概要
- 『エンジニアのためのためのマネジメント入門』の読書メモ。
- Kindle版で読了。文章に色付けができたり、注釈をすぐ読めるので便利。
- エンジニアリングマネージャーを目指している方、マネジメントについて学びたい方に購入して読んでもらいたい。
6章 「人材の成功にコミットする」
概要
1. 人材採用における全体プロセス
2. 採用面接の手法
3. 人事制度の全体像
4. 評価制度と評価プロセス
5. 評価フィードバックの方法
1. 人材採用における全体プロセス
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人材採用の目的
- 戦略における人員配置を実現すること。
- 人材採用自体は手段であり目的ではない。
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応募者プロセス
1. 認知 2. 応募 3. 選考 4. 内定 5. 入社 【大切なこと】 求職者が企業の存在を認知することから、応募者プロセスが始まっている。
- 環境分析
- 応募者が、どのような人物でどのような行動をしているか知ること。
- 応募者のペルソナを作ることで、共通認識を形成して考察できる。
- カスタマージャーニー
- 環境分析
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人材採用プロセス
1. マーケティング 2. インサイドセールス 3. フィールドセールス 4. カスタマーサクセス 【大切なこと】 人材採用は、入社したら終わりではない。
- 人材採用プロセスにおける数値
見込み応募者数 = 母集団数 × 獲得率 応募者数 = 見込み応募者数 × 応募率 入社数 = 応募者数 × 選考通過率 × 内定承諾率 リファラル数・勤続年数 = 入社数 × 定着率
- 人材採用プロセスにおける数値
2. 採用面接の手法
- 行動面接
- 応募者の「具体的な行動とその結果」について確認する面接手法。
- 応募者が実際に起こした行動だけを信じて分析する。
- 応募者の話すストーリーがより具体的になるように質問をする。
- 応募者のストーリーに対して誘導的な質問や、要約をして結論を出さない。
- 構造化面接
- 応募者全員に対して、同じ質問をして同じ基準で評価する面接手法。
- 評価項目を明確にして、どのような行動を評価するべきかを定義する。
- 構造化面接の効果
- 面接内容が、面接担当の面接スキルに左右されなくなる。 - 面接結果を評点下しやすく、面接担当による評価のブレ幅を小さくする。 - 面接の準備から評価に費やす時間を削減する。
- 一次面接だけ構造化するという使い方もできる。
3. 人事制度の全体像
- ジャック・フィリップスの5段階評価法
レベル1 Reaction レベル2 Learning レベル3 Behavior レベル4 Results レベル5 ROI(Return On Investment)
- 高いレベルの測定は難しくなる。
- 人材育成の効果を追求するのではなく、どのような人材になってほしいのかを指し示す。
4. 評価制度と評価プロセス
- 人事評価とは
- マネージャーが経営者から委譲される経営権の一つ。
- 人事制度の三本柱
評価制度 行動指標にもとづいて評価する仕組み 等級制度 社員を序列化する仕組み 報酬制度 給与や賞与などの報酬を決める仕組み
- 評価者は直属の上司であるマネージャーが適任。
- 人を評価することに対する覚悟を持つ。
- 評価のものさし
- 3つの評価要素群
成果評価 能力評価 情意評価
- 評価基準を明確にすることで、企業にとって何が望ましい行動かを示すことになる。
- 3つの評価要素群
- 評価プロセスの全体像
自己評価 → 自己評価面談 → 一次評価 → 二次評価 → 最終評価 → 評価フィードバック → 評価フィードバック面談
- 一次評価者
- 根拠が曖昧なものや理解ができない自己評価に対して、積極的に質問をする。
- 事実にもとづいて評価をする。
- 二次評価者
- 評価間違いの修正や甘辛評価の調整を行う。
- マネージャーの上司や複数チームのマネージャーが担う。
- 一次評価者
- 評価方法
- 目標達成度評価
- 目標管理制度などを用いる。
- 目標を上回ると評価は高くなり、下回ると評価は低くなる。
- 多面評価
- 評価に関する情報を多方面から集める仕組み。
- 同僚など仕事で関わる人たちが多面的に評価をする。
- 目標達成度評価
5. 評価フィードバックの方法
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評価フィードバックとは
- フィードバックに加えて、評価と処遇を通達する。
- 評価フィードバック面談の流れ
1. 評価結果を伝える。 2. 被評価者の反応を確認して傾聴する。 3. 評価の差について説明する。 4. 今後の課題と期待をすり合わせる。
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納得の高い評価のために
- 評価に納得できないとモチベーションが低下して、最悪の場合、退職してしまうこともある。
- 退職理由の2割は評価に対する不満(厚生労働省)
- 評価者自身が最終評価に納得しているかを問う。
- 納得できない場合は、二次評価者に確認して、最終評価に至るロジックを納得するまで確認する。
- 5つの原則
1. 公正な評価 2. 評価基準の明確化 3. 評価基準の理解 4. 評価基準の厳守 5. 評価責任の自覚
「人事評価制の教科書:悩みを抱えるすべての評価者のために」(高原暢恭 . 2008. 労務行政 . p.42)
