自己実現の重要性
「楽しく成長」という点において、自己実現は重要です。
たとえば、自己実現として自分が本当にやりたいことを理解してそれがエンジニアリングやマネジメントの活動の中で結びつけられれば、主体的に楽しく取り組み、成長を加速することができます。
自己実現に向かって行動することは、満足感や幸福感を得られると言われていますので、今後の人生において自分が幸せになるための道標にもなります。
よって、私はマネージャーもエンジニアも自己実現を理解した方が良いと考えています。
今回はまず、マネージャーが自分の自己実現を理解する方法を紹介します。
なお、今回紹介する手法は『「コーチング脳」の作り方』(宮越 大樹 著、ぱる出版)という書籍の手法を元に、ソフトウェア開発業務に当てはめた具体例とそのポイントを紹介します。
より詳細な情報は書籍を参照ください。
人生の重要な目的
「あなたの目標は何ですか?」
「それは本当に心から望んでいることですか?」
この質問に対して、「心から望んでいる」と一点の曇なく答えることができる人は、すでに自己実現していると言えるかもしれません。
数年前の私は、この質問にうまく答えられない状態でした。
そのときは「開発中のプロダクトを納期までにリリースすること」が大きな目標でしたが、それを心から望んでいることかと問われると違和感がありました。
そして「他人軸で目標を作っていませんか?」と書籍に書かれた一文を見て、ドキッとしました。
確かに、組織や上司に求められることを自分の目標としていました。
そもそも目標を決めるために目的があるとすると、自分の人生の目的は何なのか、よく分かっていませんでした。
人生における目的は様々ありますが、その中で重要な目的が「自己実現」です。
自己実現とは「自分自身の心が望んでいることに従って毎日を生き、自分が理想とする存在に近づいていく生き方のこと」です(書籍のP44参照)。
しかし、自己実現だけでは不十分です。
アドラー心理学では、他者への貢献を通じて幸福感が得られるとされていますし、実際にそれを実感している人も多いと思います。
だから、「自己実現」と組織や社会への「社会貢献」が両立する道が、自分の幸せに繋がります。
ポイントは、まずは「自己実現」で、その自己実現の手段の中で「社会貢献」になる方法を探すことです。
以降で、私が「自己実現」と「他社貢献」を両立する方法を見つけた具体的な方法を説明します。
自己実現するために価値観を理解する
自己実現は、自分自身が心から望んでいることに向かっていくことですが、過去の私は自分が何を望んでいるのか分かっていませんでした。
自分自身が心から望んでいることを見つけるためには、まず自分にとって重要な価値観が何なのを理解すること必要です。
そこで、過去の出来事の棚卸しを行いました。
過去の出来事の棚卸しとは、子供時代から人生を振り返って、嬉しかった事や充実感を得た体験を思い出す事です。
ここでポイントになるのは、「創作活動で、人に楽しんでもらって嬉しかった」という抽象的な表現でなく、その時の状況、相手がどんな表情だったか、自分はどの瞬間に一番嬉しくて、どう思ったのか、その瞬間をできるだけ具体的にイメージできるように言葉にすることです。
そのエピソードをもとに、自分にとって重要な価値観を見つけます。
例として、私にとって人生で最も嬉しかったエピソードを言語化したものは以下です。
私は子供の頃から漫画やゲームなどの創作活動が好きで、学生の頃、作ったゲームを公開していました。
そのゲームの感想メールの1つを読んだ時が一番嬉しく感じました。
感想の送り主は、重い疾患を抱えた人で、ここ数年はずっと悲しい気持ちのまま暮らしてきたという人でした。
その人が、私が作ったゲームをプレイしたことで、笑っている時は幸せな気持ちになれることを知り、
「これからは私も笑顔を心掛けて生きたい」というメッセージを送ってきたのです。
それを読んだ時、自分でも誰かを幸せな気持ちにできると知ってすごく嬉しくなりました。
そして、自分の創作活動が意義ある事なんだと思えて、
今後は創作活動を誇りを持ってやっていこうと思いました。
思い出すエピソードは1つでなく、複数を思い出して言葉にします。
そして、私がその他に思い出すエピソードも、自分がやったことで誰かを幸せな気持ちにして嬉しかったというエピソードでした。
それらのエピソードの共通点やどんな時に嬉しかったのかを言葉にすることで、自分の価値観が分かりました。
自分にとって重要な価値観は「自分の成果が人を幸せな気持ちにすること」でした。そして、これが心から望んでいることなので、この価値観に向かって生きることが自己実現になると分かりました。
自己実現と社会貢献の両立
次は、自己実現の手段の中で「社会貢献」になる方法を探します。
私が心から望んでいることは「自分の成果が人を幸せな気持ちにすること」で、それを実現する手段の中で社会貢献になることで考えたのが「自分が考えた施策でチームメンバーが幸せな気持ちになること」でした。
では、どうすればチームメンバーが幸せな気持ちになるのか、仕事の中で幸せな気持ち(楽しい・嬉しい)と感じるのは、どんな時かを考えました。
色々ありますが、「主体的な行動で成果が出る」というのは、多くの人が嬉しく感じるのではないかと考えました。
例えば、自分が提案して導入したツールやライブラリに対して、他の人から「便利になった」と言われると嬉しいと思います。
そこで私は「主体的な行動で成果が出る」という体験を繰り返す事に取り組みました。
具体的には、メンバーの主体性を発揮してもらうために、「ハピネスチームビルディング」というテーマでQiitaやNoteで紹介してきたような様々な施策を試しており、今でも試行錯誤しています。
私は「自分が考えた施策でチームのメンバーが幸せな気持ちになること」に向かっていくことが自己実現であり、それが自分の幸せに繋がるという考えに辿り着いたからこそ、心からメンバーの成長を願うようになり、ハピネスチームビルディングの活動や発信を楽しめています。
なお、現在の私の自己実現は、チームメンバーだけでなく、私の記事を読んでくださる読者も含めて多くの人に幸せな気持ちになってもらうことなので、紹介したプラクティスを実践してくださることはとても嬉しいです。
実際、私は数年前まではプライベートで勉強するのは嫌いでした(実際にはプライベートで勉強していましたが、それは仕事で必要にせまられてやっていたことであり、主体的にやっていませんでした)。
今は、自己実現のために調べたり勉強したり記事を書いたりするのは楽しく感じています。
まとめ
自己実現と社会貢献を両立する道を考えて、それに向かって行動することで、楽しく成長できることを説明しました。
今回は、自分自身の自己実現を考える方法の紹介でしたが、次回はチームのメンバーに対して、コーチングでそれを一緒に見つける方法を紹介します。
ちなみに私はITエンジニア向け情報誌「Software Design」の2022年5月号から「ハピネスチームビルディング」を題材に連載記事を書いています。Web上でも以下で公開しています。
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