5万円以下のミニPCは種類がたくさんあって、どれが良いのか不明だったので調べてみた
省スペースで設置できるミニPCが人気なので、サブとして欲しくなりました。
しかしどれが良いのかAmazonで調べてみると、無数のメーカーやCPUモデルが存在し、最適な一台を見つけるのは困難でした。1万円台の安価なモデルが人気のようですが、予算5万円以内で探したところ、価格と性能の関係がおおよそ見えてきましたので解説します。
本記事は2025年7月時点の実勢・市場データに基づいています。
1. 結論:5万円以下の価格帯別「ベストバイCPU」
様々なCPU搭載モデルが存在しますが、性能と価格のバランスを考慮すると、選択肢は以下の3つのクラスに集約されると感じました。
クラス | 推奨CPU | 特徴 | こんな人におすすめ |
---|---|---|---|
エントリークラス (1~2.5万円) | Intel N100 / N97 | 低消費電力・低価格 | 用途限定のサブPC、24時間稼働サーバー |
ミドルレンジ (3~4万円) | Ryzen 7 5700U / 5800U など | コストパフォーマンスが良い | 8コアCPUなので十分快適、メインPCとしての利用も可能 |
アッパーミドル (4~5万円以上) | Ryzen 7 6800H / 7735HS | 強力なiGPU性能 | GTX 1050 Ti やGTX 1650 Max-Q 相当のグラフィック性能なので、原神など軽いゲーム、動画編集、クリエイティブ作業もこなせる |
2. 主要CPUの性能一覧を作成してみた
格安ミニPCに搭載されている主要なCPU性能が型番だけでは分からなかったので、どのような位置関係にあるのかを、ベンチマークスコアで可視化してみました。
CPU/iGPU性能比較表
CPUモデル | コア/スレッド | TDP | PassMark CPUスコア | iGPU(名称) | 3DMark Time Spy | 主な価格帯 |
---|---|---|---|---|---|---|
Intel N95 | 4C/4T | 15W | 5,343 | UHD Graphics | 200 | 2~2.8万円 |
Intel N100 | 4C/4T | 6W | 5,389 | UHD Graphics | 288 | 1.5~2.5万円 |
Intel N97 | 4C/4T | 12W | 5,831 | UHD Graphics | 461 | 2~2.7万円 |
Ryzen 7 5700U | 8C/16T | 15W | 15,627 | Vega 8 | 1,946 | 3~4万円 |
Ryzen 7 5800U | 8C/16T | 15W | 18,707 | Vega 8 | 2,048 | 3.5~4.5万円 |
Ryzen 7 5800H | 8C/16T | 45W | 21,288 | Vega 8 | 1,792 | 4~5万円 |
Ryzen 7 6800H | 8C/16T | 45W | 23,094 | Radeon 680M | 2,377 | 5万円~ |
Ryzen 7 7735HS | 8C/16T | 35-54W | 23,189 | Radeon 680M | 2,377 | 5万円~ |
Ryzen 7 7840HS | 8C/16T | 35-54W | 28,627 | Radeon 780M | 4,201 | (5万円超) |
この表から、Intel N100
とRyzen 7 5700U
の間には、CPU性能で約3倍、iGPU性能で約7倍という大きな性能の差があることが分かりました。やはりコア数の多さは正義。
また、RyzenはCPU内臓のグラフィック性能が、価格に対して性能が良いことが分かりました。この性能ギャップが、実際のPC利用体験に決定的な差をもたらします。3Dゲームも中画質以下の設定なら割と快適に動くようです。
3. なぜ「性能の余力」がミニPCで重要なのか?
