概要
- 『エンジニアのためのためのマネジメント入門』の読書メモ。
- Kindle版で読了。文章に色付けができたり、注釈をすぐ読めるので便利。
- エンジニアリングマネージャーを目指している方、マネジメントについて学びたい方に購入して読んでもらいたい。
3章 「チームをエンジニアリングする」
概要
1. 指示をすることによるチームへの影響
2. リーダーシップスタイルの種類と使い方
3. 良いチームになるための考え方
4. チームメンバーの退職コストと備え方
5. チームとマネージャーの価値の考察
1. 指示をすることによるチームへの影響
- 指示の使い分け
- コマンド・アンド・コントロール(命令と統制)
- 細かく指示すること。
- 大きな意思決定を高速に実行する場合や、システム障害などの緊急事態で有効。
- 3つの問題
支持者に依存する。 変化に対応するスピードが遅くなる。 指示以上の成果が出せない。
- ミッション・コマンド(方針の指示)
- 組織の方針を伝えること。
- 不確実な状況においても柔軟な対応が期待できる。
- コマンド・アンド・コントロール(命令と統制)
- マイクロマネジメント
- 監督・干渉を必要以上に行なっている状態のこと。
- 回避するには、委譲したものは過度に干渉しないで、失敗も寛容する覚悟を持つ。
- 移譲について
- 委譲を適切に行うことが、マネージャーの仕事になる。
- 実力と期待をすり合わせて、お互いに納得してから委譲をする。
【明確にすべき3つの要件】 成果: いつまでに何を達成して、どのような成果をあげるのか。 権限: 行使できる権限、および使用できるリソースを明確にする。 評価: 成果を評価する基準と時期、評価によって期待できることは何かを伝える。
- 7つの権限レベルについて(『マネジメント3.0 適応力の高いチームを育むための6つの視点』より引用)
2. リーダーシップスタイルの種類と使い方
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リーダーシップとは
- 統率力や指導力などの人に行動を促す力のこと。
- 先天的な才能ではなく、訓練によって身につけられる荒天的な能力。
- リーダーシップを必要とする機会に挑戦することで少しずつ身につけられる。
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リーダーシップの考え方
- チームリーダーマニフェスト(『エラスティックリーダーシップ:自己組織化チームの育て方』より引用) にチームリーダーとして信じるべきことが示されている。
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チームのフェーズとリーダーシップスタイル
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チームのフェーズ
- タックマンモデル
形成期 Forming 混乱期 Storming 統一期 Norming 機能期 Performing 散会期 Adjourning
- タックマンモデル
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6つのリーダーシップスタイル(Goleman, 2000, p.137-152)
強圧型: リーダーが明確な指示を行う。 危機的状況から早急に脱したいときに有効。 権威主義型: ビジョンを描いて、周囲を動かすスタイル。 チームが目標を失った時に効果的。 親和型: 周囲と同じ目線に立ち、信頼関係を構築するスタイル。 チームに着任した時や意思疎通を改善したいとき、崩れた信頼関係を立て直すケースで有効。 民主主義型: チームの意思決定に、チームメンバーの意見を反映させるスタイル。 調査や検証が必要なものに効果的。 先導型: 自ら高いレベルの手本を示すことで、チームに同様の成果を期待するスタイル。 期日までに仕事を終わらせるのに適している。 利用シーンを慎重に選ばないと、チームの成長は止まってしまう。 コーチ型: リーダーがコーチの役割を担うスタイル。 コーチを求めていないチームメンバーや、リーダーのコーチングスキルが不足している場合には効果が低い。
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チームのフェーズとリーダーシップスタイル
- チームのフェーズ(タックマンモデル)に合わせたリーダシップを併用する。
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サーバント・リーダーとは
- 奉仕するリーダーのこと。
- 導くことと奉仕することを両立させる。
- サーバント・リーダーとして振る舞うための10の属性。
1. 傾聴 (Listening) 2. 共感 (Empathy) 3. 癒し (Healing) 4. 気づき (Awareness) 5. 説得 (Persuasion) 6. 概念化 (Conceptualization) 7. 先見力、予見力 (Foresight) 8. 執事役 (Stewardship) 9. 人々の成長に関わる (Commitment to the Growth of people) 10. コミュニティづくり (Building community)
「スピアーズによるサーバント・リーダーの属性 | NPO法人 日本サーバント・リーダーシップ協会」 (日本サーバントリーダーシップ協会)
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フォロワーシップ
- フォロワーシップとは
- フォロワー(リーダーシップを発揮する人に対して、後に続き主体性を持って行動する人)がリーダーと共に考えて行動したり、フィードバックを行うスキル。
- マネージャーのフォロワーシップが発揮される2つのシーン
チームへのフォロワーシップ 上司へのフォロワーシップ
- フォロワーシップとは
3. 良いチームになるための考え方
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良いチームとは
- 「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」が重要 (Google社の研究)
- 5つの因子がチームに影響している。
