正しく相手に伝えることの大切さ
コンピュータはプログラムされた通りにしか動きません。
そのため、正確かつ明確な指示を与える必要があります。この原則は人とのコミュニケーションでも同様で、正確な情報や意図を伝えないと誤解が生じてしまいます。
(いわゆる阿吽の呼吸も素晴らしいですが...)
話し手は「伝えたつもり」でも、相手が誤解することはよくあります。それが原因で、以下のようなリスクが発生することもあります。
誤解によるリスク
- 誤解を正す手間
- 再説明や確認作業が必要になり、余計な時間と労力を要します
- 作業の遅延
- 間違った方向に進んでしまい、修正や手戻り作業が発生します
- 信頼の損失
- 情報不足や誤解が繰り返されると、相手からの信頼を失う可能性があります
私自身、話すこと、伝えることが得意ではありません。
しかし、リスクとして挙げた状況は更に嫌ですね...
本記事では、これまでの経験を整理し、伝える力を向上させるために気をつけていることを記載しています。少しでも参考になれば幸いです。
伝える前に抑えておくポイント
大前提として大事なのは、相手の目線に立つことです。
そして相手の目線に立ち簡潔に伝えることも重要ですが、言葉が足りずにより誤解を招くケースもよくあります。
私は何かを伝える上で、前提として次のポイントを押さえています。
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伝える相手(WHO)
- 専門家と初心者では、選ぶ言葉や説明の深さが異なります
例:プログラミングの話題なら、初心者には「わかりやすい比喩」を交えると効果的など
- どのような伝え方をすると耳に入るのかも相手により異なります
- そのために、相手を知ることは重要です
- 専門家と初心者では、選ぶ言葉や説明の深さが異なります
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伝える方法(HOW)
- 口頭、書面、または誰かを通して伝えるなど、方法次第でも相手の受け取り方が変わります
- 状況に応じた文章を作ることも重要です
- また、これは難しいですが誰が伝えるかも重要なこともあります
伝える時のポイント
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簡潔さ
- 必要な情報だけを伝え、余分な情報は控えることで、相手が理解しやすくなります
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一貫性
- 論理の飛躍や情報の欠落、矛盾があると、相手に混乱や誤解を招きます。流れを確認し、一貫性を保つことが重要です
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準備
- 簡潔さや一貫性を保つためには、自分の考えを事前にしっかりと整理をしておくと、明確で説得力のある説明ができます
実践方法や気をつけること
◻︎ 箇条書きに起こす
長い文章は読むのが負担になります。一行の文章は直感的に理解でき、二行、三行と増えると読むハードルは上がります。
最初は文章で書き出し、不要な情報を削り、グループ分けしてから箇条書きにすることなど効果的です。
箇条書きで整理することで、頭の中もスッキリし、一貫性の欠如などに気づきやすくなります。
◻︎ 具体性
数字や具体例を入れることで、相手が内容をイメージしやすくなります。
✖︎ 悪い例:「技術力を伸ばしたいです」
これでは相手はどのレベルを目指しているか分からず、評価はできません。自分の中でイメージがあるかも知れませんが、相手には伝わりません。
⚪︎ 良い例:「2年かけて◻︎◻︎さんと同じレベルまで技術力を伸ばしたいです」
自分の中でイメージがあるのであればそれを言語化して伝えると効果的です。
どこまで言語化するかは難しいですが、言葉の説得力は増します。具体性を持たせ、言語化することで自分の中でも整理ができます。
◻︎ 必要以上に省略しない
相手への依頼の内容を省略してしまうと、こちらの意図が正しく伝わらないこともあります。
✖︎ 悪い例:「〇〇の確認をお願いします。」
場合によっては相手はそのままの意味で確認だけで行動が終わります。
⚪︎ 良い例:「〇〇のレビューと問題がなければ押印をお願いいたします。」
もし、今回の悪い例の言葉の意図に「レビュー」と「押印」が含まれているのであれば、それもきちんと伝えておくと、認識の齟齬が発生し辛くなります。
◻︎ 内容の明確化(5W1H)
「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(だれが)」「What(なにを)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」
