LoginSignup
17
15

More than 5 years have passed since last update.

10年分の最新技術"予測"をまとめて振り返って懐かしんだ.

Last updated at Posted at 2017-09-30

概要

ガートナー社が出している「ハイプ・サイクル」と呼ばれる技術予測,10年分のデータを集計してみました.「ここ10年間,注目され続けた技術は何か?」「10年の間に色々あったなぁ」
「忘れてたけど,これが来るんじゃないか?」みたいな気づきになればよいな.と思いながら,まとめました.

ハイプ・サイクルとは

ハイプ・サイクルは,ガートナー社が毎年出している技術予測のレポートで,これを見ると,「今後どんな技術が来そうか?」「今自分が流行っていると思う技術は世の中ではどういうステータスか?」ということが分かります.この記事では,「先進テクノロジのハイプ・サイクル」というものを取り扱います.(その他に,「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル」というものもあります.)
ハイプサイクルの定義を公式から引用すると,

新しいテクノロジについて大胆な未来を予測するハイプ (誇大な宣伝) が起こっているとき、そのテクノロジの真の可能性を見極めるにはどうすればよいのでしょうか。果たしてその約束は本当に実現されるのでしょうか。それはいつなのでしょうか。ハイプ・サイクルは、テクノロジとアプリケーションの成熟度と採用状況、また実際のビジネスにおける課題を解消する潜在的な能力などを分かりやすくグラフィカルに示すとともに、これらのテクノロジやアプリケーションが生み出す新たな機会を明らかにします。ハイプ・サイクルのメソドロジは、テクノロジやアプリケーションが時間の経過と共にどう進化・発展していくのかを示し、企業がビジネス・ゴールを達成するに当たって、その展開を管理できるようにする価値の高い知見を提供します。

引用

文言で見るより,画像で見たほうが分かりやすいと思います.
ハイプ・サイクルの2017年度版です.

image.png

引用

それぞれの技術には5つのフェーズがある.と,ハイプ・サイクルでは定義づけられてます.

黎明期

画期的な新しいテクノロジとしての潜在的な可能性への期待から、初期の概念実証 (POC) やメディアの関心によって世間から大きく注目されるようになります。実際に利用できる製品が存在していないことが多く、ビジネス面での真の存続性は証明されていません。

引用

上の例だと「深層強化学習」などがそうですね.確かに,「深層学習」はプロダクトとして実用も入っているような段階だと思いますが,それから,一歩進んだ深層強化学習(DQN等)はまだもうちょっとかかりそう.ぐらいの感覚だと思います.

「過度な期待」のピーク期

初期の宣伝では、多数の成功事例が報じられますが、多くの失敗事例もあります。この段階で一部の企業は行動を起こしますが、ほとんどの企業は静観しています。

引用

ちょっとバブリーなイメージのある技術ですね.IT系といえば,近年は「人工知能が人間を超える!」という流れが強いように,「機械学習」や「ディープ・ラーニング」がこのフェーズに入っているとされています.

幻滅期

実際の導入が行われないなど、結果が出せないと興味が失われていきます。この段階で、ベンダーの淘汰や消滅が進みます。生き残ったベンダーが製品を改善し、早期採用企業がそれに満足を示した場合にのみ投資が継続されます。

引用

上の例だと「拡張現実」ですね.近年において,「拡張現実」が大きくブームだったか?と言われると結構微妙なラインですが,例えば,ポケモンGOで,ポケモンが現実世界にいるように描画されたのは記憶に新しいと思います.また,数年前には「セカイカメラ」というアプリも流行りました.そのような過去の潮流があった中で,最近,Appleなどの大きな会社が拡張現実をOS・ハードレベルでスマホに組み込むことを発表したりしています.そのように先進的というより,ある程度は技術的に枯れ始めて,大手が改善するフェーズに入っているような状態です.

啓蒙活動期

新しいテクノロジが企業にもたらすメリットについての実例が増え、具体化していくとともに理解が広がっていきます。ベンダーから第2世代、第3世代の製品がリリースされます。パイロットに投資する企業の数は増えますが、保守的な企業は依然として静観しています。

ここの例では「VR」が象徴的でしょう.SonyがPlayStationVRを出し,OculusがOculusRiftを出し,HTCがHTC Viveを出し・・・という風に群雄割拠な状態になっています.任天堂が保守的か?と言われたら良く分かりませんが,確かに導入しない企業もあります.

