どれだけ努力すれば報われるのか?
ある日、新規事業のことについて考えて散歩をしていました。どんなことをすれば儲かるかなぁ。と。しかし、新規事業というのは、話題性がありそうなものをやるも、最初の勢いだけで後は泣かず飛ばずということは往々にしてあるものです。一方で、手数を増やせば、それだけ市場に対する、学習が進み、いつかは大ヒットを狙える。という考え方もできそうです。しかし、これはチキンレースで、「当たるまで頑張る」というのは、相当しんどい考え方で、コスパやタイパを求めると、とても非効率な戦術になります。そういう新規事業開発って一般的な雇用形態でうまくいくのか?とかいう疑問も生まれていました。では、実際問題、新規事業開発というのは、どれほどあたるのか?というのが気になってきました。そんな中で、プラプラと歩いていると、
「ランチパックっていいんじゃない?」
という天啓がおりてきました。長年売り出されているシリーズのパンですし、ラインナップも多いであろう。それでいて、おそらくこういうのはネットに奇人がいて、全部のパンをまとめている人が居そうだな。という予感がありました。そんなわけで、
「ランチパックは毎年どれくらいの新作が売られているのか?どれくらい定番化しているのか?」
から、どれほど新規商品開発というのは難しいのかを紐解いていこうと思います。
ランチパックのデータ収集
ランチパックのデータは、ほぼ公式ページにまとまっており、発売中の商品と、過去に発売した商品の2ページにまとまっていました。
過去に発売した商品には、発売年が書いているので、これがデータの参考になりそうです。
しかし、発売中の商品には、発売年が書いていないので、何かしら補完をしてやる必要がありそうです。
というわけで、URLに注目します。以下のデータは現在発売している「ピーナッツクリーム」のページです。URLにproduct_idというものがついており、おそらくピーナッツクリームの製品番号が2454ということが分かります。
https://www.lunch-pack.jp/lineup-gallery/detail.php?product_id=2454&page=2
では、製品番号が2453と、1つ前のデータはどうなっているでしょうか?
https://www.lunch-pack.jp/lineup-gallery/detail.php?product_id=2453
これは、「バファローズカレー風とメンチカツ」という商品になっています。この商品は過去に発売した商品なので、発売年が分かっており、2021年です。ということは、ほぼ製品番号が隣接しているピーナッツクリームは2021年に発売された商品だと分かります。
このように、現在発売中のデータの部分は、都度類推し、補完していきながらデータを整備していきます。
ランチパックの統計データ
2023/05/04までのデータを集計したものです。現在までに売り出されたランチパックの商品数は2,383件。そのうち、現在発売されている商品は57件。現在売り出されている割合は2.4%です。
集計項目 | 値 |
---|---|
今まで販売されたランチパックの商品数 | 2,383 |
現在販売されているランチパックの商品数 | 57 |
現在販売されているランチパックの商品の割合 | 2.4% |
グラフにするとまぁまぁえげつなくて、ほとんどの新規商品は定着せずに消えてるということが分かります。
では、発売年毎に集計を取ってみましょう。こうみると分かることがあって、2020年以降、最近売り出された商品に関しては、比較的継続して売っているようです。一方で、2013年のあたりで大きな商品数の増大があるようです。これは何故でしょうか?
