概要
- 『エンジニアのためのためのマネジメント入門』の読書メモ。
- Kindle版で読了。文章に色付けができたり、注釈をすぐ読めるので便利。
- エンジニアリングマネージャーを目指している方、マネジメントについて学びたい方に購入して読んでもらいたい。
1章 「こんにちは、マネージャー」
概要
1. マネジメントの定義と歴史
2. リーダーとマネージャーの違い
3. エンジニアリングマネージャーの定義づけ
4. マネジメントの領域について
1. 定義と歴史
- マネジメントとは、「管理すること」(大辞林)
- マネジメントの原点は、1900年頃。
経営学者ファヨールが企業における管理的活動の要素と管理原則について論じた。
(※ 当書ではファヨールの原論を引用している)
その後、1970年代の、経営学者ドラッカーによる定義づけが、現代のマネジメントの基礎になっている。マネジメントとは組織に成果を上げさせるための機能
(Drucker, 1999, p.44)
2. リーダーとマネージャーの違い
- リーダーは、組織を指揮して導く者。
- マネージャーは、組織をマネジメントする者。
3. エンジニアリングマネージャーの定義づけ
-
エンジニアリング組織の成果に責任を持つ者。
- エンジニアとエンジニアリングに対してマネジメントしていく。
-
責任の種類
- 説明責任
決定に至るまでの詳細説明と結果に対しての対処法説明を行う責任。 - 実行責任
自身で実行指揮を取り課題解決を行う際に発生する責任。例) 仕事をチームメンバーに頼んだ場合 説明責任 → マネージャー 実行責任 → チームメンバー
- 説明責任
-
エンジニアリングマネージャーの具体的な業務を定義づけするのは困難。
- 組織ごとに必要とするマネジメントの領域が異なるため。
4. マネジメントの領域について
所属している組織ごとに必要とされるマネジメントの領域が異なるが、
どの組織においても求められる領域は以下であることが多い。
ピープルマネジメント
プロダクトマネジメント
プロジェクトマネジメント
テクノロジーマネジメント
マネジメントの領域には相互関係があるため、
1つの領域について学んだ後、隣接する領域へと広げていくと良い。
印象に残った文章
P.12
エンジニアリングとマネジメントは、まったく異なる分野です。
エンジニアからスライドしてマネージャーになるケースが多いからこそ、上記の考えを忘れてはいけないと思った。
P.12
技術についていけなくなったからマネジメントをするという動機です。
エンジニア視点で考えると、技術に知見のあるマネージャーの方が頼りになるので、
両方とも追求していきたい。
2章 「対話の基礎を学ぶ」
概要
1. コミュニケーションスキルの基礎
2. ティーチング・コーチング・メンタリング技法
3. 1on1ミーティングの方法
4. 会議の進行方法
5. ファシリテーション技法
1. コミュニケーションスキルの基礎
- 言語と非言語のコミュニケーション
- 言語:バーバル・コミュニケーション
- 会話、メールなどの文章
- 非言語:ノンバーバル・コミュニケーション
- 声色、表情、視線、姿勢、しぐさなど
- 言語:バーバル・コミュニケーション
※ノンバーバル・コミュニケーションは練習が必要。
2. ティーチング・コーチング・メンタリング技法
- ティーチング
- ゴールは、教えることを必要としなくなること。
- 主役はクライアント(コミュニケーションする相手)である。
- クライアントの知的好奇心を刺激して内発的動機づけをする。
- 一方通行ではなく、クライアントとのコミュニケーションであること。
- 教える方法には基礎となる原理や設計手法がある。
- 心理学者スキナーが提唱したプログラム学習の5原理
- インストラクショナル・デザイン(教育を支援する活動全般の設計)のADDIEモデル
- より詳細な設計をするにはガニエの9教授事象が参考になる。
- 気づきを与えることで、学びを引き出すために発問を用いる。
【発問の要件】 何を問うているのかがはっきりとしていること 簡潔に問うこと 平易な言葉で問うこと 主要な発問は準備段階で「決定稿」にしておくこと
- コーチング
- ゴールは、クライアントが望むところまで到達すること。
- コーチ自身の意見や答えを言ってしまうのはタブー。
- クライアントが思考を停止してしまうため。
