はじめに
チームのメンバー皆に意見を出してもらいたいような会議をすることはよくあると思います。
本稿は、そういう時に積極的に発言してもらえるようにするための考え方とプラクティスの紹介です。
チームの皆に意見を出してもらいたい会議とは
いろいろあると思いますが、以下に2つの例を挙げます。
UXレビュー
私のチームでは、開発中のプロダクトに対する改善点を皆で挙げるという活動を行っています。
チーム内では「UXレビュー」と呼んでいます。
具体的には、開発メンバーが開発中のプロダクトを実際にユーザーがよく使うユースケースでどんな体験をするのかをデモしながら説明し、それに対して他メンバーが気付いた改善点を挙げるという活動です。
人によって感じ方が異なるため、複数人で実施して、各自が感じたことを積極的に意見してもらった方が多様な観点での改善が期待できます。
設計レビュー
複数人で開発するプロダクトに対して、開発メンバー全員が理解しておいた方が良いアーキテクチャの根幹となる部分に対しては、その設計レビューを皆に参加してもらうことがあります。
設計の改善点を挙げてもらう以外に、全員に設計を理解してもらう必要があります。
従って、各自が設計の改善点の意見を発言すると共に、分からない点やなぜその設計なのか理由を確認する質問などを皆が積極的にした方が目的達成しやすくなります。
過去の私の反省点
恥ずかしい話ですが、過去の私は、独りよがりな価値観を他のメンバーに押し付けていました。
私は新人の頃から、会議の時は一生懸命に自分なりの意見を発言するようにしていました(若手の頃は、まとはずれな発言をすることも多くありましたが)。
その背景として、「意見を求められる会議に参加するからには、何かしら発言して貢献しないと参加する価値がない」と思っていたからです。
だから、会議にて一生懸命に発言しようとする姿勢を持つことは、参加者が当たり前にやるべきことだと考えていました。
そんなふうに考えていた私は、会議で意見を求められても発言をしないメンバーに対して「なぜ発言しないのか」と不満を持っていました。
若手の頃は、その不満をチームメンバー(先輩社員にも後輩社員にも)直接伝えたこともありました。
その頃の私は、会議で発言しない人の気持ちを考えていませんでした。
また、主体性を発揮して発言するように変わって欲しい人に対して、「発言しないと価値がないから発言しろ」というネガティブな意見を伝えても効果が薄いことを分かっていませんでした。
発言しない人の気持ちを考える
意見を求められている会議で、発言しない人の気持ちを考えると、それは日頃のチームでのコミュニケーションのあり方に問題が見えてくることがあります。以下に例を挙げます。
- 「自分なんかが発言しても、チームの皆の時間が使われるだけで、チームの貢献にならない」と思っていることがあります。これは経験の浅い若手メンバーに多くあります。過去に会議で発言してくれた時に、意見を称賛されたことが一度もなく成功体験が皆無の場合は、このように考えることがあります。
- 自分が考えている事が場に出ている意見に反論するものなので、それを発言することで波風を立てたくないと思っていることがあります。チームの会議にて、反対意見が出た時にすぐに否定されることを見ているとそのように考えることがあります。
- 自分が何かを提案した際に、「提案者のあなたがやってください」となってしまい、その結果、自分の仕事が増えて損をすると考えていることがあります。チームのゴールに対してペアプロ・モブプロなどを用いて皆で達成するのでなく、各自がソロでやるタスクが1週間以上先まで決まっており各自に仕事の期限があるような場合は、余分な仕事を持つと損したように感じることがあります。
この例から分かるように、発言しない原因が「発言しないメンバー」だけにあるのでなく「日頃のチームでのコミュニケーション」にもあることを理解することが重要です。
主体的に発言してもらえる土壌を作る
会議で発言するという行動は、「主体性を発揮すること」の一要素なので、主体性を発揮してもらえるようなチームビルディングをすれば、自然に会議でも発言してもらえるようになります。
例えば、メンバーが日頃のチームでのコミュニケーションから、以下のように感じていれば、会議で主体的に発言してくれます。
- 現在のチームが好きなので、チームのために貢献したい
- 自分の発言が、反対意見だったり、少数派の意見だったりしても、頭ごなしに否定されない
