はじめに
『アジャイルサムライ』の著者 Jonathan Rasmusson が提唱したチームビルディングのための手法である「ドラッカー風エクササイズ」を実施しました。
実施した結果、皆の成長したい方向性が定まりモチベーションも上がって良かったので、その具体的なやり方とポイントを紹介します。
ドラッカー風エクササイズとは
チームメンバー同士で以下の4つの質問に答えます。
- 自分は何が得意なのか?
- 自分はどうやってチームの成果に貢献するつもりか?
- 自分が大切に思う価値は何か?
- チームメンバーは自分にどんな成果を期待してると思うか?
そうすることで、お互いの強みや価値感や期待を知り、信頼関係を築き、チームの成長を促します。
詳細はこちらの Agile Studio のページを参照ください。
今回の実施方針
今回は、GMOペパボさんが公開している「ドラッカー風エクササイズ・ペパボエディション」というやり方をベースに実施しました。
ペパボエディションで通常のやリ方と異なる点は「期待をすり合わせる」 ことを第一の目的として質問を以下のように変更していることです。
3つめの質問は、自分以外のチームメンバー全員分を書きます。
- 自分は何が得意なのか?
- チームメンバーは自分にどんな成果を期待していると思うか?
- 他のチームメンバーに期待することは何か?
今回、私のチームでは、ペパボエディションで紹介されている上記3つの質問に加えて「自分が大切に思う価値は何か?」を加えました。
各自の価値観を表明することは、自己開示と相互理解として重要だと判断したためです。
また、質問に対する回答を書く形式も工夫しました。
実施前にドラッカー風エクササイズの実施例を探したところ、「自分が大切に思う価値は何か?」などの各質問に対して「自由」「誠実さ」などの単語を複数書く形式が多くありましたが、当時のチームの特性を考えると、複数の単語を挙げるよりもその人にとって一番重要なセンテンスを書いた方が、その人の事が分かると判断し、「一番重要な事をセンテンスで書く形式」としました。
まとめると、以下の4つの質問に対して「一番重要な事をセンテンスで書く形式」で実施しました。
- 自分は何が得意なのか?
- 自分が大切に思う価値は何か?
- チームメンバーは自分にどんな成果を期待していると思うか?
- 他のチームメンバーに期待することは何か?
上記の「他のチームメンバーに期待することは何か?」については、もうひと工夫しました。
この質問でお互いの期待をすり合わせるだけでなく、各自が今後成長する方向性が明確になったりモチベーションが上がったりすることを狙って、「控えめな期待でなく、その人に対して自分が考えうる最大限の期待を書く」という方式でやりました。
これは、その時点である程度お互いのことを理解している状態だったため、期待をすり合わせる以上の効果を狙えると判断したためです。
タイムテーブル
以下のタイムテーブルで実施しました。
- やり方と目的の説明:10分
- 記入タイム:25分
- 発表タイム:45分
- 全体の振り返り:5分
7人で実施して合計85分でした。
具体的な実施内容
タイムテーブルの各項目ごとの実施内容の詳細を説明します。
1.やり方と目的の説明:10分
今回のドラッカー風エクササイズのやり方をチームメンバーに説明しました。
ここでのポイントは、やり方だけでなく、やる目的も説明することです。
これをやることで、お互いの強みや価値感や期待を理解できるため、信頼関係が強くなり、各時の成長モチベーションも上がりそうなので、やってみようということを説明しました。
2.記入タイム:25分
今回は全員リモートワークだったので Miro というオンラインホワイトボードを用いて実施しました。
表形式の枠を作って、列名に質問内容を書き、各行に各自が質問の回答を書きました。
「他のチームメンバーに期待することは何か?」の質問に対しては、その行の人に対して各自が記入する形式です。
具体的な記入例として、当時の私の回答内容と私に対してメンバーが期待することを下図に示します。
(実施したのが2年近く前なので、今振り返ると自分の書いた内容にむず痒さがありますが、当時はこんな感じで書いたり書いてもらったりしました)

その他、各質問ごとに、どんな内容が書かれたのか、具体例を少し紹介します。
1.自分は何が得意なのか?
- 責任をもって行動し、疑問点を整理し、しっかり課題を解消してタスクを完了させること
- 苦手なことでも目標に対して死ぬ気で頑張れること
2.自分が大切に思う価値は何か?
- 技術を吸収し続けて技術のスペシャリストであり続けること
- 自分の持つ知見を積極的に発信し、効率的に成長すること
3.チームメンバーは自分にどんな成果を期待していると思うか?
- チームをよりよくするための提案や旗振り役
- デザイン面で知見を出したり活躍すること
4.他のチームメンバーに期待することは何か?(最大限の期待)
- チーム全体の成長をブーストさせるような存在
- UXデザインのスキルを持つエンジニアになって、自身の成長を社内外に発信し続ける
3.発表タイム:45分
記入した表の行ごとに、発表を行います。
具体的には、対象メンバーについて、まず以下の質問に対する回答を自分で発表します。
- 自分は何が得意なのか?
- チームメンバーは自分にどんな成果を期待していると思うか?
- 自分が大切に思う価値は何か?
その後に、対象メンバーに対して「他のチームメンバーに期待することは何か?」の質問に対する回答を他メンバーが発表します。
発表内容に対して「どうしてその点を期待したのか」や「どうしてその点を大切に思っているのか」など、各自の期待や価値観の理由を掘り下げるための質問や、「そんな所が期待されてたとは」などの感想を皆から自由にしてもらいます。
これを実施する時点で全員が会議の中で積極的に発言する土壌ができていれば、それがやりやすいと思います。
私のチームの場合は、月刊誌 Software Design で連載している「ハピネスチームビルディング」の施策(例えばこちらの記事)でそれを実現していますが、そうでない場合は、テキストでのコメントを書いてもらうのもお勧めです。
例えば、Slackを使っている場合、Slackのチャンネルに会議中の質問や感想を書く専用のチャンネルを作成し、発言は音声とSlackの両方で受け付けるようにします。会議の発言に慣れていないメンバーは多人数の会議で発言することに躊躇する傾向がありますが、テキストでの感想なら書いてもらいやすいです。
当時は7人で実施して45分でした(一人当たり6~7分)。
「他のチームメンバーに期待することは何か?」の質問は、人数が増えるほど記入する時間と発表する時間が長くなるため、その点にはご注意ください。
4.全体の振り返り:5分
最後に参加者全員が一人ずつ、自分の価値観を言語化したり他の人からの期待を知ることで、自分自身がどう感じたのか話してもらいました。
具体例をいくつか紹介します。
- 自分が思っていた期待値以上に期待されていると分かった
- 新しい技術のキャッチアップに強みがあることを他メンバの期待で分かったため、今後も頑張ろうと思った
- 先輩たちが「UXデザインのできる人材になること」を期待してくれていることが分かり、自分の目指したい姿として掲げていいんだと思った
- 思い通りの期待値だったため、期待されている自分の強みをより発揮したい
- 自分の頑張りたい方向性に対してすごく評価してもらっていたことが分かり、とても嬉しかった
まとめると実施したことで、以下の良い効果がありました。
- 自分が目指すべき方向性が分かって良かった
- 成長するためのモチベーションが上がった
まとめ
ドラッカー風エクササイズは、自分が目指すべき方向性が明確になったり、成長のモチベーションが上がったり良い効果があるので、とてもお勧めです。
ちなみに私はITエンジニア向け情報誌「Software Design」の2022年5月号から「ハピネスチームビルディング」を題材に連載記事を書いています。以下で公開していますので、よろしければ、そちらも参照ください。
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