- GROWモデル
Goal : 目標、豊富や願望の明確化。 Reality : 内部および外部の障壁や資源の現状認識。 Option : 可能性、選択肢の発見。 Will : 具体的なアクションを決める。 【大切なこと】 コーチがクライアントに問いかけをすることで、各ステップでの解像度を高めてもらう。 問いかける際には、チャンキングを使用して選択肢やし視野を広げていく。 → チャンクダウン、チャンクアップ、水平チャンク。
- ジョハリの窓
【自身の側面について認知】 開放の窓 → 自分 ○ / 他人 ○ 盲点の窓 → 自分 × / 他人 ○ 秘密の窓 → 自分 ○ / 他人 × 未知の窓 → 自分 × / 他人 × 【大切なこと】 コーチも自己開示をすることで信頼関係を構築していく。 対話を通じて、クライアントの「秘密の窓」と「盲点の窓」を小さくしていき、「開放の窓」を広げていく。
- フィードバック
- 成長を促進するためにの手法。
- 準備にはSBI法が有効。
Situation : どのようなシチュエーションか Behavior : どのような行動か Impact : どのような影響か
- 進め方と技法
1. 事実を伝える 2. 言動や行動に気づかせる 3. 成長を支援 【技法】 メッセージング方法 IメッセージとWeメッセージが推奨。 → ファクトを伝えているだけなので、受け取り方はクライアントの自由になるため。
- 信頼関係とファクトがないとフィードバックは成り立たない。
- ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックがある。
- メンタリング
- 対話をとおして相手の行動を促し、能力開発や成長を支援すること。
- ゴールはメンターが不要になること。
- ギリシャ神話に登場する賢者メントールを語源としている。
- まずはラポール形成から始める。
【ラポール形成のための技法】 アクノレッジメント: 相手の存在や行動、成果を「認める」こと アクティブリスニング: 積極的傾聴
- メンティの考え方は変化するため、適切なアプローチをする必要がある。
【行動変容のステージ】 1. 無関心期 2. 関心期 3. 準備期 4. 実行期 5. 維持期
- メンタルエリアを考慮しながら行動変容のステージを上がれるように働きかける。
【メンタルエリア】 コンフォートゾーン : 居心地の良いエリア ラーニングゾーン : 適度なストレスにより緊張感を持って学びを得ているエリア パニックゾーン : 過度にストレスがかかった場合に陥るエリア
- 認知フレーム
- 「物事を認知する枠組み」のことを指し、認知フレームに自ら気づくことで人は変わることができる。
- メンティがリフレーミング(認知フレームに自ら気づくこと)をするためにマインドトークを言語化してもらう。
【マインドトークとは】 心の声や自動的に思考していること
3. 1on1ミーティングの方法
- マネージャーとクライアントが1対1の対話を定期的に実施するミーティング手法。
- 週1回~月1回に30分ほど。
- 経験学習のサイクルとマネージャーの役割
- クライアントが教育論理学者コルブが提唱したプロセスに倣ってサイクルを回し、マネージャーがサポートをする。
1. 具体的経験 : 新しい経験や状況、元の経験を再解釈する。 2. 省察的観察 : 対話をとおして経験や出来事の意味を模倣的、多角的にふりかえる。(リフレクション) 3. 抽象的概化 : 経験を一般化、概念化、抽象化して、応用可能な知識や対応を自ら作り上げる。 4. 能動実験 : 経験で学んだことからアクションをして、どうなるかを観察する。 【大切なこと】 マネージャーは1on1をとおして 2,3 をサポートする。
- 1on1の進めかた
- 4つのステップに倣って進める。
1. テーマを決める 2. 話を聞く 3. 行動を促す 4. 励ましとサポートをする 【大切なこと】 1on1の主役はクライアントなので、話したいテーマを選定してもらう。 最初にアイスブレイクをして話しやすい空気を作り、今日の話題について認識を一致させる。 話を聞く際はクライアントの話を遮らずにすべてを受け止める。 議事録を取り、共有することで、クライアントが自身の言葉を客観的に見れる。 期日までにアクションが実行されなくても責めず、実行できなかった背景を紐解いていく。 1on1の最後に、ほかに課題がないか確認をする。 1on1の時間をもらえたことに感謝を伝える。
