アプリケーション開発におけるテストのエラーケース
アプリケーション開発では、システムが予期しない異常な状況下でも正しく動作するかを確認するために、さまざまなエラーケースを想定したテストが必要です。
ここでは、代表的なエラーケースと、そのテスト時に確認すべきポイントについて解説します。
1. パラメータ異常
概要:
ユーザーや他システムから受け取る入力パラメータが、意図しない値や形式になっている場合の動作を検証します。
主なケース:
- 不正なデータ型: 期待される型(例:整数、文字列)とは異なる型の値が渡される場合。
- 範囲外の値: 数値が許容範囲を超えている、または文字列の長さが制限を超える場合。
- 必須パラメータの欠如: 入力に必須の項目が欠けている場合。
- フォーマット不正: メールアドレス、日付、電話番号など、特定のフォーマットが必要なパラメータが不正な形式の場合。
テストのポイント:
- 入力検証が適切に実施され、異常値の場合にエラーメッセージが返されるか。
- システムが安全にエラーをハンドルし、クラッシュや予期しない動作が起こらないか。
2. HW異常
概要:
システムが依存するハードウェアの異常(ディスク、メモリ、ネットワークなど)に対して、アプリケーションがどのように対処するかを確認します。
主なケース:
- ディスク障害: 読み書きエラーやディスク容量の枯渇。
- メモリ不足: システムメモリの枯渇によるパフォーマンス低下やクラッシュ。
- ネットワーク障害: 接続の切断、パケットロス、遅延などによる通信エラー。
- 周辺機器の不具合: センサーやその他の外部デバイスの故障。
テストのポイント:
- ハードウェア障害時のエラーハンドリング、リトライ処理、フェイルオーバーが適切に行われるか。
- 障害発生時に適切なログ記録や通知が行われ、迅速に対応できる体制が整っているか。
3. プロセス異常
概要:
システム内のプロセスが異常終了、ハング、または予期しない動作を起こした場合の対処方法を検証します。
主なケース:
- プロセスクラッシュ: 例外発生やシグナル受信による突然の終了。
- タイムアウト: 外部プロセスとの通信がタイムアウトし、結果が得られない場合。
- リソースリーク: メモリ、ファイルディスクリプタ、接続などのリソースが解放されない場合。
テストのポイント:
- 異常終了時にシステム全体に影響が及ばないように、適切なリカバリや再起動の仕組みがあるか。
- 障害発生時のログ記録とアラート機能が適切に機能しているか。
4. 不正なシーケンス
概要:
アプリケーション内の処理や、システム間のトランザクションが、想定された順序で実行されない場合の影響を検証します。
主なケース:
- 操作順序の誤り: たとえば、ログイン前に特定の操作を実行しようとする場合。
- 非同期処理の競合: 非同期タスクが実行順序の乱れによりデータ不整合やデッドロックを引き起こす場合。
- トランザクションの不整合: コミットやロールバックが適切なタイミングで行われない場合。
テストのポイント:
- シーケンス違反が発生した場合、適切なエラー処理とシステムの状態保全が行われるか。
- 状態遷移の検証や、順序が乱れた際のリカバリメカニズムが実装されているか。
5. セキュリティ
概要:
システムが攻撃や不正アクセスに対してどのように防御できるか、または異常な入力や動作に対してどのように反応するかを検証します。
主なケース:
- 認証・認可の失敗: 不正なユーザーや権限外の操作が行われた場合。
- インジェクション攻撃: SQL インジェクション、クロスサイトスクリプティング(XSS)などの攻撃。
- セッション管理の問題: セッションハイジャックや不正なセッション継続。
- 暗号化の不備: データ送受信や保管時の暗号化が不十分な場合。
テストのポイント:
- 脆弱性スキャンやペネトレーションテストにより、セキュリティホールがないか確認する。
- エラー発生時に内部情報が漏洩しないよう、エラーメッセージが適切に制限されているか。
6. ネットワーク異常
概要:
通信環境の不安定さ、遅延、切断など、ネットワークに起因するエラーケースです。
テストのポイント:
- ネットワーク障害時の再接続、リトライ、タイムアウト処理が適切に行われるか。
- 通信エラー発生時にシステム全体が影響を受けず、部分的な機能停止で済むか。
7. パフォーマンス異常
概要:
高負荷やリソース枯渇状態で、システムが適切に動作するかを確認します。
テストのポイント:
- ストレステストや負荷テストにより、システムのボトルネックやパフォーマンス低下の原因を特定する。
- 異常時のエラーハンドリングやリソースの解放が適切に行われるかを検証する。
まとめ
エラーケースのテストは、システムの堅牢性と信頼性を保証するために不可欠です。
各エラーケースごとに、以下の点を重点的に確認しましょう。
- パラメータ異常: 入力値の検証と適切なエラーハンドリング。
- HW異常: ハードウェア障害時のリカバリ機能と監視体制。
- プロセス異常: 異常終了やリソースリークに対する自動再起動やログ記録。
- 不正なシーケンス: 操作順序の乱れに対する防御と状態管理。
- セキュリティ: 認証、入力検証、暗号化、セッション管理の徹底。
- ネットワーク異常・パフォーマンス異常: それぞれの障害に対するリトライ、タイムアウト、負荷分散の実装。