引用

生産性の安定期

主流の採用が始まり、ベンダーの実行能力を評価する基準がより明確に定義されます。市場に対するテクノロジの広範な適用性と関連性が、明確な見返りをもたらします。

この例では安定期を表すプロダクトがないので,過去の例を出すと,「2011年には位置情報アプリケーションが安定期である」とされていました.もう6年も前のことなので,記憶が定かではないですが,この年,「スマートフォンOSの前四半期シェアで、Googleの「Android」が、Nokiaの「Symbian」を抜き、首位に(参考)」なったそうです.確かに私もこの辺でAndroidのスマホを持ち始めた記憶があるので,このあたりからGPSや地図アプリは一般家庭にも普及したものじゃないかなぁと思います.

集計方法

以下の10記事に取り上げられている技術について,集計を行いました.

集計の方法としては,

  1. 一部の表記ゆれの修正
  2. 2016年,2017年度に採用のある技術のみを採用
  3. 2008年~2017年の間に何度ハイプ・サイクルに登場したか?頻度によってランキング

1.に関しては,記事を全部読んだ結果,割と表記ゆれがありました.「ソーシャル分析」と「ソーシャルアナリティクス」,「モノのインターネット」と「IoT」などがあったため,ある程度,正規化して,まとめています.この中で難しいものもあり,「仮想アシスタント」と「仮想パーソナルアシスタント」等もあり,これらは私の主観で判断しています.(この例では分けて考えています)
2. は,「ハイプ・サイクルに2年以上連続で出なかった技術は今後出てくることがなかった」という事実がありました.この結果,2018年度に注目される技術は,少なからず,2016年,2017年にも掲載されているはずなので,この制限を加えています.
3.を採用した理由は, 「ハイプ・サイクルに何度も出てくる技術というのは,おそらく長らく期待されている技術だろう.」という仮説の元,ナイーブに頻度だけに注目しています.(他に良い指標がない.ということも事実ですが.)

集計結果

集計した結果,10年間で,156種類の技術がとりあげられていました.
それらの中から,ランキングのTop 5をご紹介します.

1位 拡張現実

image.png

ARKit 2017年9月 発表

拡張現実(かくちょうげんじつ、英: Augmented Reality、オーグメンティッド・リアリティ、AR)とは、人が知覚する現実環境をコンピュータにより拡張する技術、およびコンピュータにより拡張された現実環境そのものを指す言葉。

引用:拡張現実

先にも紹介した通り,最近ではiOSにも導入された技術で,ざっくりというと現実世界にCGをうまくマッチさせながら表示させる技術.ってところですかね.AndroidではProject Tangoというものがあります.そういえば昔3DSにもAR機能ありましたね.調べてみると2011年とかなので,そう考えるとかなり先進的な取り組みでしたね.

初掲載 2008年(黎明期)
最終掲載 2017年(幻滅期)
掲載回数 9回

1位 ヒューマン・オーグメンテーション

image.png

Ontenna 2016年

ヒューマンオーグメンテーション(Human Augmentation)とは、東京大学大学院情報学環教授でソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)の副所長でもある暦本純一が提唱するコンセプトで、人間と一体化して、人間の能力を拡張させるテクノロジーを開拓していくというものです。拡張する能力の範囲は、知覚能力・認知能力・身体能力・存在感や身体システム(健康)まで幅広く捉えており、これまでに、視線を認識するウェアラブルコンピュータ、ドローンやロボットによる体外離脱視点を用いたトレーニング支援、人間の体験をウェアラブルセンサーやネットワークにより他の人間と共有・接続する人間=人間接続型テレプレゼンスなどの研究を行ってきました。ヒューマンオーグメンテーションはまた、人間とテクノロジー・AIが一体化し、時間や空間の制約を超えて相互に能力を強化しあう、IoA(Internet of Abilities:能力のインターネット)という未来社会基盤の構築を視野に入れた、最先端の研究を体系化していく学問領域となります。

引用:ソニーと東京大学「ヒューマンオーグメンテーション(人間拡張)学」を始動

コンピュータやAIを用いて,人間の能力を向上させる研究分野.といったところでしょうか.おそらくはパワードスーツなんかもこの分野の範疇に入ると思います.私が引用したのは「Ontenna」というプロダクトで,ろうあ者の方が付ける振動ガジェットです.「Ontenna」は音を感知して振動します.音が聞こえない人にも,「音が鳴っている」という情報を振動でフィードバックする装置です.非常に簡単なコンセプトながら的を得た作りだなぁと感心したプロダクトでした.

