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できれば新米スクラムマスターのときに理解しておきたかった大事なこと

Last updated at Posted at 2021-12-10

この記事は カオナビ Advent Calendar 2021 11日目です!

はじめに

こんにちは、カオナビの小松です。

フロントエンドエンジニアとして入社したのですが、今はスクラムマスターやEMなどをやらせてもらっています。
特にスクラムマスターの経験は本当に刺激的で魅力的で興味深くて、気がついたら2年ほど経っていました。

基本的には毎日苦悩しているのですが(これがまた楽しいのですが)、その中でやっと心の底から理解できたことや目から鱗な学びがありました。
その都度「もし時間を戻してスクラムマスター駆け出しの頃の自分にこれらの情報を伝えることができたらなぁ…」と妄想してしまいます:innocent:

というわけで時間を戻すことはできないんですが、これからスクラムマスターを経験される方の糧になればと思い学びを書き残しておきたいと思います!

ルールより裏にある本質を学ぶために時間を使おう

当時の自分は印刷したスクラムガイドを鞄に入れ、暇さえあれば何度も読み返していました。
そしてチームとスクラムのイベントを過ごした後に
「今日はあの部分がスクラムガイド通りにできなかったな…:dark_sunglasses:どうして守ってくれないのだろう?:thinking:
などと頭を悩ましていました(ちょっと痛い感じかもですが当時はこれでも真剣でしたw)。

その後、会社の補助もあってCSM研修に参加することができたのですが、そこでスクラムフレームワークが複数の学術的根拠・研究データ・理論によって成り立っていることを学びました。
これがきっかけでスクラムが提供するロールやルール、イベントや成果物に対しての「なぜ?」が促進され、一心不乱にインプットし始めました。

スクラムガイドだけではこの辺り補完できないので関連書籍をたくさん読むのが良いかと:muscle:

この辺りからルールを守ってもらうことへの強迫観念が一気に薄れ、「なんのためにやるのか?どんな良いことがあるのか?」を理解してもらおうと努力することにスイッチし、それに伴い自然とスクラムガイドが定義する形にチームのプロセスが収束していきました。

イメージ

この経験から、スクラムマスターはまずスクラムの裏側にあるものへの理解を深め、その上でチームに対してスクラムの実践と学習を手助けすることこそが重要だと学びました。
そしてそれはスクラムガイドにもこんな形で表現されています。

スクラムマスターは、スクラムガイドで定義されたスクラムを確⽴させることの結果に責任を持つ。スクラムマスターは、スクラムチームと組織において、スクラムの理論とプラクティスを全員に理解してもらえるよう⽀援することで、その責任を果たす。

以下に「これは初めからインプットしておきたかったな…」と感じた書籍や情報源を紹介しておきます!

チームと「部屋の中の象」の仲人になろう

「部屋の中の象」とは、見て見ぬ振りされてしまうものごとを表現した比喩と言われています。
なぜ見て見ぬ振りをしてしまうかと言えば…

  • 厄介な問題だから
  • 言い出しっぺになりたくないから
  • 誰かが代わりに言ってくれるだろうと考えるから

などのように基本的に嫌悪や不安や面倒な感情を招くものごとだからであって、決して無視をしていいとは思っていないものが多かったりします(むしろ大事なことが多い:scream:)。

イメージ

スクラムでは検査・透明性・適応の三本柱によって、部屋の中の象が炙り出されやすいと感じます。
ですが、あくまでテーブルの上に持ち込まれた材料が対象になるのであって、そもそも持ち込まれなければそれらの機構によって可視化されることはありません…

とは言えスクラムマスターが『◯◯の件、触れなくていいんですか?:cop:』などと言おうものなら、そこそこの確率でチームはネガティブになると思われますし、言われなければスポットライトが当たらない状態自体が不健全な気がします。
実際自分もこの「直接的に伝えられないけど、積極的に触れられることもない」という膠着状態で頭を抱え込む時期がありました。

その後に色々試したり失敗もした結果、チームが部屋の中の象に触れるハードルを下げる働きかけを行うことが大切だと考えるようになりました。
アクションとしては以下のようなことを取り組んでいます!

  • デイリースクラムで必ず全員で一つずつチェックする「あいまいボード」の運用
  • 匿名性・ランダム性を取り入れたふりかえりアクティビティの導入
  • 言いにくそうに言ってくれた人にこそ積極的に感謝を伝える

匿名・ランダムは強力な効果を生み出しますが、劇薬と同じく依存は危険です… あくまで透明性が担保された状態を目指すという前提は大切かなと。

ムダを削ぐ >>> スピードアップ

数スプリント回し始めるとスクラムチームが以下のような状態になることがあります。
- コミットメントとベロシティの乖離が縮まった状態から変化が生まれなくなる
- ふりかえりの中でアイデアが生まれなくなる

当時の自分は「スクラム開発が馴染んだ結果と思えば良い兆候なのかな?このままでいいのだろうか…?」とモヤモヤしていました。
ちょうどそんなときにスクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術の中で語られるエピソードから衝撃を受けました。

それは、スクラムの生みの親であるジェフ・サザーランド氏がFBIの基幹システム「センティネル」の開発を立て直すというものでした。
プロジェクト開始から5年が経過し、予算である4億5千万ドルの90%近く消化している上に追加予算3億5千万ドルを検討する中、開発完了目処は早くても6年後というまさ絶望的な状況だったそうです。

その状況からバトンを受け取ったジェフ・サザーランド氏が率いるチームが提示した計画は、12ヶ月以内に2千万ドルの予算、人員は元の人数の約1/5で実現するというビックリな内容とのこと。
そしてなんと、最終的には20ヶ月で予算の消化はわずか5%で完成したというまるで神話みたいな実績を残したそうです!

そのために行ったことは主にこの2点のようでした。
- 徹底的にムダを省く
- パフォーマンスを低下させる要因を徹底的に排除する

ムダを減らし、今すべきことにのみ集中することが大幅な時間短縮につながるという考えだと理解しました。
一方、手を動かすスピードを上げるアプローチは伸びしろがそこまで残されていないように思えます(天井に到達しやすいというニュアンス)。

当時はふりかえりの中で「どうしたらもっと早く出来るか?:thinking:」という頭で考えがちでしたが、リーン思考に立ち返ることでこれまでになかった引き算のアクションが生まれ、メトリクスにもポジティブな変化が起きるようになりました!

Start Fishというふりかえりアクティビティのように「労力の割に効果がないので止めるべきこと」など、問いかけの切り口を変えるのがオススメです

さいごに

実際に時間を戻せて過去の新米スクラムマスターの自分と話すことがあればもっと色々言っている気がしますが、今回は特に大切に感じたものを言語化してみました!

スクラムが経験主義を重視するように、スクラムマスターもまた失敗や遠回りをしつつも学習を重ねて成長していくものなのだなぁと思いつつ、これからスクラムマスターとして挑戦されるどなたかの参考になれば幸いです。

明日のカオナビAdvent Calendarもお楽しみに!

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