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株式会社NucoAdvent Calendar 2024

Day 9

新人エンジニア指導完全ガイドブック【OJT編】

Last updated at Posted at 2024-12-08

この記事はNuco Advent Calendar 2024の9日目の記事です。

はじめに

2024年も年の瀬、年が明けて春になれば、多くの新卒エンジニア達が皆さんの職場にやってくることでしょう。来年から新たな新人指導を任される、という人もいるかもしれませんね。
そうでなくても、今まさに新人指導の真っ最中、という人は多いと思います。

エンジニア指導って難しいですよね。前提知識も理解度も人によって全然違いますし、指導のノウハウが社内で体系立てられている、といったケースも少ないと思います。
特にOJTの現場では、ただでさえ自分の仕事も忙しいのに、指導の仕方についてまで気を回せない、というケースも多いのではないでしょうか。

私自身も数年間エンジニアの指導をしていますが、なかなかどうして、うまくいったりいかなかったりの毎日です。その中でも、「これは言語化して残しておきたいな」と思う考え方や心構えについて、今回はガッツリ記事にしてまとめました。

共感できる部分、そうでない部分多々あるかと思いますが、ぜひ目を通していただけると嬉しいです。

弊社Nucoでは、他にも様々なお役立ち記事を公開しています。よかったら、Organizationのページも覗いてみてください。
また、Nucoでは一緒に働く仲間も募集しています!興味をお持ちいただける方は、こちらまで。

心構えについて

新人指導は、自分が与えてもらったものを返す仕事

あなたが新人だったとき、周囲からどんなサポートを受けましたか?

懇切丁寧にプログラミングを教わった人もいれば、そこまで人に頼らず自分で一人前になった、という人もいるかもしれません。

丁寧に指導を受けてきた人であれば、この節のタイトルはとてもしっくり来るものでしょう。

与えられる立場から、後輩へ与える立場になることは、チームの一員として当然のことだと考えられているのではないでしょうか。「まだまだ自分は教えられるような立場では...」と思っている人もいるかもしれませんが、自信をもってください。後輩から見たあなたは、かつてあなたが憧れた先輩達と同じように見えているはずです。

一方で、新人時代からほとんど自力でスキルを身に着けてきた、という人にとっては、もしかすると新人指導は心理的に負担に感じるかもしれません。「なぜ自分が人の面倒を見なければいけないのか。」といった考えがよぎることもあるのではないでしょうか。

しかし、ちょっと考えてみてください。あなたが今、プロジェクト内で活躍できる場があるのはなぜでしょうか。「自分のスキルとキャリアで勝ち取った」のかもしれません。でも新人時代、最初のプロジェクトはどうでしたか?実力未知数のあなたを迎え入れ、活躍の機会を提供するというのは、チームにとって大きな挑戦、ともすると賭けだったかもしれません。

もちろん、その中で結果を出してきたのは紛れもなくあなたです。ただ、機会をくれたチーム、そしてその意思決定をしてくれた人たちがいたことは決して忘れてはいけません。後輩指導は、あなたがもらったものとは少し違う形かもしれませんが、やはり、与えてもらったものを返す仕事だということを忘れてはいけないと思います。

自分の指導が組織の中で持つ意味を考え、納得感をもって行動する。

「自分ができたんだからできるはず」だと思わない

指導をしていると、「なんでこんな簡単なことに時間がかかるんだろう」「自分はすぐできたのに」と思ってしまうタイミングがどうしても出てくると思います。

「自分は簡単にできた」と思うかもしれませんが、そんなときは胸に手を当てて考えましょう。

  • 自分と相手は違う生き物。前提知識や考え方が違うので、自分と同じように解決することは当然できない
  • 別の分野で立場が逆だったならば、むしろ後輩にそう思われてしまうこともあるかもしれない
  • そもそも過去の自分ってそんなに簡単にできただろうか?(過去は美化するもの)

冷静かつ謙虚であり続けることは、指導者にとって大事な心構えです。

今の自分目線で考えず、新人の目線で考える。

指導者と新人は立場が違うだけ。対等な社会人として尊重する

立場が違うと、どうしても相手を下に見るというか、上司・同僚に対するそれとは明らかに違う接し方をしてしまいがちです。

当然ですが、会社やチームの中における役割が違うだけで、それらの枠組みを取っ払ってしまえば、自分と相手はただの対等な一個人同士です。あなたに、部下後輩の思想信条や、身体を害する権利は一切ありません。

