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エンジニアに記事を書いてもらいたいマネージャーは、まず自分が記事を書くと良さそう

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1. はじめに

私はハピネスチームビルディングというテーマで発信していて、その中では、「記事を書いてアウトプットすると成長しやすい」というものがあります。
ただ、記事投稿を継続することは、なかなかハードルが高いので、それをマネージャーやリーダーがサポートする方法の詳細を以下の記事に書いていますので、よろしければ参照ください。

エンジニアが記事を書くことの有効性は、様々な人が言及していて、エンジニアが成長するために、とても有効なことを間違いありません。
だから、マネージャーの方々の中には、「うちのチームのエンジニアにも、記事投稿を継続することで成長して欲しい」と思っている人は多くいると思います。
実際、今まで私に対して「どうすれば、エンジニアが記事を書くようになりますか?」と質問してくださった方々が何人もいます。

そういう人に対しては、上記の記事の内容を紹介するのですが、その中で違和感を感じることがありました。
質問してくれた人の話をよく聞いてみると「エンジニアには記事を書いて欲しいけど、マネージャーの自分は記事を書かない」ということがありました。
マネージャーにも何種類かあって、テックリードを兼任するプレイングマネージャーであれば技術記事を書くことが容易ですが、技術に深く関与しない立場のマネージャーは技術記事を書くのが難しいことは分かります。
ただ、そういう場合でもマネジメントのやり方や考え方を記事に書けると思います。そしてそれは、エンジニアが技術の記事を書くよりも意義は大きいと思います。

以降では、マネージャーがマネジメントのやり方や考え方の記事を書くメリットを紹介します。

2. マネージャーがマネジメントの記事を書くメリット

暗黙知を形式知として共有できる

暗黙知とは、個々の経験や感覚に基づく知識のことで、言葉にするのが難しく、形式化されていない知識を指します。一方、形式知は、言葉や数値、図表などによって明示的に表現され、共有や伝達が容易な知識のことを指します。

マネージャーが日々の業務を通じて得た経験や洞察は、多くの場合、暗黙知として蓄積されます。これらの知識は非常に価値がありますが、それが暗黙知のままでは、他の人と共有するのが難しく、また、自分自身がその知識を意識的に活用するのも難しいです。

しかし、マネージャーが自分のマネジメントのやり方や考え方を記事に書くことで、これらの暗黙知を形式知に変換できます。これにより、自分自身のマネジメントの理解が深まり、また、他の人との知識の共有が可能になります

また、記事を通じて自分のマネジメントの考え方を共有することで、チームメンバーや他チームのマネージャーとのコミュニケーションが円滑になります。自分の考えを明確に伝えることで、他の人がその考えを理解し、それに基づいて行動することが容易になります。

言語化スキルの向上

前提として、マネージャーの仕事の中で特に重要なものが「メンバーが共感・納得できるような言語化を用いて伝えること」です。
なぜならマネージャーは、マネジメントによってチームの生産性を最大化することが必要であり、これを達成するためには、メンバーが主体的に行動するよう促す言葉が必要だからです。マネージャーは、やるべきことをメンバーに指示するだけでは不十分です。それを最大のパフォーマンスでメンバーにやってもらうために「メンバーが共感・納得できるような言語化を用いて伝えること」が必要になります。

この言語化のスキルというものは、実践することで向上します。
そして、マネジメントの記事を書くことは、言語化のスキル向上の効果が高いと思います。
エンジニアが特定技術についての記事を書くときは、そこで学んだ事実が記事の中枢を占めます。それに対して、マネジメントの記事を書くときは、事実でなく、ふんわりとした概念や考え方を言語化する必要があります。具体的な事実を書こうとしても、今の仕事でのマネジメントの具体的なやり方をそのまま書けないので(具体的な仕事内容を公開できないので)、いったん抽象化する必要があります。この抽象化だけでも難しいのに、さらに、それを相手に分かりやすく伝える言語化が必要になります。その上、記事をバズらせようと思ったら、共感される言葉を用いる必要があります。
このように、マネジメントの記事を書くことは、マネージャーに必要な言語化スキルを向上させる実践の場として大きなメリットがあります。

今のやり方の良し悪しが分かる

マネージャーを1年以上やっている人であれば、自分なりにやっているマネジメントのやり方や考え方があると思います。
そういう人が、自分のやり方や考え方の記事を書くだけなら、一見、簡単そうに思えます。
しかし、私の場合、いざ記事に書いてみようとすると、なぜ自分がそのやり方をしているのか、うまく言語化できないことが多くありました
つまり、人に説明しようと思って記事を書こうとしてみると、実はそのやり方の本質を全然理解できていなかったということに気付きました。記事を書きながら、そのやり方の意義やメリットがなんなのかを言語化することで、やっとそのやり方に対して「メンバーに共感・納得してもらえる言語化」ができました

また、記事に書こうと思ってよく考えてみると、過去のやり方を踏襲しているだけで、なんの根拠もないやり方をしていることに気づくこともありました。それをきっかけに、今のやり方が改善できたこともありました。

記事を書こうとすると、世の中のやり方を調べたくなる

自分のやり方を記事に書いて公開しようとすると、「もしかして、このやり方は世間では時代遅れかも」と不安になることがあります。これは、とても良いことです。
知見をインプットする時は、必要に迫られていると効率が良くなるので、「不安だからすぐに知りたい」という必要に迫られている時は効率よく知見をインプットすることができます。
(目標設定理論では、学習において具体的で困難な目標を設定することがパフォーマンスを向上させると述べられています)

