モチベーション
昨今の事情から外出の頻度が減り、自宅の電気代が気になっている方も多いのではないでしょうか。
どこのご家庭にもあると思われる3Dプリンタは稼働時間が長く、熱源としても消費電力が気になるところです。
ここでは、3Dプリンタを一定の条件で動かしたときの消費電力と消費電力量を測定してみます。
測定条件
使用した3Dプリンタ
Creality3D Ender3 Proを使いました。
Amazon.co.jpで3万円程度で購入でき、PLAやABSなど使える材料が幅広い上にそれなりの造形精度であるため人気があるようです。
印刷と測定の様子はこちら。
消費電力の測定方法
ラトックシステムのREX-BTWATTCH1を3Dプリンタの電源に挟んで測定を行います。測定データは本体に蓄積できる他、Bluetoothでダウンロードが可能です。
1分ごとの消費電力量(Wh)を測定できるため、この検証ではそのデータを利用しています。
印刷に使用した3Dモデル
おなじみの、Stanford Bunnyを50%に縮小して印刷します。STLファイルはThingiverseよりこちらのものをお借りしました。
スライサーはUltimaker Curaを使用します。
- 解像度:0.28mm
- Infill:50%
- サポート材あり
この設定で、材料の消費は16g、印刷時間は1時間34分と出ます。(後でグラフを示しますが印刷時間の予測はとても正確でした。)
ちなみに、印刷解像度を上げると印刷時間は長くなるものの、材料の消費は少なくなる、すなわち無駄が少なくなる傾向があります。
材料の設定
ALUNARのPLA(白)を使います。
- エクストルーダーは200度
- ビルドプレートは60度
の設定です。
ちなみに、Ender3は木造6畳の部屋にドアを閉めて設置しました。
印刷開始時の室内気温は21.5度でした。
測定結果
結論から。今回の条件では、
- 印刷時間:1時間35分
- 合計消費電力量:182.4Wh
- 1kWhあたりの電気代を19.88円(東京電力 従量電灯B 1段階)およそ3.6円
- 同じく従量電灯Bの3段階(30.57円/1kWh)だとおよそ5.6円
となりました。平均で114.3Wの消費電力と言うことになります。液晶テレビと同じくらいですね。
時系列にしてみるとこんな感じ。
- 赤い折れ線グラフが1分あたりの消費電力(左側の軸)
- 緑の棒グラフが消費電力量の積算グラフ(右側の軸)
です。消費電力がだいぶ変動していますね。
これは、主にビルドプレートの加熱を断続的に行っているためのようです。
実際に印刷をするときには、予熱の上印刷を始めるのですが、下記表に示すように予熱時の消費電力が印刷時に比べて大きくなっています。予熱の際にはビルドプレートの予熱→エクストルーダの予熱の順で行われますが、グラフ上では16:44付近に250W付近まで上がりピークを迎えていることからわかるように、ビルドプレート加熱時には消費電力が大きくなります。(そして表面積が大きいため熱が逃げやすい)
合計時間(分) | 合計消費電力量(Wh) | 平均消費電力(W) | |
---|---|---|---|
待機(参考) | 5 | 0.28 | 3.43 |
印刷 | 91 | 172.61 | 113.80 |
予熱 | 4 | 9.79 | 146.99 |
大きなモデルを印刷したり、印刷解像度を上げると印刷時間が長くなりますが消費電力も印刷時間にほぼ正比例すると考えられます。ただし、気温によって消費電力は変動する可能性があります。
消費電力の観点ではなるべく熱の逃げにくい部屋でプリントしたほうが有利ですね(密閉型のプリンタもあるくらいですし)。
ちなみに、今回の実験ではプリンタの影響か室温の上昇も見られました。
(印刷開始時は21.5度→印刷終了時は24.5度と3度上昇しています。プリンタ付近の気温ですが。)
参考:印刷のトータルコスト
- 室温20度ちょい
- ALUNAR PLA(1kgで2500円)
- プリント解像度0.28mm
とすると、1kgあたりは電気代226.7円と試算できる(もちろん形状にも依存、従量電灯Bの1段階。3段階料金だと348.5円)ため、材料代合わせてもランニングコストは3000円以下となるようです。意外とリーズナブルですね。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
ご自宅で3Dプリンタが電気を食うと言われて肩身が狭い方、電気代が気になって創作活動にブレーキをかけている方に少しでも背中を押す結果となれば幸いです。