個人として尊重されないと、人の気持ちは荒んでしまいます。大切にしてもらえなくて自己否定的になったり、活躍の機会を与えられずに不貞腐れたりします。

指導をする側、される側という関係の大前提として、お互いがかけがえの無い対等な人間、社会人であることを意識しましょう。

対等な人間として、新人の人格を尊重する。

指導者という立場に甘えず、常に新人の規範となる

誰だって、尊敬できる人から指導をしてもらいたいです。「この人みたいにはなりたくないな」と思うような人からのアドバイスは、聞き手の心に響かないですよね。指導において、「尊敬」という感情は、一般に思われている以上に大きな意味を持っています。

そして重要なのが、指導者だからといって、無条件に尊敬されるわけではない、ということです。

  • 間違った知識を押し付け続けていないですか?
  • 自信の無い話し方になっていませんか?
  • 身だしなみは整えていますか?
  • 自分の都合ばかりを優先していませんか?
  • 新人から頼れる存在になれていますか?

全部完璧に、は難しいかもしれませんが、常に自分自身が前向きに学び、活躍する姿勢を持ち続けなければ、新人の心は離れ、成長スピードは落ちていってしまうでしょう。

「ついていきたい」と思える人材であり続ける。

自分の作業を中断することを厭わない

コーディングペースが乗りに乗っているとき、納期間近で猶予がドンドンなくなっているとき、とかくエンジニアの仕事は自分の作業に没頭することが多くなりがちです。

そんな時に新人から質問されると、どうしても「後にして」と言いたくなりがちです。

もちろん顧客対応や緊急事態ではそれもやむなしですが、そうでないときにまで、質問対応を後回しにしてしまっていませんか?

勇気を持って、自分の作業の手を止めることが重要です。

対応を後回しにされると、新人は作業が止まるだけでなく、あなたに対する質問しづらさ・声のかけにくさを感じてしまいます。それだけでなく、「自分のタスクは優先度が低い、どうでも良い仕事なんだ」と感じ、自己肯定感を損なっていってしまうかもしれません。

「『なんでも相談してね』と言っているくせに、いざ話しかけても相手をしてくれない」といった不満も募らせてしまうかもしれません。

自分を後回しにする、という判断をできることが、指導者には必要です。

相談しやすい姿勢を見せ続ける。

自分が徹底的に教え導き一人前にしてやる、なんて自惚れない

成長のカギは、あくまでも本人の気持ちにあることを忘れてはいけません。

あなたがどんなに優れたエンジニアでも、あらゆる場面で自分のやり方を押し付けるようなことはしてはいけません。

「言われたとおりのやり方でやる」というのは安心する反面、自分で考えることの放棄に繋がります。

自分のやり方を考えさせ、実践させてこそ、新人は自身のモチベーションを高めることができます。高いモチベーションは、成長に何よりも不可欠です。

「指導する」というのは、「新人が自分で育つことを助ける」ことなのだと認識しましょう。

自分のやり方を押し付けるのではなく、新人の成長を後押しする。

でも、一人前になるまで伴走し続ける

すべてを事細かに指導されなくとも、常に相談相手として寄り添ってもらえる存在というのはとても心強いものです。

「一人前になるまで、一緒に頑張ろう」という言葉は、きっと新人の支えになると思います。

新人がモチベーション高く、前向きに仕事に向き合えるように、常に見方であり続けるようにしましょう。

新人がひたむきに走れるように、心理的安全性を担保する。

過ちを指摘されたら真摯に受け止める

周囲のメンバーや新人からの意見や指摘を、「自分の学び」として受け止められていますか?自分の過ちを指摘されたときのあなたの姿も、新人は見ています。

「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」という孔子の言葉はあまりにも有名です。

過ちを認められない大人はカッコ悪いものです。
カッコ悪い人は、当然指導者から尊敬されるはずはありません。指導者にとっては、それが一番の過ちと言えるでしょう。

過ちを認め改める姿を見せることも、大事な指導。

仕事の進め方について

目標を提示し続ける

新人にとって、「何かができるようになった」と自分で思えることは強い自己肯定感と、さらなる成長へのエネルギーに繋がります。

「次は〇〇を達成しよう。そのために△△を習得しよう。」という感じで、常に達成感を得られる目標を提示し、達成できた時にはそれをしっかり評価することで、新人も高いモチベーションを持ち続けることができます。

