最近流行りのChatGPTに「自律」について説明を求めると、次のような返答がありました。
自律とは、自分自身が自己管理や自己コントロールを行う能力のことを指します。これには、意志力や習慣、行動の決断などが含まれます。自律は、個人が成長し、自己実現するために必要な能力です。また、社会や集団での正しい行動や公正な判断をするためにも重要です。
「自律」はどんな組織でも重要視される要素でしょう。
しかし、実際に自律したメンバー、チームであり続けることはなかなか難しく感じています。なぜなら本人やチームだけの問題ではなく、それが属する環境に大きく左右されるものだからです。
そのような環境の要因を無視して、若手のメンバーや新しくできたチームに自律を強制させるのは、よい手段とは言えません。
自律性を高めるように支援する
そのかわりマネージャーや経験あるメンバーは、自律性を高めるような支援はできるだろう。というのが筆者の考えです。
そこで重要なのが「権限」です。「適切な権限をあたえよう」というフレーズは、おそらく何度も見たことがあるのではないでしょうか。筆者もこれを意識してよく仕事をしています。
そして最近読んだ『マネジメント3.0』で紹介されている権限の与え方にとても納得したので、これを紹介させてください。
権限は二択でなくグラデーション
権限をあたえようと考えたとき、よくやってしまう間違いは、
- この意思決定・タスクはAさんに任せられる
- この意思決定・タスクはAさんには任せられない
というように、権限を与えるか与えないかの二択にしてしまうことです。
あなたの最初の自動車教習で、あなたの運転共感があなたに運転ハンドルを任せたかもしれないが、彼は確実にあなたに左折する時あるいは右折する時を正確に告げたと私は思う。多くの教習の後、あなたはいくらかの経験を積んだところで、彼はあなたに「先週、あなたが電話ボックスに激突しそうになったショッピングセンターに行こうか」と言い、そこに着くまでの道をあなたが自分で探さねばならなかったかもしれない。そして、経験を積んだ運転者であれば、教官は「私が昼寝を取る間に、ここいらを少し運転してみないか」と言ったかもしれない。 1
上記の例は、教官が生徒に対して「すこしずつ権限をわたしている」場面を描いています。
つまり権限とはグラデーションであり、ある箇所の権限だけをわたすことが可能である、ということです。
7つの権限レベル
『マネジメント3.0』では、権限のレベルを7つに区別しています。自分なりにまとめると、次のように説明できそうです。
- 告げる: 意思決定した旨を伝える ※権限をまったく与えない状態
- 売り込む: 意思決定に関心をもってもらう
- 相談する: 意思決定について意見をもらう
- 合意する: 意思決定をみんなでやる
- 助言する: 意思決定をサポートする
- 尋ねる: 意思決定を説明してもらう
- 移譲する: 意思決定に関わらない
あらためて「告げる」と「移譲する」の間に、5つものレベルがあることに注目したいです。
個人的には「権限をわたしている」とは見られないであろう「売り込む」や「相談する」というレベルがあることに、とても共感を覚えました。
具体例
たとえば若いメンバーやチームに対して「移譲する」ことができない場合2、どの程度の権限をわたせるか考えてみましょう。
もし意思決定やタスクを任せられないとしても、ゆえに「こっちでやる」ではなく「〜のようにしようと思っていますが、どうですか?」というように「相談する」ということができます。
これに対してメンバーやチームから積極的に意見が出るようで、それらの意見が納得いくものであれば、権限のレベルを「合意する」もしくは「助言する」に変化させ、自身はファシリテーターの位置に回ってもよいでしょう。
逆にメンバーやチームが意見を出すのもつらそうな状況であれば、まずは「売り込む」というレベルを設定して、自身で進めてしまうけれどもその意思決定やタスクがどのような意味を持つかを説明し、なんとなくでも理解を得るべきです。
もちろん「告げる」という権限レベルを利用するときもあるでしょう。その場合も、ちゃんとその権限レベルを行使することを伝えることで、メンバー・チームの信頼関係を不用意に壊さずに済みそうです。3
最後に
自律性を高めるための支援として、適切なレベルの権限を意識して渡してみよう、という話でした。
「任せるよ」とか「自由にやって」と言うのはとても簡単ですが、実際は任せられていなかったり、あるいは逆にマネジメントをただ放棄しているだけだったり、上手くいかないケースはよくあります。
このような状態はむしろメンバー・チームの自律性を弱めてしまうと感じますし、心理的安全性の側面からもマイナスな状況ではないでしょうか。
「権限」という言葉は、ちょっと怖かったりトップダウンを意識してしまってとっつきにくいかもしれません。
しかしその苦手意識をとっぱらって、一度チャレンジしてみる価値はあると感じました。