「軽作業しかしないから、1.7万円くらいのエントリークラスで十分では?」と考えるかもしれませんが、ミニPCには サーマルスロットリング(熱による性能低下) という避けて通れない課題があります。
熱による性能低下のメカニズム
ミニPCは筐体が小さく、冷却能力に限界があります。そのため、CPUに負荷がかかり続けると熱がこもり、CPUは自身を守るために自動的に性能を落とします。
- Intel N100 (エントリークラス): 4コアという限られたリソースで動作するため、複数のアプリを動かすとすぐにCPU使用率が100%に近づきます。高負荷状態が続くことで発熱し、自動で性能が最大20~30%低下するケースも珍しくありません。これが「Windows Updateが始まると激重になる」現象の正体です。
- Ryzen 7 5700U (ミドルレンジ): 8コア16スレッドのリソースを持つため、同じ作業を低いCPU使用率でこなせます。CPUが"楽"をしているため発熱が少なく、サーマルスロットリングが発生しにくいため、安定した性能を維持できます。
この「性能の余力」こそが、ミニPCの快適さを左右する最も重要な要素です。つまり、基本性能が高いCPUは、熱的な余裕を生み出し、結果として持続的なパフォーマンスを提供するのです。
4. コストパフォーマンスで考える
+1.5万円くらいの追加投資は、本当に価値があるのでしょうか。コストを「時間」と「寿命」という観点から分析します。
「価格あたりの性能」で見る合理性
2万円のIntel N100
搭載機と、3.5万円のRyzen 7 5700U
搭載機を比較します。
- 価格差: 1.75倍
- CPU性能差: 約2.9倍
- iGPU性能差: 約6.7倍
価格は1.75倍ですが、得られる性能は3倍以上です。つまり、1円あたりに得られる性能(性能単価)は、Ryzen 7 5700Uの方が圧倒的に高いと言えます。
「製品寿命」で見る長期的なコスト
- エントリークラス(4コア): OSやアプリの要求スペック向上についていけず、動作がもっさりするので時間かかるしイライラするかもしれませんし、早期に買い替えが必要になる可能性が高いです。もちろん、調べ物をするだけとか、別PCをリモートするためだけに使うとか、用途を決め打ちしているのであればベストな選択肢だと思います。
- ミドルレンジ(8コア): 性能に余裕があるため、長期間にわたって快適な使用が見込めます。後になって「あのアプリもインストールして動かしてみよう」など用途が増えてもほとんど対応できます。
結果的に買い替えサイクルが伸びるため、「長い目で見れば8コアRyzenの方が割安」 という見方もできます。これは「安物買いの銭失い」を避けるための合理的な投資です。
5. 購入前の最終チェックリスト
CPUのクラスを決めたら、次は具体的な製品選びです。同じメーカーでもモデル違いで決定的な機能があったりなかったりします。後悔しないために、以下のポイントを必ず確認しましょう。
技術的チェックポイント
- メモリ: 16GB以上は必須。32GBあると安心です。
- ストレージ: OSの起動速度に直結するNVMe SSDで容量は最低512GBあると安心。ファイルを作成しない用途やオンラインストレージへ格納する使い方なら256GBでもOK。
- USB Type-C: DisplayPort Alternate Mode (映像出力) および USB Power Delivery (給電) に対応しているか。これにより、モバイルモニターなどをケーブル1本でスマートな運用が可能になります。無しでもいいなら若干安くなります。
- VESA対応の有無: モニターやテレビにくっつけたいなら必須。
購入形態の注意点
- 中華ミニPCのリスク: サポート体制は国内メーカーに劣る場合があります。商品説明ページに矛盾があったり記載が無かったり、OSライセンスの有無などをよく確認し、Amazon発送の製品を選ぶなど、返品ルートを確保しておくと安心です。
-
ベアボーンキットの罠: 5万円未満で
Ryzen 9 7940HS
のような高性能CPUを搭載した安価なモデルを見かけましたが、メモリ・SSD・OSが付属しない 「ベアボーンキット」 でした。PC自作の知識がなければ、一部部品が欠けている製品ではなく完成品を選ぶのが賢明です。
6. まとめ
ミニPC選びは、単なる価格比較では本質を見誤ります。
-
性能の序列:
Intel N100
<Ryzen 7 5700U
<Ryzen 7 7735HS
という明確な性能差が存在します。 - 熱問題: ミニPCでは「性能の余力」が安定動作の鍵を握ります。
- コスト: 長期的な視点で見れば、Intel 4コアで1.8万円の格安モデルを選ぶより、+1.5万円の投資で3.3万円くらいからRyzen 8コア搭載モデルが見つかるので、後々のことを考えるとコストパフォーマンスが良くておすすめです。
結論として、Web閲覧などの単一タスクに用途を完全に限定する場合を除き、多くのユーザーにとって、3~4万円台のRyzen 7 5700U搭載モデルが、価格と性能、将来性のバランスが取れた最も合理的な選択と言えるでしょう。
おまけ(番外編)
本記事執筆時点で、予算5万円以内で買うなら下記がコストパフォーマンスが非常に良さげです。しかし中華PCにつき同じ品でも当たり外れがあるようなので自己責任でお願いします。
【3.9万円】CPU:Ryzen 7 7735HS(8コア) / メモリ:24GB / M.2のSSD:500GB
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DCBMHL6Y
【5.0万円】CPU:i7-12700H(14コア) / メモリ:32GB / M.2のSSD:500GB
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D7C1Q2ZP