目指すべき目標を提示し、達成させ、評価する。

今のタスクのゴールを明確にする。

意図的にせよそうでないにせよ、指導者から新人に出す指示は、新人にとっては明確にゴールをイメージできないことが多いです。この根本の原因の一つに、両者の解像度の違いがあります。

「このクラスの単体テストを書いてほしい」という指示一つとっても、

新人:「一つ一つのメソッドについて、ひとまず通るテストをいくつか書けば良いのかな。」

指導者:「正常系・準正常系・異常系まで、網羅的にテストを実装してほしい。境界値も意識してほしい。」

これくらい解像度が違うと、当然ゴールのイメージは異なってしまいます。

もちろん、やや抽象的な指示を与え、それを具体的に考えさせることは重要な指導です。ただ、そうした指示をした場合、ちゃんと具体的なゴールに進んでいけるように工夫をしなければいけません。

例えば、作業途中で再度アウトプットイメージをこまめに確認したり、指示段階で「このイメージで合ってますか」と、本人にゴールを言語化させたり、様々な手段があります。新人の成長段階などを見極めながら取り入れましょう。

ゴールのイメージは具体的に伝える。また、両者のイメージが近づく工夫をする。

2割できた段階で簡易レビューをする

「できました!」と言われて見てみると、「いやこれ全然想定と違う...」となってしまうような結果を目の当たりにすること、多いのではないでしょうか。

前項に関連して、やはりこまめな方向性の確認はやった方が良いでしょう。

新人の中には、「こんなほとんどできてない状態を見てもらっても...」と、早い段階で指導者に見てもらうことを躊躇する人もいるかもしれませんが、その場合はある程度ルール化してしまった方が良いです。

本人としても、「せっかく頑張ったのに意味がなかった」と思ってしまうような仕事はしたくないはずなので、早め早めの方針確認は必ずやりましょう。

ルール化してでも、早めの方針チェックを行う。

悩んでいるときは、ゴールから逆算させる

新人はとにかくわからないことだらけ。わからないことを調べるとまたわからないことが出てきて、とにかく道に迷います。
「何ができればよいか」という目的ではなく、「どうすればよいか」という手段ばかりに目が行ってしまう人には、特に多い傾向だと感じます。

そんなときは、必ずゴールから逆算させるようにしましょう。

「この機能を実装するためには何が必要か?」「その必要条件を満たすためには何をしなければいけないか?」と問いかけながら、一緒に逆算しながら、具体的な作業にまで落とし込む過程を繰り返していきます。

「逆算して」と言うだけでは難しいです。それができないから困っているので、会話しながら、考え方を理解してもらえるように努めましょう。

会話しながら、一緒にゴールから逆算をする。

抽象的なタスクを具体的なタスクに分割させる

これまでの項と関連しますが、作業開始初手から「何をすればよいかわからない」という段階の新人については、タスクを徹底的に分割させましょう。

不明な概念の洗い出し、ゴールからの逆算、これらをやらせたり、一緒にやったりすることで、まずは何から着手すべきかを言語化していきます。
可能ならば、ゴールまでの作業を箇条書きで並べられるとベストです。「この段階で一度見せてね」という話もしやすくなります。

作業手順を箇条書きできるところまで言語化させる。

コミュニケーションについて

質問や相談を最後まで聞く

聞いているうちにまどろっこしくなり、相手の発言を途中で遮るように話し始めてしまうといった経験がある人は多いのではないでしょうか。

話を遮るというのは相手に威圧感を与えます。自分の話を最後まで聞いてくれない、という感覚は、質問や相談をする際の心理的ハードルを大きく上げてしまいます。

もちろん、相手に手間取らせない話し方は重要です。話を聞き、それに対する回答をした後に、簡潔に話せるようになるためのアドバイスを的確に行うようにしましょう。

遮りたい気持ちはグッと堪えて傾聴する。

名前を呼んで会話する

あなたは新人の名前を意識的に呼んでいますか?名前を呼ぶことは、信頼関係を築く第一歩になります。

「お前」とか、「あんた」といった表現は、相手に対して上下の関係を無意識に植え付けていきます。
友人同士のノリとはわけが違います。
自分がそう呼ばれることを考えても、あまり気分の良いものではないですよね。

名前を呼ぶことは信頼関係の構築につながる。

感謝を伝える

新人の努力や成果に「ありがとう」を伝えていますか?これがなかなかできない、という人は意外と多いんじゃないでしょうか。

「こんなに時間かかって」とか、「もっとクオリティ上げられるのに」とか、様々な思いが錯綜して、素直に監視したり褒めたりできない、という気持ちになることもありますよね。