初掲載 2009年(黎明期)
最終掲載 2017年(黎明期)
掲載回数 9回

3位 量子コンピューティング

image.png

D-WAVE One 2011年5月発売

量子コンピュータ (りょうしコンピュータ、英語:quantum computer) は、量子力学的な重ね合わせを用いて並列性を実現するとされるコンピュータ。従来のコンピュータの論理ゲートに代えて、「量子ゲート」を用いて量子計算を行う原理のものについて研究がさかんであるが、他の方式についても研究・開発は行われている。

引用:量子コンピュータ

個人的にはだいぶ気になっている技術.ムーアの法則が敗れると10年ぐらい聞いていますが,そろそろ次世代のアーキテクチャとして量子コンピュータが来ないかな?と思っています.最近では,IBMが商用量子コンピュータを売り出す.と言っていたり,そろそろピーク期に入らないかな?と思っています.紹介にあげたのはD-WAVE.GoogleやNASAも買った量子コンピュータ.Wikipediaによると,これをコンピュータと呼んでいいのか疑問もあったり,これは量子コンピュータではない!という議論もありますが,今商用で手に入るマシンはこれだけじゃないかな??

初掲載 2009年(黎明期)
最終掲載 2017年(黎明期)
掲載回数 9回

4位 自律走行車

image.png

TESLA 2017年 レベル3 自動運転車発売

いわゆる自動運転ですね.日本のお家芸である車産業がピンチになる分野だと思うので,だいぶお金が投下されている感じがあります.色んな形ですが,自動ブレーキや運転アシストも普通に車についてくる感じになっていて,急展開を迎えた自動車産業だなぁ.と思います.研究レベルでDeepLearningで画像分類にブレイクスルーが起きたのが2012年だったことを考えると,5年で実用レベルというのは,ものすごい動きです.

初掲載 2010年(黎明期)
最終掲載 2017年(ピーク期)
掲載回数 7回

4位 コンピュータ・脳波インターフェース(ブレーン・コンピュータ・インターフェース)

image.png

necomimi 2012年4月発売

ブレイン・マシン・インターフェース(Brain-machine Interface : BMI)は、脳波等の検出・あるいは逆に脳への刺激などといった手法により、脳とコンピュータなどとのインタフェースをとる機器等の総称である。接続先がコンピュータである場合にはブレイン・コンピュータ・インタフェース(Brain-computer Interface : BCI)とも呼ばれる。

ブレイン・マシン・インターフェース

いわゆる「考えるだけで操作できる」ってやつです.民生用のものでは脳波を検知して,動作させるものが多いようです.紹介にあげてるのは,一時期流行ったnecomimi.脳波によって猫耳が動くという,かわいらしいガジェット.天才.

初掲載 2010年(黎明期)
最終掲載 2017年(黎明期)
掲載回数 7回

近年のバズワード系

近年注目を浴びているバズワード系を中心に見てみます.

IoT

初掲載 2011年(黎明期)
最終掲載 2015年(ピーク期)
掲載回数 5回

意外に「IoT」は最近のハイプ・サイクルには含まれていません.しかし,「IoTプラットフォーム」という形で,2015年以降,掲載されています.

機械学習

初掲載 2015年(ピーク期)
最終掲載 2017年(ピーク期)
掲載回数 2回

結構肌感と近いのですが,なんだかなーと思うのが「機械学習」.僕の記憶が正しいと,2013,2014年ぐらいはアドテクって言葉も結構聞いた気がして,そのころには機械学習の話もあった気がするんですが・・・そして,初掲載からピーク期ってあたりが・・・ちなみにディープ・ラーニングは2017年にピーク期で初掲載です.なんかこのあたりが若干(?)の浮かぶところではあります.先述した通り,ディープラーニングスゲーという話は,2012年くらいに出てたので,あれ?と思うことはあります.

ブロックチェーン

初掲載 2016年(ピーク期)
最終掲載 2017年(ピーク期)
掲載回数 2回

たぶん多くの人が興味があるのはbitcoinなどの仮想通貨のほうかもしれません.ハイプ・サイクルでは,仮想通貨は,2014,2015年に掲載されています(暗号通貨).個人的には通貨的価値というより,イーサリアムのようなスマートコントラクトのほうが面白いかな?って感じはしてます.

