Bluetoothとは
Bluetoothとは何か?
Bluetooth(ブルートゥース)とは、2.4GHz帯の無線を使って、近距離でデバイス同士をケーブルなしに通信させるための技術規格である。主にスマートフォン、イヤホン、スピーカー、マウス、キーボード、車載機器など、日常生活でよく使う電子機器同士の無線接続に利用されている。
Bluetoothの特徴には以下のようなものがある:
- 通信距離は数メートルから最大100メートル(機器のクラスによる)
- ペアリングによる簡単な接続
- 低消費電力(特にBluetooth Low Energy:BLE)
- 通信速度は数Mbps程度(用途による)
Bluetoothの名前の由来
Bluetoothという名前は、10世紀にデンマークとノルウェーを統一したデンマーク王「ハーラルド・ブロタン(Harald Bluetooth)」に由来する。彼のあだ名「Bluetooth(青歯)」は、彼の歯の1本が変色していたという逸話から来ている。
異なる部族を統一したハーラルド王になぞらえて、Bluetooth技術も異なるメーカー・デバイス間の無線通信を統一するという意味合いを込めてこの名称が採用された。
Bluetoothのロゴは、ハーラルド王の名前を北欧ルーン文字で表した「ᚼ(H)」と「ᛒ(B)」を組み合わせたものである。
Bluetoothの登場背景
1990年代、電子機器間の接続には大量のケーブルが必要で、ユーザーの利便性を損なっていた。こうした背景の中、スウェーデンの通信機器メーカーEricsson(エリクソン)が1994年に無線接続技術の研究を開始。
1998年には、エリクソン、インテル、ノキア、IBM、東芝の5社がBluetooth SIG(Special Interest Group)を設立し、Bluetoothを業界共通のオープンな無線通信規格として標準化・普及させる体制が整った。
Bluetoothの歴史(1.0〜5.4)
バージョン | 発表年 | 主な特徴 |
---|---|---|
1.0〜1.2 | 1999〜2003 | 初期版。不安定で普及は限定的。 |
2.0 + EDR | 2004 | 最大3Mbpsへ高速化、省電力化も進む。 |
2.1 + EDR | 2007 | Secure Simple Pairingにより簡単で安全なペアリング。 |
3.0 + HS | 2009 | Wi-Fi併用で最大24Mbpsの高速通信(主にファイル転送向け)。 |
4.0 | 2010 | Bluetooth Low Energy(BLE)導入で超省電力通信が可能に。 |
4.1 | 2013 | LTE干渉への耐性強化、IoT対応改善。 |
4.2 | 2014 | セキュリティ強化、IPv6/6LoWPAN対応。 |
5.0 | 2016 | BLE強化、距離4倍、速度2倍、容量8倍。 |
5.1 | 2019 | AoA/AoDにより方向検知が可能に。 |
5.2 | 2020 | LE Audio登場(LC3コーデック)、マルチストリーム対応。 |
5.3 | 2021 | 電力効率・セキュリティ・接続管理改善。 |
5.4 | 2023 | Encrypted Advertising Data、IoT用途の大規模展開に対応。 |
Bluetoothの周波数帯と身近な周波数帯
Bluetoothは**2.4GHz帯(2.400〜2.4835GHz)**を使用する無線技術で、ISMバンド(産業・科学・医療用帯域)に分類され、世界中で免許なしに利用可能である。
この帯域は、Wi-Fiや電子レンジ、無線マウスなどとも共有されているため、干渉が起きることもある。
他の代表的な周波数帯と用途
周波数帯 | 主な用途 |
---|---|
13.56MHz | ICカード、NFC(近距離通信) |
400MHz帯 | 特定小電力無線(トランシーバー等) |
920MHz帯 | RFID、スマートメーター、LPWA(IoT向け) |
2.4GHz帯 | Bluetooth、Wi-Fi(IEEE 802.11b/g/n) |
5GHz帯 | Wi-Fi(IEEE 802.11a/ac/ax) |
28GHz帯 | 5Gミリ波(超高速・超低遅延) |
Bluetoothの今後の発展
今後のBluetoothは、以下のような分野で大きく進化すると予測される:
1. IoT・スマートデバイス対応の強化
- より省電力
- 同時に多数の機器を管理
- スマートホームや工場設備、医療機器への普及拡大
2. LE Audioの普及
- 新しいコーデックLC3による高音質・低遅延
- マルチストリーム対応で音のズレが少ない
- Auracastによるブロードキャストオーディオ(駅や劇場で同時配信)
3. 高精度な位置情報技術の活用
- AoA/AoDによる方向検知
- 屋内ナビゲーションや人の動線追跡に応用
4. セキュリティと接続性の向上
- 暗号化の強化
- ペアリングの自動化と信頼性アップ
Bluetoothは今後、イヤホンやスマホの枠を超え、日常のインフラ技術として静かに広がっていくと考えられる。特にLE Audio、IoT、屋内位置情報の3つは今後の柱となるだろう。