でも、新人にとってはそれらも、大変な努力の末に成し遂げた成果です。シレッと受け止められるよりも、「ありがとう」の一言をもらうだけで、「自分の仕事に意味があったんだ」という気持ちになります。

小さな感謝の言葉が、大きなやる気につながる。

否定から入らない

誤った仮説立てや、ゴールの誤認識などに対して、「いや」「違う」と、頭ごなしに否定をしてはいないでしょうか。

確かに「違うものは違う」んです。仕事において、正解は必ずしも一つではありませんが、クライアントや組織に評価されないアウトプットは明確に「誤り」です。

しかし、自分なりに考えていることについて真っ先に否定されると、考えてきた過程そのものまで否定されたような気持ちに陥ってしまいます。「自分の考え方は間違っている」ということがわかっても、どうしたら正解にたどり着けるかがわからない。また同様に考え、否定され、を繰り返すことで、やがて自分で考えること自体を放棄してしまいます。

まずは新人の意見に対して、否定したくなる気持ちをグッとこらえて、一旦受け止めましょう。そこから、「なぜそう考えたのか」をしっかりと聞き出しましょう。考えた過程を言語化させることは、本人の思考の整理・説明力の向上にも繋がります。
聞き出したうえで、「この点で誤解がありそう」という指摘がピンポイントでできるならベストです。考え方全体を否定するのではなく、具体的なポイントを指摘することで、考え方をどう改めるべきか、新人も考えて改善しやすくなるはずです。

結果をただ否定するのではなく、改めるべき点を明らかにする。

バカにしない

言わずもがな、とは頭でわかっていても、ミスが連続したり、なかなか指示が伝わらなかったりすると、つい冷たい態度を取りがちになったり、心無い言葉が口をつく人もいるのではないでしょうか。

バカにされて逆に奮起する・モチベーションが上がる、というタイプの人もいるかもしれませんが、そうでない人が大半だと思います。そもそもどんな理由があっても、相手をバカにする、人格を攻撃するような言葉は使うべきではないでしょう。ついそういう言葉が口をついてしまう時は、ぐっとこらえて建設的な指摘に留めましょう。指導する自分自身が成長する機会だ、と捉えるようにしたいものです。

厳しく指摘すること自体は必要な指導ですが、相手を尊重した言葉で行うことを意識しましょう。

相手の人格を攻撃しない。仕事に対する建設的な指摘をする。

技術指導について

エラー内容を徹底的に理解させる

「このエラーはこうすれば解決できる」という解決方法を覚えるだけでなく、「なぜそのエラーが起きるのか」という原因部分まで深く考えて理解できるように指導しましょう。

エラーの解決方法ができた時には、その原因をしっかり説明させましょう。同じエラーに直面したときに解決できるだけでなく、それ以外のエラーも自力で解決できる力を身に着けなければ、自走できるエンジニアにはなれません。
エラー解決のプロセスをしっかり理解し、応用できるように導きましょう。

身につけるべきは解決方法ではなく、解決方法に至るプロセス。

AIは使って良いが、自分で説明できる箇所だけ使うようにする

AIがコードを書ける時代が到来していますが、実際に使い物になるかどうかは、使い手のリテラシーに大きく依存するのが現状です。正しく指示をし、出力内容の妥当性を判断できる人が使うならば問題はありませんが、そうでなければ大きなリスクになります。

「なぜこの処理をしているのか」「どうしてこのライブラリを使っているのか」を新人に説明させましょう。
AIを使ったうえで、正しく説明できるならば問題ありません。できないならば、「自分で説明できないものをアウトプットとして提出することは無責任である」ということを伝えましょう。

正しく有効活用して業務スピードを上げられるならばそれに越したことはありません。特に指導者側こそ、自分たちの今までのやり方にこだわりがちになってしまうので、新しいやり方は正しく前向きに受け入れていきたいものです。(でなければ、頭が硬い指導者だと思われてしまいます。)

自分で説明できない仕事は無責任。説明できるならば、AIで高速化はOK。

ライトなペアプログラミングをこまめに挟む

プログラミングスキル向上の為に、ペアプロは非常に効果的です。具体的に先輩が何を考えてコードを書いたり、デバッグをしたりしているかを目の当たりにしながら手を動かす経験は、最も実践力を培える時間になります。

新人とどのくらいの頻度で一緒にコードを書いていますか?

