰の領域
- たとえば私はAndroidエンジニアでサーバサイドの経験が無いので、そのあたりの知識が無く状況に応じて誰かを頼りたいなど
こういったことを事前に用意しておき、自分が何を目標にどう進んでいくべきか、方針がそれで良いかを共有することで、 新規参入者が転職先のメンバーを不安にさせない・信頼貯金を積み上げる 、というのは一つのアドバンテージ。
人の名前と顔が覚えられない
新規参入はハリーポッターを初めて読んだ時の感覚に似ている。
えーとまず主人公がハリーね、それから友達のハーマイオニーとロンと...意地悪なマルフォイと...先生が...スネイプ、ダンブルドア、マ、マ、マ、マクゴナガル???(ここらへんで脳の限界)
こればかりはシステム的に解決していただくしかない。
例えば全社会議は顔出し必須だとか、シャッフルランチをしようとか、顔写真つきの社員紹介ドキュメントを作るとか。
正直、時間が解決するようなものでもあるので、とりあえず関係者の名前だけ呼び慣れておけば良いと思う。
嫌だな、と思った時の相談相手がいない
たとえばぐちゃぐちゃなコーディングルール、担当案件の人の少なさ、同僚の当たりのキツさなど、モヤッとすることは多かれ少なかれ出てくるもの。
そういったネガティブな事柄が出てきた時、メンター的な人に話せれば良いが、メンターも人間なので痛い所を突かれて不愉快な気持ちになるかもしれない。
その結果、メンターから言い返されてしまうかもしれない。
これでは参入者の孤立を招く。
例えるなら、参入者は完成された村にある日ひょっこり現れた旅人そのもの。
仮に村長に「なんでも話して!」と言われたところで、「組織側の人」に向かってあれこれ言うのは忍びないのだ。
これは良く組織側に勘違いされやすいが、何も言わない=満足している、ではない。
無闇にトラブルを起こしたくないだけで、そっと去っていく、というケースもある。
ではどうすれば良いかというと、これもやはりコミュニケーションなのだと思う。
特に、これは迎え入れる側の努力が必要で、なんでも言って!なんて言われたくらいで、分かりました〜って本当になんでも話せたらこんなに苦労しないでしょという前提を心しておくべきだと思う。
そしてメンター側が「どんな意見があったとしても、あなたを悪く評価したり不当な立場に置くことはしない」と宣言すること。
その上で、「あなたの意見を取り入れられるかもしれないし、認識違いがあるならこの場で説明したい」とメンターの意向も伝える。
お互いの前提を共有し、意見を言うリスクを低減させ、言葉が双方向に通る構造にしておけば、参入者の意見をリトマス紙として課題を発見できるかもしれないし、参入者側は納得感をもって腰を落ち着けられる。
そこまでお膳立てしなくても...良いオトナなんだから...という意見もあるかもしれない。
だが、正直今のエンジニア業界は良い人材の奪い合いなので、最初の居心地が良くなければ旅人はより豪華な村へと旅立っていく。
個人的には、形式的な歓迎会や自己紹介より、入社後のフォロー体制のほうが重要だと思う。
これは飲み会批判でしょうか?
いいえ、飲みニケーション大好きです。
最後に
改めて書き出すと、企業側にも参入者側にも出来ることがありそうだと感じた。
新規参入者としては、序盤は周囲に信頼してもらうための大切な時期でもあり、同様に組織としてもスムーズに溶け込んでもらうための時期でもある。
いずれにしても重要なのは、情報を整理しオープンにし、コツコツと相手への信頼貯金を積み重ねていくこと のように思う。
ここでお互いに「何か違うな...」とネガティブな印象を持たない/持たせないために、お互いにちょっとずつ努力していきたいところですね。