NATインスタンスとNATゲートウェイの違い
AWS上でプライベートサブネット内のリソース(EC2など)がインターネットへ発信通信を行うためには、「NAT(Network Address Translation)」を使ってプライベートIPアドレスをパブリックIPアドレスに変換する仕組みが必要です。
AWSでは大きく分けて「NATインスタンス」と「NATゲートウェイ」という2つの選択肢がありますが、それぞれ以下の点で異なります。
1. NATインスタンス
概要
- EC2インスタンスに対してカスタマイズしたAMI(例えばAmazon LinuxにNAT用の設定を加えたもの)などを使い、NAT機能を持たせる方法。
- インスタンスとして起動するため、自分で管理・運用が必要。
主な特徴
-
管理・運用負荷が高い
- OSのアップデートやセキュリティパッチ適用、可用性の確保(マルチAZ対応など)を自分で行う。
- インスタンスタイプやAuto Scalingの構成も手動で設定する必要がある。
-
コスト
- 通常のEC2料金(オンデマンド/RI/スポットなど)に加え、データ転送料がかかる。
- 小規模なら安く済む可能性もあるが、トラフィックが増えると単一インスタンスによるボトルネックが発生しやすくなる。
-
柔軟性
- OSレベルでパケットを制御できるため、NAT以外にもカスタムのプロキシや監視ツール等を組み込む余地がある。
2. NATゲートウェイ
概要
- AWSが提供するフルマネージドなNATサービス。
- VPCのパブリックサブネット内に作成し、プライベートサブネットがインターネットにアクセスするときに使われる。
主な特徴
-
管理の手間がほぼ不要
- ソフトウェアやOSの更新、可用性確保はAWSが面倒を見てくれる。
- スケーリングも自動的に行われ、高負荷にも対応可能。
-
高可用性
- 同じAZ内では冗長化されており、障害が起きにくい。
- マルチAZ構成にするにはAZごとにNATゲートウェイを置き、ルーティングを設定する必要がある。
-
コスト
- 時間単位の料金とデータ転送料金が課金対象。
- NATインスタンスよりやや割高に感じることもあるが、運用コストや手間削減のメリットが大きい。
3. 選択の目安
-
小規模で柔軟性を重視
- NATインスタンスが向いている場合もある。
- インスタンスに細かい設定や独自のパケット操作をしたい場合。
-
管理負荷を最小化し可用性を確保したい
- NATゲートウェイがおすすめ。
- ほぼ運用不要で高可用性かつ自動スケーリングを備えている。
まとめ
- NATインスタンス: EC2をNAT用にカスタマイズ。運用の柔軟性はあるが、管理と可用性確保は自分で行う必要がある。
- NATゲートウェイ: フルマネージドサービス。初期設定が簡単で運用負荷が小さいが、インスタンスに比べるとややコストが高くなる可能性がある。
運用規模や要件(コスト・可用性・運用リソース)を考慮して使い分けるのがベストです。