- 4つのステップに倣って進める。
4. 会議の進行方法
- 前提条件
- 会議はマネージャーが仕事を遂行するための手段。
- 会議の種類
- 大別すると3種類ある。
伝達: ゴールは情報を伝達すること。(情報共有、申し送りなど) 創造: ゴールは新しいことを産み出すこと。(ブレインストーミングなど) 決定: ゴールは意思決定すること。(承認会議・経営会議・取締役会など)
- 大別すると3種類ある。
- 定例会議症候群
- 定例会議を中心として業務のサイクルを回してしまうこと。
- 会議の壊し方
- よく目にする7つの会議の壊し方
1. 闇鍋会議 2. 時間意識の欠如 3. 大名行列会議 4. 忘却の会議 5. 議論の空中戦 6. 発言の否定 7. 結論の先送り 【大切なこと】 気づかないうちに会議を壊していることがある。 会議の量も質も自らでコントロールするためにファシリテーションスキルが必要。
- よく目にする7つの会議の壊し方
5. ファシリテーション技法
- ファシリテーションとは
- 「促進」するという意味を持ち、観察力と即興力を駆使して、会議にとどまらず人々の活動を支援・促進すること。
- ファシリテーションデザインとフレームワーク
- 対話の場の質を高めるための技法
【デザイン】 1. 議論にいたある背景や議論の目的 2. 議論終了条件であるゴール 3. アジェンダなど会議のプロセス 4. 会議運営のルール 5. 必要最小限で多様な参加者 【フレームワーク】 OARR(オール) 会議で事前に定義しておく4項目の頭文字を取っている。 Outcome: 会議でどこまで話すのか、会議のゴールを決める。 Agenda: アジェンダを作り、タイムスケジュールを作成して事前配布する。 Role: 参加者の役割を事前に決めておく。 Rule: 決定方法などの会議のルールを決定する。 【大切なこと】 参加者が意見を出しやすい場所や環境を用意することも、ファシリテーターの大事な仕事。 議論の場における、座席配置にも工夫が必要である。 座席配置には、人間心理が深く関係する。(スティンザー効果)
- 対話の場の質を高めるための技法
- 7つのプロセス
- 目的に適したプロセスを用いる。
発散・収束型プロセス: 発散 → 収束 → 発散 → 収束 同異形成型プロセス: 提案 → 審議 → 代替案 → 決定 問題解決型プロセス: 問題設計 → 原因分析 → 方策立案 → 行動決定 目標達成型プロセス: 目的共有 → 条件設定 → 方策立案 → 行動決定 起承転結型プロセス: 起 → 承 → 転 → 結 体験学習型プロセス: 体験 → 学習 → 分析 → 仮設 組織変革型プロセス: 会話 → 対話 → 発散 → 収束
- 目的に適したプロセスを用いる。
- 4つのテクニック
- ホワイトボードを利用する際のテクニック
1. テーマにフォーカスさせる。 2. 意見を明文化する。 3. パーキングエリア(テーマから外れた意見を記載する場所)を作る。 4. 誰がいつまでに何をするか書く。
- ホワイトボードを利用する際のテクニック
- 合意の作り方
- ファシリテーターは会議で結論に到達することに責任を持つ。
- 2つのプロセス
民主制: 参加者全員が納得するまで徹底的に話し合う。 独裁制: 一人だけが決定権を有する。
- 2つのプロセス
- 会議でどのように結論を決定するか、事前に決めておく。
- 比較軸は何か、判断軸は何かをホワイトボードなどに明文化することで決定がスムーズになる。
- ファシリテーターは会議で結論に到達することに責任を持つ。
印象に残った文章
P.35
言語情報と矛盾する非言語情報を発信した場合は、非言語情報が優先されます。
(Mehrabian, 1971, p.42-47)。
非言語情報が相手にどのように伝わっているのか、日々意識する必要があると感じた。
P.42
クライアントから質問を受けた際も、すぐに正答を返してはいけません。
正答を返した時点で、クライアントは考えることを放棄してしまいます。
即座に正答をくれるマネージャーが良いマネージャーとは限らない。
P.76
クライアントのアクションにこそ価値があるので、マネージャーがアクションを持たない
マネージャーになったらクライアントの伴走者でありたい。