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評価事実を取り巻くもの
- 評価事実は、被評価者を日常的に観察して集める。
- 日報や1on1など。
- 外的要因にかかわらず、本人が生み出した成果の高低をそのまま評価する。
- 評価事実と成果評価だけでなく、能力評価と情意評価を用いる。
- 評価事実は、被評価者を日常的に観察して集める。
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評価と心理の関係
- 人間の心理は、評価における認識の違いが生まれる要因である。
- 評価者は基本的な知識としての人間の心理を理解しておくべき。
- 認知バイアスとは
- 認知の偏りのこと。
- 認知バイアスの一例
ハロー効果 1つの特徴に引っ張られて、対象を歪めて見てしまう心理。 確証バイアス 自分にとって都合の良い情報だけを集めて、不都合な情報は集めない傾向。 後知恵バイアス 発生した出来事を、事前に予測可能だったと考える傾向。 結果バイアス ある決定の質を評価する際に生じる誤り。 選択支持バイアス 自ら選んだ選択が、別の選択よりも正しいと考える傾向。 フレーミング効果 同じ意味を持つ情報に対して、焦点の当て方によって受ける印象が変わる。
- 評価エラーとは
- 評価者の主観や印象によって、評価結果に誤差が生まれてくること。
印象評価 被評価者に対する漠然とした印象を、評価に影響させること。 中心化傾向 一律的に、標準値や中央値などの普通評価をしてしまう心理。 寛大化/厳格化傾向 極端に偏った評価をつけてしまう心理。 論理的誤謬 独立している評価項目を同一評価、あるいは類似評価してしまう事象。 対比誤差 評価者自身を基準として、評価してしまう事象。 期末効果 期末に近い事象を評価に強く反映してしまう心理。 逆算化傾向 評価結果としての処遇を念頭に置き、逆算してつじつまを合わせてしまう事象。
- 評価者の主観や印象によって、評価結果に誤差が生まれてくること。
7章 「技術とわたしのマネジメント」
概要
1. 技術戦略とロードマップの作り方
2. 技術選定の考え方
3. セルフマネジメントの方法
4. 時間の管理方法
5. マネージャーとして成長するための考え方
1. 技術戦略とロードマップの作り方
- 技術戦略とは
- 企業戦略に含まれるもの且つ、機能戦略の一部。
- 自社のコア技術を見いだして、内部環境と外部環境を分析し、技術戦略を作る。
コア技術 競争優位性とプロダクト価値が高い。 ベース技術 競争優位性は低いが、プロダクト価値が高い。 リード技術 競争優位性は高いが、プロダクト価値が低い。 一般技術 競争優位性とプロファクト価値が低い。
- テクノロジーロードマップとは
- 戦略的かつ長期的な計画を明示化して、そのプロセスをサポートするソリューション。
- 作成プロセス
1. マーケットを分析。 2. プロダクト使用を抽出。 3. 技術を抽出。 4. ロードマップを作成。
- トップダウンとボトムアップの両方から作る必要がある。
- テクノロジーロードマップの価値
- マーケット・プロダクトなどの組織と協働して、トップとボトムを行き来しながら作成することで生まれる共通認識や知識。
2. 技術選定の考え方
- 技術選定
- 「解決したい課題は何か」を大事にする。
- 意思決定のマトリクスを用いることで比較軸と優先度を可視化できる。
3. セルフマネジメントの方法
- セルフマネジメントとは
- 自分の行動や時間、モチベーション、目標などをコントロールすること。
- 鍛錬することで使いこなせるようになる。
- 瞬間のマネジメント(ハンター・稲墻, 2020, p.38)
- セルフマネジメントの最小単位。
- 自分の身体に現れる感覚、感情、思考していることを事実として認識すること。
例) 相手の意見に対して反射的に発言するのではなく、一呼吸置いて自分が何を選択したいのかを認識する。
4. 時間の管理方法
- マネージャーは、細切れになった時間の合間で個人作業をすることになる。
- 優先順位の定義
- やらないことを定義する。
- 日常の業務を時間のマトリクスに当てはめてみる。
1. 緊急かつ重要 2. 緊急ではないが重要 3. 緊急だが重要ではない 4. 緊急でも重要でもない
- 課題を委任する
- 課題の特性や実務者の状況に合わせた判断と委任が必要。
- フローを作る
- 時間を忘れてしまうほど仕事に熱中している状態。
- 集中をコントロールできると生産性は高くなる。
- モンキーマインドを避ける。
5. マネージャーとして成長するための考え方
- コンフォートゾーンで、安心安全にマネジメントをしない。
- 失敗から学ぶ。
- エンジニアリングマネージャーを楽しむ
- 自分なりのマネジメントスタイルを持つ。
- マネジメントの探求を続ける。
印象に残った文章
P.222
カスタマーサクセスのような役割の人が支援することで、社員としての成功だけではなく勤続やリファラル採用にもつながります。
P.225
時には、組織に適合しない人材を採用してしまうこともあるでしょう。その場合、退職コストもさることながら、組織の文化が破壊され、組織の成果が下がることも起きかねません。
P.235
良い評価でも、評価フィードバックの準備を怠ってはいけません。
なぜなら、良い評価結果に対して説明がなければ、「なぜこの評価結果なのか」を理解できないため、成長につながりません。
P.253
新しい技術の選択は、実験でもあり未来への投資ともいえます。
P.254
マネージャーは、他人のマネジメントをする前に、セルフマネジメントをできるほうが望ましいです。
P.261
技術を学ばないエンジニアは尊敬できませんが、マネジメントを学ばないマネージャーも尊敬できません。