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意思決定支援のためのデータ分析

Last updated at Posted at 2020-12-04

ビジネスにおける多くのデータ分析は複雑なアルゴリズムで分析するよりも、分析しているデータを正しく理解するのほうがはるかに重要である、そして、データを理解するという目的を持つことだと思います。その目的が必ずしも具体的でなくても、「溜まったデータを活用したい!」というのも立派な目的だと私は思います。ただし、具体的な数値のKPIと比べると、活用したいといったような目標ではデータからなにか示唆を見つけるまでに迷いが多く、結果出るまでに強い意志が必要です。

私はよく自分の顧客に、すごい機械学習の知識があって、素晴らしい精度のモデルが作れるとしてもお客さんから頂戴したデータの背景を理解していなければ、分析の結果は全く意味がないということを伝えます。

そして、一番このデータのことがわかる人から、どのようにデータ収集しているのか、どんな手段、どんな前提や条件、どんなバイアスがありそうなのかを伺います。関連情報を取得出来なかった場合には、前提を把握していないため、結果は意味がないかもと説明します。具体的な前提を教えてもらったとしても隠れた条件の罠にひっかかる場合があります。

そこで、たくさんの顧客のデータを分析して、たくさんのデータの罠に引っかかってから、私なりに出た結論はひとつ「大半のビジネスにおけるデータ分析は顧客自身の意思決定のためである。その意思決定のためのデータ分析は背景もデータも理解している顧客自身がすべき」です。

VUCAの時代の意思決定は質を求めるうちに変化に追いつかなくなるのです。それよりも意思決定のプロセスとスピードが何よりも価値のあるものだと思います。多くの仮説検証ができることこそが近道です。

今日は最も典型的な意思決定に使われているビジネスデータ分析の顧客アンケートデータについてお話します。その中の罠だらけの”NPS”のデータ分析を例に説明します。

NPSとは

NPS®とは「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略で、顧客ロイヤルティを測る指標です。
この指標は2003年にアメリカの大手コンサルティング会社であるベイン・アンド・カンパニー社のフレドリック・F・ライクヘルド氏がハーバード・ビジネス・レビューで発表したものです。
それまで計測が難しかった「顧客が企業やサービス、ブランドに対してどれくらい愛着があるのか」を数値化することで、顧客体験の評価・改善に活かされています。

  図1.png

NPS®を測るには、「あなたはこの企業/商品/サービス/ブランドを友人や知人におすすめしたいと思いますか?」という質問を行い、0~10の11段階で評価をしてもらうという方法です。
計算式のNPSのスコアは =「推奨者(Promoter)」の割合から「批判者(Detractor)」の割合を引いた数値となります。

それまで計測が難しかった「顧客が企業やサービス、ブランドに対してどれくらい愛着があるのか」を数値化することで、顧客体験の評価・改善に生かされています。

要するにアンケートの手法の一つで、顧客満足度を図るもう一つの指標です。実は日本のNPSのスコアが世界と比較すると低い傾向があります。それが日本人の意見は中心によってしまう傾向があるからとも言われていまして、10段階で見たときに真ん中の5、6あたりを評価しがちです。すると自然と推奨者マイナス批判者の割合が低くなってしまいます。

NPSが注目されている理由

1:顧客の感情を数値化
「満足しているか?」と聞かれると頭のなかで情報を整理して理性的に考えて答えるに対して、「おすすめしたい?」と聞かれると、“好きじゃない“、”良いと思わない” 場合には、他の人におすすめできない。その感情を数値で評価しています。

2:評価の指標として定着
業界ごとのNPS平均・ランキングトップといったようなものがあります、同じ業界で自分たちはいろんな方面においてどの位置にいるのかは常に知りたいと思います、企業や商品などを判断する新しい指標として定着されつつであります。