- 会議での自分の発言が、チームの貢献になることが何度もあった
- 会議で主体的に発言することは、自分が成長するために有効な手段である
- 主体性を発揮して仕事をした方が楽しいことを多くの成功体験から理解している
なお、私はITエンジニア向け情報誌「Software Design」の2022年5月号から「ハピネスチームビルディング」を題材に連載記事を書いています。
主体性を発揮してもらうためのプラクティスについては、この連載でたくさん公開していますので、よろしければ参照ください。
主体的に発言してもらうためのプラクティス
会議で発言してもらうという観点において、実際に、私が用いているお勧めのプラクティスを3つ紹介します。
会議中に問いかける
会議で発言しない原因は色々ありますが、大きな原因の1つに「会議での発言に慣れていない」ことがあります。
慣れていないと、自分の考えをまとめるのに時間がかかります。頭の中で話す内容をシミュレーションすることに時間がかかり、思ったことをすぐに発言することができません。
そして、考えがまとまっても、慣れていないので発言するために勇気が必要です。発言したことによる成功体験がない場合、勇気を出すのに見合ったメリットがなく、発言をとりやめてしまいます。
勇気を出して発言しようとしても、慣れていないと発言するタイミングをつかめないことがあります。そうこうしているうちに、議題が変わって発言の機会を逸してしまいます。
つまり、会議の進行役は「発言に慣れていないと自分の意見を持っていても発言できないことが多い」という事実を理解しておいた方が良いです。
(過去の私はこれを理解していませんでした)
それを理解していれば、進行役の行動は変わるはずです。
発言しないメンバーに対して「これについて○○さんはどう思いますか?」と問いかければ良いのです。
そうすれば、発言しないメンバーのほとんどは、何も考えていないのでなく、単に発言に慣れておらず発言できなかっただけということに気付くと思います。
発言に対してポジティブフィードバックする
会議であまり発言しないメンバーが、会議で発言した場合は、その都度ポジティブフィードバックすると良いです。
例えば、あるメンバーが何かしらの質問をしたとします。
その質問がきっかけで議論が始まり何かの案が採用された場合は、「○○さんの質問がきっかけでチームの開発が加速しました!」という事を伝えて、自分の発言がチームの役に立ったと感じてもらえるようにします。
会議中にポジティブフィードバックができなかった場合は、会議が終わった後に「○○さんが会議で話してくれた意見のおかげで、色んな案がでましたね」のように伝えます。
そういうポジティブフィードバックを何十回も繰り返せば、成功体験が積み重なり、徐々に主体的に会議で発言してもらえるようになります。
Slackに会議の意見や感想を書くチャンネルを作る
会議の参加人数が多い場合、発言を同期コミュニケーションだけに頼ると、発言待ちの人が出てきてしまいます。
そこで、非同期のコミュニケーションとして、Slackに会議の意見や感想を書くチャンネルを作り、そこに随時書き込みを行うという非同期コミュニケーションも同時に行うと効率的です。
Slackに書いてもらった意見は、随時もしくはまとめて拾っていきます。
過去の経験では、参加者が5人以上いる場合は、これを用いた方が効率的です。
例えば、冒頭で紹介したUXレビューの場合、Slackに以下のようなことが投稿されます。
「新規作成ボタンの位置が分かりづらく感じた」
「この機能は、ショートカットキーもあった方がよくないですか?」
「今まで面倒だったことが解消されて便利そう」
「ドキュメントを開いた直後は、先頭要素を選択した方がいいのでは?」
上記のようなSlackでの投稿をしてもらうことで、以下のメリットがあります。
- 誰かが話している間に、自分の意見を書き込めるので「発言待ち」にならず効率的
- 自分が話すタイミングを見計らう必要がないため、発言のタイミングを逸することが減る
- 意味のある「意見」でなく、ただの「感想」を書いても良いので、自分が思っていることを気軽に共有できる
まとめ
本稿が、チームのメンバー皆が楽しく主体的に発言する会議を行う上で、少しでも参考になれば嬉しいです。
同日に、以下の記事も投稿していますので、合わせて読んでもらえると嬉しいです。
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