もちろん、指導者であるみなさんは忙しいです。多くの方が、自分のタスクを抱えながら新人指導をもする、という形を取っているのではないでしょうか。指導のための工数があらかじめ用意されているようなプロジェクトばかりでもないはずです。ペアプロのために1時間の枠を抑える、というのもしんどいと思います。

なので、ペアプロ自体ももっとライトに捉えましょう。質問や相談を受けるたびに、数分一緒に手を動かすというところから始めるのが良いです。おおよそトイレ休憩くらいの時間感覚です。新人の抱える課題を全部解決するまでペアプロする必要はありません。一緒に考えてちょっと手を動かして、「続きはやってみて」と任せてみる形で良いと思います。

短時間でもこまめにペアプログラミングを行うことで、実践的なスキルを共有できますし、最終的な手戻りも防げます。

時間をかけない、こまめなペアプロをやるように心がける。

ビジネススキルについて

結論から話させる

質問や相談を最後まで聞くの項で、途中で遮ってはいけないという話をしましたが、必要な指導としては、そもそも簡潔に話ができるようにする、ということに尽きます。

特に社会人経験が少ない人ほど、「さっき共有してもらったこのテスト仕様なんですが、◯◯と✗✗の部分を読んで、わからない部分がありました。AとBの資料を調べてもよくわからないんですが、どういうことか教えてもらっても良いですか?」と、時系列的に話をしがちです。まず「テスト仕様の一部がよくわからないので教えて下さい。具体的には...」といった、結論から話させる癖をつけさせましょう。

頭の中で話し方が整理できないならば、話す項目を簡単な箇条書きで良いので、順番に並べさせましょう。実際にシミュレーションしたうえで話すようにさせましょう。

簡潔でない話を「汲み取って上げる」のは簡単かもしれません。
しかしそれは一見優しい先輩の振る舞いのようですが、将来的にはその新人が損をする機会を増やすことになってしまいます。「別の上司やお客様に対して、この話し方が通用するのか?」という観点で指導するようにしましょう。

話の順番は徹底的に整理したうえで話すようにトレーニングする。

質問に対してまず回答を答えさせる

これも同様です。特に日本人は質問に対してクリティカルな答えを返すのが苦手です。(日本語特有の問題も一因としてあるように思います。)

「この作業は明日までに完了できますか?」という質問に対して、
「さっきこのエラーが発生したんですけど、調べてなんとか解消できたので、あとは残りの〇〇を実装するだけなので、明日までに終わる見込みです。」
と答えられると聞き手は辛いですよね。これが「終わる見込み」なら良いですが、「終わらない見込み」の場合、更に多くの枕詞が散りばめられる傾向がある気と思います。

「〇〇の実装中に想定していなかったエラがー発生しまして、その内容の調査と原因解決を今やっているところです。うまく解消できれば残りの作業は1日くらいなのですが、今の調査と解決にどれくらい時間がかかるかわからなくて...」

簡潔に答えられないケースの多くが、後ろめたいことがある場合だと思います。なので最初に言い訳というか、うまくいっていない理由を話すことで、ハードルを下げようとしてしまうのでしょう。

「完了見込みです。」
「明日までは難しく、もう半日いただきたいです。今直面しているエラー対応に時間がかかっており、もし更にずれ込むようでしたらすぐにご連絡します。」
と、まずは終わるかどうかを端的に答える回答するべきであるということを理解してもらいましょう。

まず回答を端的に答える。理由や補足はその後、の順番を徹底させる。

相談するときは解決したい問題を明確にさせる

結論から話させると同様です。

「今この機能の実装をしていて、この部分でエラーが出て、読んでみてここまでわかったんですけど...」という感じで話されると、「これは報告なのか、質問なのか、相談なのか...?」がわからないまま最後まで聞き続けないといけないですよね。新人からすると、指導者の手を煩わせるのを恐れて、率直に「エラー内容がわからないので一緒に解決してほしい」と言いづらいのかもしれません。気遣い自体が悪いことではないので、非難するべきではないのですが、お互いに不幸になってしまうので、相手に求めることをまず伝える癖をつけさせましょう。

