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皆でなぜ働くのか過去を振り返ったポエムを書いて発表したら心理的安全性が高まった話

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はじめに

チームの皆で、働くモチベーションに対して過去を振り返ったポエムを書いて発表してみたら、なかなか良い自己開示になって、お互いの理解度が上がり、心理的安全性が高まりました。

とてもお勧めの手法なので、私のチームで実施した方法を紹介します。
元ネタは、実践「最高のアジャイルチーム」を作る方法 という記事で紹介されている方法です。
上記の記事の「ポエムの重要性」という章には、以下のように書いてあり、それを実践してみました。

「なんで今この会社にこのポジションで働いているんだっけ?」ということを小学校ぐらいからの掘り起こしてみんなで書いてるんですよ。「大学行ってこういう勉強しました。こういう経路で今のポジションに就きました」みたいなことを感情や理由を含めて、書いていくと、人の価値観がすごいわかるんですよね。

これを書くのすごい時間がかかって、コストかかるんですけど、非常に重要です。なぜかというと、すごい自己開示できるので「あ、今ここであの人はこう考えているから、次は価値観でこうやって行動するだろう」という予測ができたりするためです。

私のチームでの実践方法

まずこれをやろうと言い出したのは、私でなく私のチームのメンバーです。
私のチームでは、失敗してもいいからとにかく新しいものを試す事が重要という価値観なので、思い付きでも効果見込みが低そうなものであっても、とにかく皆で新しい技術・ツール・プラクティスをどんどん試すようにしています。
詳細は以下を参照ください。

そして、チームの皆で話して、おもしろそうなので、やってみようということになりました。
ただ、いきなり全員が書いて、全員が発表する場を設けるとなると、かなり時間がかかることが予想されました。
そのため、まず1人目がポエムを書いて発表し、それで良い効果があれば、2人目以降も順番にポエムを書いて発表を続けるというやり方にしました。
このやり方ならば、もしうまくいかなくても、小さな失敗で済むからです。

ポエムのフォーマットは、マークダウン形式としました。

発表する場は、朝会の後にしました。
朝会の後に、15分程度の時間をとって、事前に書いてきたポエムを画面共有しながら、発表する形式です。
ポエムを一通り聞いた後は、皆に感想を話してもらいます。
ポエムが大作になったり、皆の感想が盛り上がり過ぎると延長することもあります。

それと、元ネタの記事に以下のように書いてあったので、私のチームでもそれを踏襲して、やりたい人だけがやるという形式としました。

もう1個ポイントがあって、書きたくない人もいらっしゃるので、そういう場合は決して強制せずに、やりたい人だけがやってチームの壁を下げていくことを僕らはやっています。

ポエムの具体例

ただ、これは実際にどんなものを書くのか、具体例がないとイメージが湧かないと思いますので、私のポエムを紹介します。
(当時にチームメンバーに発表した内容そのままでは公開できない部分があるため、一部だけ修正しています)

# 小島優介のポエム

本書は、働くモチベーションを時系列ごとにまとめ変遷を追うための文書である。
小学生時代から、それぞれの時代ごとに、働くということに対してのモチベーションを述べる。

## 小学生時代

小学校5年生の頃に書いた「将来の夢」の作文がある。
その作文には「自分には何のとりえもない」など、自分を卑下したことが多く書かれており、
マイナス思考が強かった。夢はなく「平凡なサラリーマンになっていると思います」と書いてあった。

## 中学時代

将来の事はまったく考えていない。
ただ、好きな女子と同じ高校に行きたかったので勉強を頑張った。
そしてその子と同じ高校に合格した。

## 高校時代

将来の事はまったく考えていない。
自分の家にはあまりお金がないと思っていたので、
通える距離の国立大学で一番偏差値が低い学科を探して受験した。

## 大学時代

惰性で大学院まで進んだが、就職活動を始めるまで将来の事はまったく考えていない。
特にやりたい事がなかったので、就職活動では業種も職種も様々なものに応募した。
この時点では、プログラミングをあまりやったことがなかったので、
IT系以外にも、製造業の会社や機械系の職種などにも応募した。
内定をもらえたのはIT系の会社だけだった。