5W1H(主語、内容、期日)を明確にしないと、相手が期待通りに動いてくれないこともあります。
✖︎ 悪い例:「早めに確認をお願いします。」
「早め」の物差しは人によって異なることがあります。物差しの違いによる「まだ終わってないの?!」といったケースを防げます。
さらに、複数人の会議の場合ではどうでしょうか。誰が確認するのか分からず、誰も確認していなかったといったケースもあり得ますね。
⚪︎ 良い例:「◯◯さん、この書類を明日までに確認して、必要があれば修正してください。」
期日や対応内容を具体的に伝えることで、期待通りに動かない事態が減ります。
相手(聞き手)も曖昧な部分があれば「いつまでに対応したらよろしいでしょうか?」など具体的に聞くことが大事です。
(話し手側の伝え方が悪いのに、聞き手側の立場で評価が下がるといった経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。)
◻︎ 意図を伝える
相手に意図を伝えることも非常に重要です。
相手が単に動いてくれるだけではなく、目的意識や意図を汲み取ってもらうことでより良い結果を期待できますし、良い関係を築くことができます。
✖︎ 悪い例:「〇〇の勉強をしておいてください。」
この情報だけを相手に伝えた場合、相手は目的が分からず、モチベーションが低くなる可能性はあります。
万が一、状況が変わりその勉強をする必要性が失われた時には「何のためにやってたんだ?」と不信感を生み出します。
⚪︎ 良い例:「次のプロジェクトをAさんに任せようと思って、〇〇の勉強をしておくとスムーズで動きやすくなると思うから勉強をしておいてください」
このようにどのような背景でお願いをしているかを伝えます。
相手は目的を理解し、モチベーションを保つことや他にも準備ができることを見つけるかもしれません。
状況が変わった場合でもその事情をきちんと伝えることで不信感を抑えることができます。
◻︎ 事前のアウトプット
大切な話をする際は、事前のシミュレーション(誰かに手伝ってもらうなど)をしましょう。
実際に話してみると、自分の話の不足や一貫性の弱い部分が見えてきます。
最近では、ChatGPTに伝える内容について相談することで、話の矛盾の指摘や、第三者の視点による新しい気づきを得られることもあります。
(おまけ)私が実践した方法
「というのも」
これは過去に話している内容を理解しやすいと思った方の口癖のようなものでした。
相手の反応を伺いながら、考えに至った経緯や根拠などを説明していきます。
実用例:
A「週末までにこの資料を仕上げて欲しいです」
B(なるほど...)
A「というのも、月曜の会議でクライアントに提案する予定で」
B(hmhm...)
A「というのも、前の打ち合わせで〇〇という話があって」
B(なるほど!)
A「そのためには、〇〇〇〇・・・・・」
B「わかりました!」
明確に区切りがあるので、相手は内容を整理しやすいですし、こちら(話し手)は段階的に聞き手がこの話を理解できているか、反応を見ながら進めやすいのがポイントです。
また、「というのも」と文脈をつなぐことで頭の中でも一貫性を整理しながら伝えることができます。
何を話すかを最初に伝える(どこに着地したいか)
これは、聞き手側でよく感じたことで、相手の話をしている目的が分からないと(これはなんの時間なんだろう...)
(何をして欲しいんだろう...)
とその憶測に頭を使ってしまいます。
A: 「進捗報告と課題の相談をさせてください。」←これが大事
B: (課題があって困ってるのね)
A: 「現状プロジェクトは予定通り進んでいるのですが、いくつかの課題が見つかってきました。」
B: (なるほど、予定通りには進んでる)
A: 「というのも、具体的には〇〇で問題が発生していて解決の目処が立っていません。」
B: (〇〇か、もしかしたら・・・)
A: 「そのために、〇〇についての詳細な共有のお時間とご意見をいただければと思っています。」
B: 「わかりました」
相談なのか、連絡なのかなど話の目的を事前に伝えることで相手はどのようなスタンスで話を聞けば良いか理解できます。
これにより話の内容に集中でき、コミュニケーションも円滑に進みます。
終わりに
私もまだ言語化に詰まることもあります。正しく伝えられてないと感じることもあります。
正しく伝えるということは相手との信頼関係を気づく上で非常に重要なことだと思います。
苦手だからこそ、時間をかけて内容を整理しています。
コミュニケーションは双方の寄り添いがあってこそでもありますので、難しいポイントではありますが、エンジニアの皆さんが開発に集中できるように少しでもお役に立てたら幸いです!