遠慮して遠回しな言い方になるくらいなら、ストレートに求めることを伝えさせる。

質問はクローズドクエスチョンを意識させる

ある程度自分で仕事の進め方を組み立てられるレベルの新人にはこれを身に着けさせたいです。

「どうしたら良いですか?」「どう思いますか?」という質問は、相手に考えさせる負担を強いる行為でもあり、かつ自分で自信を持って案を固められないという裏返しでもあります。

「この案で進めたいんですが、良いですか?」という質問ならば、受けてもYESか、NOの場合はその理由を話せば良いので、ゼロから考える必要がありません。質問をする新人にしても、そこまで考えを固める思考プロセスを身に着ける良い機会になります。

できる新人にはドンドンハイレベルなことを求めていき、「できる後輩」になってもらいましょう。

YES or NOで答えられる質問にするまで、しっかり案を考えさせる。

新人指導に向いている人の特徴

自信を持って仕事ができる人

あなた自身、自分の仕事に自信を持っていますか?

自信のある、かっこいい指導者がいるというのは、新人への安心感に直結します。指導者という立場に甘えず、常に新人の規範となるの項でもそうでしたが、尊敬できる指導者には、自然に付いてきたくなります。

「この人みたいに活躍したい」と思われる人は、指導者に向いている人と言えます。

指導者の自信が、新人の安心感とモチベーションにつながる。

人の成長を見届けるのが好きな人

指導の初期段階では、まだまだ新人は何もわかりません。指導しながらもどかしく思うこともあって然るべきでしょう。
ただ、それを乗り越えて、自分で考え活躍できるようになっていく姿を見た時の気持ちは格別です。人の成長を間近で見る、その成長を支えるというのは、やってみて初めてその楽しさに気づくものでもあると思います。

最初から指導が好きという人は僅か。やってみて初めてその楽しさに気づけるもの。

主体性・責任感のある人

新人指導を「自分の仕事」として責任を持って取り組めていますか?
「やらされ仕事」としてやっているならば、その姿勢は必ず新人に伝わります。

もちろん、新人が成長するかどうかは、その新人がどれだけ高いモチベーションで頑張れるかにかかっています。
ですが、それでもその新人の成長に、自分が責任を持つ、という気持ちは忘れてはいけないと思います。
しっかり思いを持って向き合ってくれる指導者がいるからこそ、新人も安心して努力し続けることができます。

指導は自分の重要な仕事であり、責任をもってやるべきことだと認識する。

組織への価値提供を考えられる人

新人指導は、自分が与えてもらったものを返す仕事の項でお話した通り、あなたの指導業務は、組織の中で大きな意味を持ちます。自分一人育ててもらったのに対し、一人二人と指導していくことで、あなたは自分にもらったもの以上の価値を、チームへ提供できることになります。

「自分の開発タスクもあるのに、なんで人の面倒まで見ないといけないんだ」と考えている人は、良い指導者になれません。自分の指導に価値があることを理解していること、またその価値を最大化したいと思えることが、良い指導者の重要な資質だと思います。

自分がもらったものに対して、最大限のお返しをする。

指導に役立つ書籍集

『人を動かす』

言わずとしれた名著で、人が生きていく上で身につけるべき「人間関係の30原則」を、実エピソードを踏まえて紹介しています。
指導という場面のみならず、人間同士のあらゆるコミュニケーションの現場で重要となるコミュニケーションスキルを学ぶことができます。
相手の心を動かすための考え方は、あなたの指導にもきっと役に立つはずです。

『コンサル一年目が学ぶこと』

仕事の進め方を指導する上で、指導すべきことを頭の中で言語化できているかどうかは非常に重要です。この著書では、コンサルのみならず、あらゆる業界・業種において重要なビジネススキルが体系的に言語化されています。

『マネジャーの全仕事』

部下や新人指導を任されて、どうしたら良いかわからない時にまず読むべき本の一冊です。
人を率いるにあたって必要な視点、モチベーション管理を含むヒューマンスキルなどが網羅的に学べます。

終わりに

いかがでしたでしょうか。

『ガイドブック』と冠してはいるものの、絶対的な正解が存在しないのが、新人指導だと思います。

読んでいて「なるほどな」と思うものもあれば、「それは違うと思う」というものもあるのではないかと思います。
ぜひ皆さんの考え方を、コメント欄等で意見交換していただけると嬉しいです。

弊社Nucoでは、他にも様々なお役立ち記事を公開しています。よかったら、Organizationのページも覗いてみてください。
また、Nucoでは一緒に働く仲間も募集しています!興味をお持ちいただける方は、こちら)まで。

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