「多様性」という言葉をいまはじめて聞いた人はいないでしょう。
一方で筆者は「多様性とは何か?」ということに答えられないでいました。辞書的な意味は知っていますが、仕事においてどのように活かすべきかはよくわかっていませんでした。
そんななか、『マネジメント3.0』 という書籍にあった多様性に関する記述にとても感銘を受けたので、メモがてら残しておこうと思います。
「多様性」はあればいいものじゃない
まず「多様性」とググったときに出てくる最初のページの説明を引用します。
多様性(ダイバーシティ/diversity)とは「ある集団の中に異なる特徴・特性を持つ人がともに存在すること」です。1
これはとてもわかりやすい説明です。
しかしこの説明を誤って解釈してしまうことも多々あります。それは「多様性があればあるだけ素晴らしい」という解釈です。
多様性はポジティブなものだとは思いますが、コンテクストによっては「なんぼあっても良い」というものでもありません。『マネジメント3.0』では、これを次のように説明しています。
しかしながら、これは常に多様性がより大きいほど、より大きな創造性をもたらすということではない。警察官、オランダ人、バレーのダンサー、よちよち歩きの子供を集めても、あなたが望むようなイノベーションのレベルをあなたにもたらすことはないだろう。すべての多様な観点がより大きなパターンにおいてつながり続けるためには、ある程度の安定性と十分な共通点がなければならないのである。ルーウィンとレジーナは、これを インクルーシブな多様性(inclusive diversity) と呼ぶ2
これはユーモアのある、わかりやすい指摘です。3 仕事において、われわれが大きくすべきなのはインクルーシブな多様性でしょう。
仕事においては重要なのは「新しいつながり」
ここまで理解したとして、実際の行動や日々の思考になにか反映できることはあるでしょうか。筆者はとくにこれを悩んでいました。
『マネジメント3.0』がスゴいと思ったのはここです。たとえば著者は次のように書いており、納得・共感しました。
あなたが新たな人間を雇う際に見るべき重要なことは、その人がどのようにその組織の人たちとつながるかということである。[...]というのは、つながりにおける多様性が、あなたのチームの能力とパフォーマンスに最も大きな影響を持つからである。むろん、多様性にはつながりだけではなく、他のものもいっぱいある。それでもつながりの影響は性の影響よりも確かに大きい。4
筆者なりに言い換えると「個人のタグではなく、その人が加わることによる関係性の変化に意識を向けよう」と言えるでしょうか。
「ちがい」でなく「つながり」
振り返ると、チームや組織の多様性のことを考えるとき、真っ先に性別や年齢など個人ごとの「ちがい」を見てしまいがちな面がありました。
しかしこれよりも重要なものとして「つながり」がある、というのが著者の主張です。
この主張にはとても納得します。多様性が大きくなってよかった瞬間というのは、ただ属性のちがう人が加わったこと自体ではなく、その人がいることによって(ポジティブな)新しいコミュニケーションや新しい観点が生まれたときだったからです。
たとえばいま私のいるチームは男女が半々のチームですが、これが多様性そのものでポジティブな結果を生み出しているとはまったく感じません。
そうではなく、それぞれのメンバーがいることで、観点の見落としがなくなったり、雑談が弾んだり、チャレンジングになったり。その人がいることで新しいものが生まれていくとき、はじめて「さまざまな人が存在してよかった」と感じます。5
最後に
「多様性はよいもの」ぐらいの認識だったときと比べると、ここで紹介した考え方は納得のいくものであり、ビジネスにおける多様性を一歩深く理解、実践できるような気になりました。
「相手のちがいを受け入れる」ことを目的にするのではなく「相手が加わることによる相乗効果を考えてみる」ことで、多様性を広げたり、自身のもつ多様性にも気がつけたりしそうです。
このあたりに関心のある方がいれば、ぜひコメントいただければ嬉しいです。