コネクテッドホーム

初掲載 2014年(黎明期)
最終掲載 2017年(ピーク期)
掲載回数 4回

あまり聞きなれない言葉かもしれないです.要はAmazon Alexa,Google Home,Clover,Gate Box周りです.スマートスピーカーみたいな感じですね.このようなデバイスと色んな家電がつながって(コネクテッド)して,スマートスピーカー経由で家の操作ができる分野のことを言うみたいです.

懐かしい系

もう懐かしく感じてしまうレベルの技術用語

パブリックな仮想世界(仮想世界)

初掲載 2008年(幻滅期)
最終掲載 2015年(幻滅期)
掲載回数 8回

クラウドサービスより掲載回数の長かった「仮想世界」.ガートナー社の詳細資料が見当たらないので,類推になるんですが,おそらくSecondLifeのことを指してる.懐かしー.僕自身やってなかったですけど,SecondLifeで金が稼げる.ってだいぶ話題になった記憶があります.

グループ・バイイング

初掲載 2011年(ピーク期)
最終掲載 2011年(ピーク期)
掲載回数 1回

今回,用語を調べて初めて知りました.いわゆる.共同購入です.この時代には「グルーポン」や「ポンパレ」が流行った時期で,かの有名な「グルーポンおせち事件」が起こったのもこの時期でした・・・でもガートナー社のこの予測は,おせち事件以降に出してるんですよね・・・とはいうものの,1つクラウドファンディングというのは,グループ・バイイングの別形態なのかなーとか考えるとも当たらずとも遠からず的なものは感じます.

電力線ブロードバンド

初掲載 2010年(幻滅期)
最終掲載 2010年(幻滅期)
掲載回数 1回

一時期自宅に欲しかった・・・いわゆるPLCと呼ばれるやつで,家庭内の電気配線をLANにすることが出来るという代物だった.有線の取り回しが面倒だった実家とかでは自分の部屋ではネットが出来なかった・・・世の中的には,「電力線にブロードバンドの信号を送るのはアナログ無線にノイズが出る!」みたいな,理由で業界的にしり込みしていた記憶が・・・うちではアナログ無線なんかやってなかったよ・・・そんなわけで,ほとんど普及しなかった記憶があります.ハイプ・サイクルでもひどい扱いで,「安定期に達する前に陳腐化」という始末・・・

タンジブル・ユーザー・インターフェイス

初掲載 2010年(黎明期)
最終掲載 2010年(黎明期)
掲載回数 1回

既存のコンピュータの概念を一新し、形のない情報を直接触れることができる(タンジブル)ようにした、より実体感のあるインタフェースである。

参考:タンジブルユーザインタフェース

ありていに言ってしまえば,タブレットPCのようなもの.である.
たまたま自分が学生時代のとき(2008年ぐらい),学校にMicrosoftの人が来てくれて,色んな動画を見せてもらった.ImagineCupだったり,XAMLだったり,その当時はXbox上でC#で自作ゲームが作れるXNAが売りだった.そんな中で,あったのが,コレ.MicrosoftのSurface(見せてもらったのと同じ動画ではないけど)

こんな感じに未来はなるんだ!すげー!どうなってんだー!?と思った記憶がある.今となってはSurfaceはiPadみたいなものになったけれども,自分の中でのSurfaceはコレ.このデカさで,インテリジェントなテーブルみたいなやつ.この辺の技術も普通になってしまった感もあるけれども,淘汰されてしまった結果,指が最適解のインターフェースだったのかなぁ.

まとめ・感想

「最新技術予測のまとめ」と標榜しながら,「おっさんの昔語り」みたいな内容になってしまいました.
Top5に入るような技術はかなり難しい技術だと思います.Qiitaでもそれらに関連する技術の記事というのはほとんどないです.最近は,かろうじて拡張現実周りがあるぐらいですかね?
自分は割と楽しみにしながら,このハイプ・サイクルは読んでいます.毎日,技術系の記事はキャッチアップしているつもりですが,どうしても落ちてたり,先進技術に関する知識の取得は難しい面もあります.なので,年1の棚卸のような気分でハイプ・サイクルを見て,「あ,なにこれ.この技術知らない.ちょっと調べておこう.」ぐらいの感じで見てます.それで,楽しそうだったら,ちょっとライブラリを漁ったり,実際に組んでみたりしてみています.
技術者として,色んな所の先端の技術を知っているのも,1つ価値ではありますが,「ビジネスとの接合」も考えながら,先端技術を知り,自分の勉強する技術を決め,市場価値の立ち位置を考える.というのも1つキャリアの考え方ではないかなぁ.と思っています.

17
15
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
17
15