多様体論の基本的な定理ですが、証明なしで使っている本が多いので、証明を書くことにしました。
$M$を$m$次元可微分多様体、$N$を$n$次元可微分多様体とする。$f:M \to N$を$C^{\infty}$写像とする。
$f:M \to N$が**沈めこみ(submersion)**であるとは、任意の$x \in M$に対して$f$の微分写像$df_x:T_xM \to T_{f(x)}N$が全射であるときを言う。
####定理
$M$を$m$次元可微分多様体、$N$を$n$次元可微分多様体とする。また$m \ge n$とする。
$f:M \to N$を$C^{\infty}$写像とする。$x_0 \in M$をとり、$df_{x_0}$は全射と仮定する。
このとき、ある$x_0$の局所座標近傍$(U,\varphi)$と$f(x_0)$の局所座標近傍$(V,\psi)$で、任意の$(z_1,\cdots,z_m) \in \varphi(U)$に対して
$$
\psi \circ f \circ \varphi^{-1}(z_1,\cdots,z_m)=(z_1,\cdots,z_n)
$$
が成立するようなものが取れる。
証明)
$(W,\xi)$を$x_0$の局所座標近傍、$(V,\psi)$を$f(x_0)$の局所座標近傍とする。また
$\xi=(x_1,\cdots,x_m),\psi=(y_1,\cdots,y_n)$と書くことにし、$\xi(x_0)=0,\psi(f(x_0))=0$と仮定してよい。さらに
$$
\psi \circ f \circ \xi^{-1}(x_1,\cdots,x_m)=(f_1(x_1,\cdots,x_m),\cdots,f_n(x_1,\cdots,x_m))
$$
と書くことにする。ここで新しい写像$F:\xi(W) \to \mathbb{R}^m$を
$$
F(x_1,\cdots,x_m)=(f_1(x_1,\cdots,x_m),\cdots,f_n(x_1,\cdots,x_m),x_{n+1},\cdots,x_m)
$$
で定義する。$df_{x_0}$は全射であるから、$F$の原点におけるヤコビ行列は正則になる。したがって逆写像定理より、ある$x_0$の開近傍$W_0 \subset \xi(W)$が存在して
F|_{W_0}:W_0 \to F(W_0)
は微分同相写像になる。そこで$U \equiv \xi^{-1}(W_0) \subset W$と置き、$\varphi:U \to \mathbb{R}^m$を
\varphi=F \circ \xi |_{U} :U \to \mathbb{R}^m
と定義すると$(U,\varphi)$は$x$の局所座標近傍になる。$(U,\varphi)$と$(V,\psi)$が所望の座標近傍になる。
実際、$(z_1,\cdots,z_m) \in \varphi(U\cap f^{-1}(V))=F(\xi(U\cap f^{-1}(V)))$をとると、
\begin{gather}
(z_1,\cdots,z_m)=(f_1(x_1,\cdots,x_m),\cdots,f_n(x_1,\cdots,x_m),x_{n+1},\cdots,x_m), \\(F|_{\xi(U)})^{-1}(z_1,\cdots,z_m)=(x_1,\cdots,x_m)
\end{gather}
を満たす$(x_1,\cdots,x_m) \in \xi(U\cap f^{-1}(V)) \subset W_0$が一意的に取れる。したがって
\begin{eqnarray}
\psi \circ f \circ \varphi^{-1}(z_1,\cdots,z_m)&=&\psi \circ f \circ \xi^{-1} \circ (F|_{\xi(U)})^{-1}(z_1,\cdots,z_m) \\
&=&\psi \circ f \circ \xi^{-1}(x_1,\cdots,x_m) \\
&=&(f_1(x_1,\cdots,x_m),\cdots,f_n(x_1,\cdots,x_m)) \\
&=&(z_1,\cdots,z_n)
\end{eqnarray}
となる。(証明終わり)
要するに、$M$の局所座標をうまく取り換えているだけですね。この証明から$f:M \to N$が沈めこみならば、$M$の各点で上の定理のような局所座標がとれます。
はめこみについても似たようなことが言えます。そのうち書くかもしれません。