1. 心理的安全性 チームメンバーがリスクを取ることを安全だと感じ、お互いに対して弱い部分をもさらけ出すことができる。 2. 相互信頼 チームメンバー同士が、仕事を高いクオリティで時間内に仕上げてくれると感じている。 3. 構造と明確さ チームの役割、計画、目標が明確になっている。 4. 仕事の意味 チームメンバーは仕事が自分にとって意味があると感じている。 5. インパクト チームメンバーは自分の仕事について、意義があり、良い変化を生むものだと思っている。
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5つの因子について
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心理的安全性とは
- 「対人リスクを取っても安全である」という共通の信念をチームが持っている状態。
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心理的安全性は上がったり、下がったりする。
このように見られたくない とりがちな行動 無知 質問しない 無能 弱みや失敗を認めない 邪魔 アイデアを提案しない 否定的 現場について評論しない P.116 表3.3.1 心理的安全性を脅かす行動
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相互信頼
- HRTの原則
謙虚 (Humility) 尊敬 (Respect) 信頼 (Trust) 【大切なこと】 相互信頼するチームはすぐに作ることはできないため、HRTの文化を長い時間をかけて醸成していく必要がある。
- HRTの原則
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構造と明確さ
- チームルールを必要とする理由
- コミュニケーションを簡略化できる。
- 自己組織化を促進する。
- 意思決定のルールを必ず決めておくこと。
- チームルールを必要とする理由
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仕事の意味
- 仕事の意味は、仕事に対する目的意識であり、一人ひとりの価値観になる。
- ブルームの期待理論
期待 道具性 誘意性 【モチベーションの算出式】 F = E × I × V F:モチベーション, E:期待, I:道具性, V:誘意性
- 仕事の意味を感じることは、モチベーションマネジメントにおいて重要な要素になる。
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人間らしい課題
- 5つの機能不全(Lencioni, 2003)
1. 信頼の欠如 2. 衝突への恐怖 3. 責任感の欠如 4. 説明責任の回避 5. 結果への無関心
- 5つの機能不全(Lencioni, 2003)
4. チームメンバーの退職コストと備え方
- 別れと向き合う
- マネージャーも含めた組織全体で向き合うべき課題。
- 退職コストを知る
- 採用コストと育成コストから算出可能。
- 新メンバーが入ることで、チームの生産性が一時的に下がることは避けられない。
- バス係数を高める
- バス係数とは
- チームの可用性を表した係数で、高いほど良い。
- バス係数を高めるためには、1人で仕事をさせないようにする、情報をドキュメント化することが挙げられる。
- バス係数にはマネージャー自身も数えられる。
- マネージャーがいなくても成果が上がるチームを目指す。
- バス係数とは
5. チームとマネージャーの価値の考察
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良いチームが価値を生むとは限らない
- なぜか
- 顧客価値の視点から見るとチームはバリューチェーンの一部でしかないため。
- 1つのチームが良いチームになったとしても、別のチームによってパフォーマンスを制限されることがあるため(制約理論)
- マネージャーの役割とは
投入した資源の総和よりも大きなものを生み出す生産体を創造することです(Drucker, 2001, p.128)
- 組織を部分最適化するのではなく、全体最適化する視点を持たなければならない。
- なぜか
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マネージャーは価値を生むのか
- Google社の実験:脱組織化(2001年)
- すべてのマネージャーを廃止して管理職のいない組織にした。
- 研究結果から導き出した、優れているマネージャーを特徴付ける10の行動様式
1. 良いコーチである 2. チームに任せ、細かく管理しない 3. チームの仕事面の成果だけではなく、健康を含めた充足に配慮し、インクルーシブ(包括的)な環境を作る 4. 生産性が高く結果を重視する 5. 効果的なコミュニケーションをする - 人の話をよく聞き、情報を共有する 6. キャリア開発についてサポートし、パフォーマンスについて話し合う 7. 明確なビジョンや戦略を持ち、チームと共有する 8. チームにアドバイスできる専門知識がある 9. 部門の域を超えてコラボレーションを行う 10. 決断力がある
- コンピテンシーとは
- 高い業績や成果につながる行動様式や特性のこと。
「ある職務または状況に対し、基準に照らして効果的、あるいは卓越した業績を生む原因として関わっている個人の根源的特性」(Spencer, 2011, p.11)
- Google社の実験:脱組織化(2001年)
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マネージャーも目標もいらないチーム
- 自己組織化
- ランダムから秩序が自ら組み上がっていく現象(ハキリアリの集団の例え)
- マネージャーは適切に権限を委譲して、チームの自己組織化をサポートしていく。
- 目標は不要になる
- 組織によってはありえる。
- 目標設定をしないことで、生産性が向上したという研究(DeMarco & Lister, 2013, p.31)
- 自己組織化
印象に残った文章
P.94
マイクロマネジメントの恐ろしさは、自分自身もマイクロマネジメントをしていることに気づかないことです。
P.106
積極的に仕事を任せて、仕事が失敗しそうになっても、(長い目でチームメンバーが成長するなら)あえてそのまま失敗させます。
P.118
マネージャーは、チームメンバーに仕事の意味を認識させなければなりません。
P.127
良いチームにおいて、マネージャーはチームの外にいなければなりません。