3:グローバル企業が採用している
NPSが注目されているきっかけでもある世界的有名な企業(Apple、スターバックス 等)での導入が進み、企業の成長率や売上と相関が高いことを証明できて、今は欧米の公開企業では3分の1以上が活用しているとも言われており、日本でも顧客満足度に並ぶ指標として注目を浴びています。

顧客満足度調査は解約ユーザーの約80%が解約前に「満足」と回答していたという有名な話があるので、顧客満足度だけでは難しく、本当のお客さんの思いを引き出すための方法が必要と思います。

NPSはお客様の感情を測れるとても大事なスコアであることは理解していただいたではないかと思いますが、企業で導入する相応の価値もあるではないかと思います。

NPSに対して不信感をもっている方もかなりいらっしゃいます。また、NPSはスコアごとに集計し、現状を理解するために分析して終わってしまうことが多いだからではないかと思います。自分はNPSの信者でも、NPSの専門家ではないですが、10社以上のNPSアンケート分析しました。集計結果だけではもったいないので、ぜひ結果をどんどん企画や施策、ビジネス意思決定に活かしてほしいです。

ただし、NPSのみでROIやKPIの指標として利用するのはとても危険です。

NPSのアンケートだけ分析する危険性について話す前に、実際NPSを導入したい場合、活用までのデータの流れについてもざっくりですが、ご紹介します。こういうデータの取得や活用を理解できることこそが正確な結果の解釈に結びつけます。

NPSの導入と活用について

NPSは通常オンラインでアンケートを取ります、取ったアンケートデータをNPS専門の分析ツールやコンサルに依頼するのが主流です。分析した結果のデータをMAやDMツールに連携して施策に回します。一度だけ分析しても意味がないので、設問など微調整しながら継続的にPDCA回すことが大事とされています。

  図2.png

オンラインで実施しているのが多いですが、まれに紙で実施する企業もあります。
紙で回答されている場合とオンラインで回答する場合、インセンティブある場合とインセンティブがない場合、そういった細かい情報が肝心ですので、条件別の場合はそれぞれ分けてみることをおすすめしております。

皆さんも自分が回答することを想像してみていただければと思いますが、紙でアンケートを回答するのとオンラインで回答する場合で気持ち込が全く違うからです。それに、企業が狙っているターゲットと回答者の属性も差があることを容易に想像できます。少なくとも私は紙でアンケート回答は何年もしていないですね、オンラインサービスなれている人が紙で書いてもらっている時点で、もうすでにファンもしくはよっぽど言いたいことがある方です。ここが導入する際の一つの罠と言えるでしょう。

更にデータ分析の際に、きちんとアンケート背景と条件理解しておかないと他の罠にもひかかってしまいます。

例えば:

・50代をターゲットの健康食品という前提なら、10代の低評価が全体のスコアを引っ張ってしまっている時。

・ネットと店舗で購入している商品なら、顧客側の評価対象はWEBサービスとリアル接客の違いがあるので、分けずに見てしまう時。

・同じファーストフードの店舗だが、ドライブスルーと店内なら顧客が求めているものが違うが、結果を混ぜてみてしまう時。

データを確認するほど、仕様を理解するほど、多くの落とし穴が存在していることに気づくことができるので、単に全体の推奨者の割合マイナス批判者の割合では十分に評価できないこともご理解いただけたかと思います。

NPSの活用ポイントについて

罠だらけのNPSを有効活用のポイントはとてもシンプルです。他のデータ、売上、顧客行動データなどと合わせて分析することです

図3.png

取得したデータ分析は業者、コンサルタントに依頼することが主流になっています。確かにアンケート質問の設定などはコンサルタントが必要であると思いますが、NPS専門の業者やコンサル会社はたくさんの企業をみてきているので、そのノウハウはあり、バランス良く、良い質問の設定が得意です。しかし、企業毎に目指したい姿、理念、従業員の思い、それによって収集したいアンケートは違いがあると思います。業者やコンサルタントより自社の社員の方が、ビジネスを理解していると思います。ノウハウも社内に溜まるので、分析は社内で行うことをお勧めします、もしくは集めたNPSのアンケートデータを再利用し、社内で分析してほしいです。