そのように効率よく世の中の知見をインプットした結果、自分のやり方が時代遅れになっていることに気付いて、改善のきっかけになることがよくありました。

過去の私は、社外のエンジニアの話が改善のきっかけになったこともあります。
細かい部分の記憶は曖昧ですが、あるアジャイルチームでやり方が古い旨で以下のような話があったと思います。

数週間先まで、誰が何を開発するのか、ガントチャートでスケジュールが日単位でビッシリ決まっている。
ここでAさんが空くから、次にAさんにこっちのタスクを任せて、その間にBさんはこっちのタスク、みたいな感じでパズルのようなスケジュールになっている。
この機能はBさん、この機能はCさんのように、機能に専任の人を割り当て、機能と人を依存させている。
フロー効率よりリソース効率を重視していて、ペアプロ・モブプロを一切やらずに、エンジニアの人数分の機能を並行開発している。

当時の私は、「えっ、全部やっちゃってるんですけど」と思いました。
何が問題なのかも分からないという状態でした。
今なら、多少は理解できます。
まず前提として、上記の内容は、一概に問題があるわけではないと思います。
ただ、私のチームの場合は、すべての開発メンバーが、どの機能でも、どの工程でも担当できる状態に(なるべく)していて、ペアプロ・モブプロを活用してフロー効率を重視しているので、並行開発する機能を減らしていますし、数週間先まで割り当てを決める必要はないかなと思います。

メンバーの育成方法の改善

マネージャーは、若手のメンバーに対して育成計画を立てたり教育・指導を行うこともあると思います。
ある時、私は、その育成方法や指導のやり方は、社内や社外に公開できる内容なのかと考えました。過去(10年前)の私だったら、とても恥ずかしくて、まったくできなかったと思います。
当時の私は、クローズドな空間で若手メンバーに対して、自分の経験則だけでなんとなく良いと思っている方法で育成していました。
その育成方法に根拠はなく、ただ自分が過去にされたやり方をマネしていました。マネジメントのやり方は、どんどん進化していくため、自分が若手の頃に経験したやり方をマネするだけでは、時の経過と共に時代遅れなやり方になっていきます。そもそも経験したやり方が良いやり方とも限りません。それを分かっていませんでした。

育成方法に関して、自分のやり方や考え方を記事に書くことで、自分なりに根拠をもった良いやり方に改善され、育成対象のメンバーに対しても、そのやり方の意義を納得してもらった上で進められると思います。

チームの信頼関係の構築

マネージャーがマネジメントのやり方や考え方を公開することで、チームメンバーはその意思決定プロセスを理解しやすくなります(チーム内の意思決定プロセスの透明性が高まる)。これは、チーム全体の予測可能性を高め、不確実性を減らすことにもつながり、信頼を築くのに役立ちます。

また、マネージャーが自分の考えを公開することは、自分の意見に自信を持っていることを示します。自信を持ってやっていることが伝われば、メンバーは信頼しやすいと思います。

もしもマネジメントの記事がバズって多くの共感を得られた場合、さらに良い効果があります。
そのチームメンバーは、自分のチームのやり方が効果的であるという確信を持つことができます。自分たちのマネージャーの考えをより深く理解し、それを尊重するきっかけとなります。何度もバズる記事を書けば、メンバーはチームのやり方が多くの人から支持を得ているという事実を見て、自分たちのチームが正しい方向に進んでいると感じるでしょう。その結果、信頼が深まり、チームの一体感が高まり、生産性を向上させる可能性があります。

マネージャーとしての市場価値の向上

2022年時点でのある調査によると、日本企業の平均寿命は「23.3年」とあります。
最近は、いつ自分の会社が無くなるかは分からない時代なので、他の会社でも雇ってもらえるように市場価値を高めておいた方が、人生が安定すると言えます。

そういう意味で、マネージャーがマネジメントの記事を書くことは、市場価値の向上に繋がると思います。
先に書いた通り、言語化スキルはマネージャーにとって重要なスキルであり、そのスキルが高ければ、マネージャーとして高いスキルを持ってそうな感じに見えます(たぶん)。
要するに、多くの人から共感されるマネジメントの記事(俗に言うバズった記事)をたくさん書いていれば、マネージャーとしての市場価値が上がりやすいと思います。

3. まとめ

マネージャーが自身のマネジメントのやり方や考え方を記事に書くことで、記事を書くメリットをたくさん体感できると思います。
その体験を元にして、記事を書くことで得た言語化スキルを用いて、チームメンバーに記事を書くメリットを伝えれば、「どうすれば、エンジニアが記事を書くようになりますか?」の問題は解消できると思います。

エンジニアとマネージャーどちらも記事を書くメリットはたくさんあるので、皆で記事を書いて楽しく成長できると良いなと思います

ちなみに私はITエンジニア向け情報誌「Software Design」の2022年5月号から「ハピネスチームビルディング」を題材に連載記事を書いています。以下で公開していますので、よろしければ、そちらも参照ください。

Twitterでも役立つ情報を発信しますのでフォローしてもらえると嬉しいです → @kojimadev

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