はじめに
はじめまして。私は30代後半のITインフラエンジニアです。SIerでのキャリアをスタートし、数年前に事業会社へ転職しました。
転職活動を始めた理由は、ビジネス視点を養い、技術により深く関与したいと考えたためです。このため事業会社やITコンサルティング企業を志望し、ありがたいことに複数の企業から内定をいただきました。その中でも今の事業会社を選んだ理由は、当初の動機に加え「この環境なら自分の力を発揮できそうだ」と感じたためです。
しかし、事業会社で働いて数年が経過した今、「この環境で将来もやっていけるか」という疑問を抱くようになりました。この記事では、SIerから事業会社への転職を考えている皆さんに、後悔しないための注意点を私の実体験をもとにお伝えします。
なお、記載内容は個人の考えに基づいており、参考情報としてお読みください。
SIer→事業会社への転職
転職活動中、私は徹底的に準備を行いました。特に内定後のフォローアップ面談に重きを置き、入社後の業務内容や将来性について入社後上長になる方や部署のメンバーから具体的な話を伺いました。その結果、「現時点のスキルで業務をこなせそうだ」、「部署の雰囲気に馴染めそうだ」と感じ、入社を決意しました。
入社後のギャップ
事業会社での業務は、SIerでの経験の延長線上にあると考えていました。しかし、実際に働いてみると業務の背景や動機、環境がSIerとは大きく異なると実感しました。以下に感じた主なギャップを挙げます。
ゴールの違い
所属部署にもよりますが、SIerでは、顧客と合意したプロジェクトを計画通りに完遂することが主な業務の目標と考えています。一方で事業会社では、提供サービスの成功に重きが置かれます。計画通りにプロジェクトを推進したとしても、そのサービスに実用性がない場合、案件としては上手くいった、とは言えない状況だと思います。この違いは、日々の業務の優先順位にも大きく影響します。
技術選定
SIerは、あくまでプロジェクトを計画通りに完遂することが目的なため、技術選定の際も比較的枯れた技術を好みます。事業会社では、知見獲得のために使用経験のないサービスを採用することもあるなど、幅広な技術選定がSIerよりもハードル低く出来ると感じます。
これには、最新トレンドにアンテナを張り、様々なサービスに関する知識を日々獲得する必要があります。技術カンファレンスへの参加・登壇、技術コミュニティへの参加や発信が、SIerよりも重きがあると感じます。
少数・短期対応
事業会社で私が携わっている内製案件では、インフラ業務を1~2名で担当し、約4~5か月程度でリリースすることがよくあります。この1~2名でアーキテクト設計から運用までを対応する必要があり、幅広い知識が求められるため、メンバーの力量に大きく依存します。このため、SIerのようなチームでの協力体制とは異なる働き方を求められる場合があります。
負荷は高いものの、事業会社では車輪の一部として働く、というよりは車体全体を俯瞰し動くため、全体感の視野を持てることや、幅広い業務経験を積めることが良い点だと感じます。
人の固定化
事業会社では、少人数で長期間同じメンバーと働くことが一般的です。これにより、メンバー間の関係性が密接になりますが、新しい人と関わる機会が減る傾向にあります。
ただ、ここは考えようであって、私が所属する事業会社では月ごとに社内のコミュニケーションづくりのイベントがあります。こういったイベントへ積極的に足を運ぶことで、新たな関係性を築けはするため、メンバーが固定化し脱却できない、という状態ではありません。
後悔しないための注意点
以上のように事業会社での業務自体はSIerと似ていますが、その環境は大きく異なります。良い・悪いというわけではなく、それぞれの特徴を理解し、自分の特性や働き方の好みを把握した上で、合った環境を選ぶことが重要だと考えます。
私は、チームリーダーとして多様な人々と協働し、比較的安全な技術を元に自身にとって新しい経験ができる業務にやりがいを感じています。このような性格と事業会社のカルチャーにはギャップがあると気づきました。
次回の転職では、自身の価値観に合った企業を見極めるため、次の観点を重視したいと思います:
- チームの規模と働き方
- 小規模なチームで主体的に動ける環境が望ましいのか、大規模なチームで協力を重視する環境が良いのかを見極める必要がある
- プロジェクトの進め方と柔軟性
- 管理されたスケジュールの中で着実に推進することが好みか、目標に向かい適宜方向性を模索しながら進めることが望ましいかを見極める必要がある
- 業務の中で新しい挑戦が可能か
- 一般的に新規性がある業務の実施に加え、広く一般的ではあるものの自身にとって新しい経験ができる業務かどうかを見極める必要がある
まとめ
SIerと事業会社には明確な違いがあるものの、どちらが良いかは個々の価値観次第です。自分の特性に合わせて選択肢を絞ることが大切です。