早い意思決定を支援するデータ分析

社内分析に当たって、データ分析のスペシャリストではなくても簡単にできる拡張分析ツールで分析した結果をご紹介します。

ビジネスにおける意思決定のデータ分析は因果関係と相関関係をしっかり見極めることが必要です、ある特定のターゲットに対して(今回の場合はNPS)、影響している要因の一覧は拡張分析ツールのBrainPad VizTactでランキング形式で表示することがでいます。

これにより、見るべき要因が上位に出てくるので、簡単にNPSや売上に影響している一番重要な要因を確認することができます。

図4.png

上記は”NPS”をターゲットにする場合の結果ですが、一番の要因が「商品品質」と「価格」の組み合わせ、次が「送料」になります。当然ですが、この結果を出す前に背景や全体条件を細かく確認する必要があります。ここまで落とし込んでくれたら、改善策を練って、実行に移すのみでしょう。

また、NPS分析で本当に分析したいのはなにかを、目的を定めることが必要です。NPSを分析するけど、よく話を聞くと実は最終的に解決したいのは「LTV」や「売上」の場合も多いです。

その場合は対象となる「LTV」や「売上」を同じ分析データに投入し、下記のように「売上」をターゲットにしたときの要因のランキングから、NPSを優先に改善すべき、それとも他のことなのかを簡単に確認することが出来ます。

図5.png

このデータの結果では「決済機能」と「商品に対するレビューの高評価」が一番「売上」に影響していることがわかります。次が「NPS」となります。

要するに、目的は「売上」なら、「決済機能」と「商品に対するレビューの評価」の改善が最優先にすべき、その次に「NPS」を改善する必要があります。また、NPSを改善したいなら、「商品品質」と「価格」から、といったような結果を導くことができます。

難しい操作もない、統計や機械学習も極める必要なく、実行時間はわずか1分ほどです。 PDCAを素早く回すことに関してはより正しい、効率的な要因を見つけるのに拡張分析ツールがとてもビジネスの意思決定に役に立つではないかと思います。

いまのような分析だけではすべての問題解決につながるわけではないかと思いますので、顧客ロイヤリティを上げるために、お客さんの体験や気持ち、行動をデータと結びつけてどんどん深掘りをする必要があります。データひとつずつの収集の背景を理解した上で顧客グラフィックごとにみて、最終的に問題を解決する糸口を見つける必要があると思います。

顧客満足度の改善については、他にもたくさんよく利用する指標があります:

GCR(Goal Completion Rate:目標達成率)
CES (Customer Effort Score:顧客努力指標)
CSAT(Customer Satisfaction Score:顧客満足度)

こういったスコアをそれぞれみて、結果の差を確認をおすすめします。ツールを利用すると素早く多くの条件とパターン発見することができるので、今まで手を出したくでも時間がなくて出来なかったことができちゃいます。

その他にも、アンケートのフリーコメントを形態素解析で、頻出ワード解析の結果やクラスタの結果も合わせてみることで、更に正確に顧客の理解ができます。こちらもプログラミングができなくても形態素解析のツールなどで可能です。弊社はツール利用する場合ではMyndの結果をお客さんに提供します。

まとめ

現代のビジネスはとても複雑です、そしてあなたの顧客も同じく複雑です。

一つの指標のみでは評価できないし、一種類のデータの分析で決めつけることも出来ないです。より背景や状況を理解して、データを複数の軸で見て理解してこそ、本当に活用できるビジネスデータの分析です。データ分析を専門とする我々もビジネスをわからないと意味のない分析結果を提供することになります。

企業自身が分析し、それを意思決定の場に素早く提示することができるなら、間違えなく意思決定のスピートに支援することができるでしょう!

我々は持続可能な未来を目指すために、企業のためになるサポートを提供します。

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