## 就職後

会社に入った後に、なんとなくツールを開発するチームが面白そうだと思ったので、
それがやりたいとひたすらアピールした結果、そのチームに配属された。
他の部署や他の会社の人の話を聞く限り、自分の働く環境は恵まれていると感じていた。
自分が開発しているプロダクトが好きで、年々裁量も広がっていき、仕事にやりがいを持っていた。

## 娘(1歳)を見て涙する転機

ある時、何のために働くのかを考える出来事があった。
人生の中で仕事が最も大変でめちゃめちゃ忙しい時期があった。
その頃は、娘が1歳で、家庭においても育児でなかなか大変な時期。
この時期は、1年以上、友人と会う機会もすべて断っていて、それほど心の余裕を無くしていた。
正直、娘とあまり遊べていなかった。
そんなある日、娘が雑に折られた折り紙で一人で遊んでいるのを見かけた。
よく見ると、それは数ヶ月前に、自分が心の余裕がない中で、雑に折ったペンギンの折り紙だった。
そんなものを娘がずっと大事にして、一人でそれで遊んでいるのを見て、
自分は何をしているんだと思って泣いた。

その時、自分にとって大切な事は何なのか、働く理由を考え直した。
プロジェクトを成功させる事や、社会的な地位や、収入の維持よりも
家族との時間を大切にして、家族と幸せになる事の方が何万倍も大切だと思った。

だから、上司に相談してプロジェクトの計画を変更してもらい、自分の業務量も減らしてもらい、
家族との時間が確保できるようにしてもらった(ホワイトな会社で良かった)。

## 働くモチベーションの変化

家族との幸せを維持する上で、自分はとても危うい状態である事を痛感。
今のままの自分では、今のチームでしか役に立たない人材であり、会社に依存し過ぎている。
当時の職場環境はホワイトだったから良かったものの、常にそうである保証はない。
そもそも、この変革の時代において、定年まで1つの会社で働ける保証もない。

だから家族との幸せを安定して維持するためには、成長して自分の市場価値を高める事が必要。
そのためには技術記事の投稿や社外発表などの発信活動が有効。

発信活動を続けた結果、発信が誰かの役に立つ事で、自分が幸せな気持ちになる事が分かった。
自分の幸せを追求する上で、自己実現が何かを考えた。
「自分がつくったもので、誰かが幸せな気持ちになる」ことが自分の自己実現だと明確に分かった。
だから、自分のチームメンバーが、自分が考案したプラクティスで成長して幸せになる事が、
自分自身の幸せに繋がると分かった。

これらの変遷を経て現在の私の働くモチベーションは以下である。

マネージャーとしてチームのメンバーの成長を促進するために
様々なプラクティスにチャレンジし、そこで得た知見を社外に発信しながら働くことは
自分自身が幸せになるためにやっていることなので、とても楽しんでやれている。

以上

実施効果

まず前提として、この手の活動は、参加したメンバーが本気で楽しめないと効果が低くなる傾向があります。
ただ、その点については、全く問題ありません。
このポエムは、その人の人生を凝縮した物語みたいなものなので、聞く側としては、めちゃめちゃ面白いです。
そして、発表する側もポエムを書いているうちに、自分の人生や価値観をわかってもらいたい気持ちになってきて熱がこもります。だから発表する方も楽しいです。

実施した結果、お互いの知られざる歴史や価値観を理解できて、その人に対する興味や共感が増します。
深いレベルの自己開示になるため、心理的安全性も向上します。

まとめ

チームの皆で、働くモチベーションに対して過去を振り返ったポエムを書いて発表するのは、チームビルディングとしてとても良いプラクティスなのでおすすめです。

ちなみに私はITエンジニア向け情報誌「Software Design」の2022年5月号から「ハピネスチームビルディング」を題材に連載記事を書いています。以下で公開していますので、よろしければ、そちらも参照ください。

Twitterでも役立つ情報を発信しますのでフォローしてもらえると嬉しいです → @kojimadev

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