不思議に思って、Wikipediaで調べてみました。
2013年(平成25年)7月1日 - 連結子会社の株式会社デイリーヤマザキを吸収合併し、社内カンパニーのデイリーヤマザキ事業統括本部としてコンビニの経営に本格参入した[注 5]。
子会社のコンビニであったデイリーヤマザキを吸収し、その時に、競争力を高めるために商品ラインナップとして、ランチパックのバラエティを増やした。みたいな意図がありそうです。
この辺りでランチパックに1つの区切りがありそうなので、2013年から2022年までのデータに注目して見てみます。
2013年から2022年までの統計量
項目 | 値(1年毎平均) |
---|---|
発売商品数 | 167.2 |
発売終了商品数 | 165 |
現在販売商品数 | 2.2 |
販売継続割合 | 1.32% |
というわけで、
ランチパックは1年間に平均167.2個新商品が売り出される。そのうち、165個が販売停止する。販売が継続されるのは、全体の1.32%に過ぎない。
ということが分かります。超絶にシビアですね。
繰り返し売り出された製品
かなりシビアなデータが出ていますが、実は大したこと無いんじゃないか?という疑念があります。例えば、ハムカツというランチパックの種類がありますが、これは私も何度か食べたことがあります。しかし、現在の販売されているラインナップにはありません。実は季節ごとに販売したり、販売停止したりして、通年販売しているものが少ないだけではないか?という疑念もあります。というわけで、商品名でユニークをとって集計します。
項目 | 値 |
---|---|
ランチパックの全商品数 | 2,383 |
ユニークなランチパックの商品数 | 2,051 |
ユニークな割合 | 86.0% |
というわけで、86%というかなり高い割合で、ランチパックの新規商品は作られています。ネタの使いまわしは、ほとんどしていないようですね。
趣味程度に、販売回数の多い順のランキングを作りました。
製品名 | 販売回数 |
---|---|
チキン南蛮風 | 7 |
カスタード&ホイップ | 6 |
ハムカツ | 6 |
ピザソース&チーズ | 6 |
メンチカツ | 6 |
メープル&マーガリン | 6 |
お好み焼き風 | 5 |
シュガーマーガリン | 5 |
スイートポテト&マーガリン | 5 |
ソース焼きそば&マヨネーズ | 5 |
ブルーベリージャム&マーガリン | 5 |
プリン風味 | 5 |
ポテトサラダ | 5 |
マンゴークリーム&ホイップ | 5 |
ハムカツ・ピザソース&チーズ・メンチカツ・ソース焼きそば&マヨネーズあたりは記憶にあります。意外にポテトサラダなどオーソドックスよりなものでも定着せず、通年販売しないというのは、なかなか興味深い点ではあります。一方で、チキン南蛮風が7回というのは、だれか猛烈に押したい人が居るんだろうな・・・というのをなにかしら感じるデータではあります。もしくは、宮崎とか一部地域で熱烈にファンがいて、毎年、期間限定販売するのかな?みたいなことは思います。
企業規模からみる新製品の成功率
山崎製パンのIR情報を引っ張ってきます。
山崎製パンの従業員数は約20,000人だそうです。これらを雑にまとめるとすると、
山崎製パンの従業員数は約20,000人です。
ランチパックの新商品は年間167個販売されます。
これは従業員120人あたり1個の割合です。
来年まで販売継続されているランチパックの新商品は167個中、2個(1.32%)だけです。
従業員数を新商品の数で割るのは意味のある指標か?と言われると不正確な部分もあります。山崎製パンは別のパンも売ってます。その中で、間接部門の収益構造も含めたうえでの数字ということになります。
これは色々な難しさを持っていると思いますが、例えば、従業員数が120人の会社があり、年に1つしか新商品が出てこない。これは社員の怠慢だ!と言えるかというと、まぁ山崎製パンぐらいのデカい会社でもそれぐらいなんだし、無理なのでは?と言えると思います。
感想
最初は、新規事業ってどれくらい成功するんだっけ?という問題意識から、ランチパックの新製品ってどれくらい成功するんだっけ?という話を展開していました。最近、テレビで放映されているジョブチューンという番組は私は好きで、コンビニの食べ物でもこんなにこだわってるんだーと感心することも多いです。少し前のアニメだと、「今日も残業で疲れた。空いてる店はコンビニしかない。昨日と同じコンビニの弁当を食うしかない。」みたいな、どちらかというとネガティブなイメージの強い食べものでしたが、そういう番組を見ることで、やっぱりコンビニの商品作ってる人も、みんな頑張ってんだなぁと思うようになりました。しかし、現実は結構残酷で、山崎製パンと言われるような大企業でも、1.32%しか定着するような製品を作れない。ということを考えると、新規商品開発・新規事業開発というのは、修羅の道であると再認識しました。