近年のレーザー計測技術の進歩により、超高精度な地形データの取得が可能になりました。
さらに、これらのデータがDEM(Digital Elevation Model)としてオープンに利用できることも多くなってきました。
地形を感覚的ではなく、可視化や定量的解析で理解することが容易になってきています。
特に可視化では、赤色立体地図のような新しい可視化技術の発展により、地形の微細な特徴がより明確に表現できるようになりました。
これらの技術革新の結果、山中に新たな山城や古墳、遺跡が発見される例が増加しています。
また、既知の遺跡についても、より詳細な構造が明らかになってきました。
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最先端技術で南伊豆の山城2城が現る
南伊豆町で行われたレーザー測量調査によって、白水城跡と矢崎城跡が三次元画像化されました。
地形の詳細な特徴が明らかになり、歴史的な価値が再評価されました。 -
未知の遺跡はAIで発掘…3次元地形データと組み合わせ、古墳や寺院跡35か所発見
奈良文化財研究所では、AIと航空レーザー測量を組み合わせ、未知の遺跡を発見する技術を開発しました。
たつの市揖西町では直径15メートルの円墳が発見されるなど、35か所の古墳や寺院跡が新たに確認されました。
地名研究への応用
詳細地形データの活用は遺跡発見や構造理解だけでなく、地名の由来を地形から可視化・定量化する可能性も開いていると筆者は感じています。
その手始めとして、筆者は群馬県邑楽館林地域の「シベ」と発音する地名に注目し、DEMから生成した微細地形の可視化と現地調査を通じ、「シベ」地名の由来に関する先行研究の仮説を検証しました。
従来の研究では、「シベ」はくぼんだ地形を示す地名とされていましたが、具体的にどのような地形を指すのかが明確ではありませんでした。
従来の等高線が粗い紙の地形図では詳細な地形の把握が困難であったためでしょう。
しかし微細地形DEMを用いることで、「シベ」地名の場所と詳細地形を照合し、先行研究の仮説が成立しうることを可視化し、示すことができました。
新たな研究の可能性
このように新しいデータと技術を活用して、これまで感覚的だった地形と地名の関係を可視化・定量化して研究できる可能性が広がっています。
定量的研究の一例として、地形の形を特徴的なモデルに変換する手法も提案されています。
- Classification of topography for ground vulnerability assessment of alluvial plains and mountains of Japan using 30 m DEM
- 地形量によって特徴づけられた地名の分類
今後、このような手法を導入した地名研究がさらに発展することで、地名に関する理解がさらに深まる可能性があります。
筆者も引き続きこの方向性での研究を進め、深めたいと考えています。