はじめに
統計検定2級 (CBT: 202004版) に合格したので振り返ったメモ。
元々準1級の合格を狙っていたが、勉強をいくらしても分かった気がしないため、そもそも前提となる2級レベルの知識が不十分と考え、基礎をしっかり理解するために受験した。このため本記事の勉強方法は、2級合格だけを目指す方にとっては、かなりオーバーワークであるが、ご了承願いたい。
参考にした本
まず、参考にした本と活用方法をざっと説明する。
日本統計学会公式認定 統計検定2級対応 統計学基礎
通称公式テキスト。賛否両論あるとは思うが、試験範囲を網羅していることと、2級レベルの実力をつけるために必要なことが無駄なく書かれている点が素晴らしい。ぶっちゃけこの本なしで2級の勉強はありえない。特に準1級を目指す人にとっては、回り道をせずに実力をつけられるためおすすめである。
使い方としては、最初の1回だけ本文に加えて問題を解き、2回目以降はひたすら本文だけを読むようにした。また付録にも重要なことが書かれているため、可能な限り理解するようにした。前提知識にもよるが最低3周はしたいところである。この本を一通り理解すれば、勝手に合格する力がついているはずだ。
ところどころ難しいと感じる説明があったが、そこは理解が不十分な点と考え、そのままにせず統計学入門など他の本で補完するなどして理解に努めた。
過去問
過去問は学習途中の時点での理解度、苦手分野の把握に役立った。
学習の進捗に応じて実力を確認する必要があるため、一気に全部やるのではなく、2~3回ずつ小分けしてやった。
今回は手元にあった以下を利用したが、なるべく新しいものが良いだろう。何度も解くというよりは1回真剣に解き、あとは試験前に軽く復習する感じ。
日本統計学会公式認定 統計検定 2級 公式問題集[2012~2014年]
日本統計学会公式認定 統計検定 2級 公式問題集[2018〜2021年]2018年~2021年
たまに難易度の高い回や、どうあがいても解けない問題があったりするので、いちいち落ち込まないことが重要だ。
大事なことは、テストによって自分の弱点を把握し、その弱点を強みに代えてしまうぐらいに復習することである。
これを繰り返すことで苦手な分野がどんどんなくなっていった。
統計学入門
なぜそうなのか?という点が公式テキストよりも詳しく書かれていたりするので、公式テキストが理解できない場合の補完資料として活用した。公式テキストをある程度理解した後に読んでみたが、1~2日程度ですんなり読めた。前半の記述統計の説明が詳しい点もよい。確率母関数の所はスルーしてよいと思う。
ところで青本も買っていたので、何度かトライしてみたものの、全く合わなかった。
読んでもなかなか頭に入ってこない場合、説明を理解する力が足りないか、説明そのものが悪いかのどちらかである。
前者の場合、別の本で行間を補完したり、力をつけることで、後から読むと分かりやすく感じることが多々ある。
いずれにせよ、その本にこだわるのは一旦やめて、他の本を当たってみるのが正解だ。
1冊でマスター 大学の統計学
1級、準1級界隈で評価が高かったので購入してみた。2級レベルでは明らかにオーバワークになるため全部に目を通す必要はない。確率母関数関連は全て無視した。
特に以下の点は、公式テキストに比べて充実しているため役立った。
- ベイズの定理
- 多変量の話(確率変数の期待値、分散、共分散、相関係数、独立)
スバラシク実力がつくと評判の統計学キャンパス・ゼミ
いわゆるマセマ本。これも一通り読んでみたものの、2級レベルではやる必要はないかも。
「1冊でマスター 大学の統計学」と同様、「確率変数の期待値、分散」等、公式テキストに比べて内容が充実している箇所を読んだ。
日本統計学会公式認定 統計検定準1級対応 統計学実践ワークブック
いわゆる準1級本。当然ながらこれもオーバワークであるため、ピンポイントで読んだ。特に「第10章 検定の基礎と検定法の導出」、「第20章分散分析と実験計画法」、「第21章標本調査法」は公式テキストの補完として役立った。
その他の勉強法
学習の全体像や夫々の関連が分からずに公式テキストを読んでも、中々読んだことが繋がってこない。このため、公式テキストを1周終わったぐらいで用語・概念を洗い出し、その関係を整理してみた。
具体的には、エクセル上で以下をひたすら繰り返すことを行った。
- テキストの用語や概念を洗い出す。
- 用語や概念の説明を確認し、関係ありそうな別の用語や概念と線で結ぶ。
きれいに整理しようとすると時間が膨大にかかるが、そもそも上のプロセスを通じて、各用語の意味、位置づけを理解、整理することが目的なので、きれいにまとめるようとはしなかった。 この整理法は、他の勉強にも使えるのでお勧めである。
参考までに、1級の範囲までを整理した図(1部) を紹介する。
これをやる、やらないでは、その後テキストを読む際の理解度は全然違ってくるはずだ。
その他のポイント
以下、個別のポイントについて列挙する。
- 公式テキストにある統計分布の平均と分散は一通り覚えておいた方がよい(特に幾何分布)。役に立つ場面がある。
- 苦手なところを克服することが重要である。例えば「標本調査と抽出方法」は毎回出るので、過去問やテキストでしっかり概念を理解することで得点源になるはずだ。同様に線形回帰モデル、分散分析もしっかり理解すれば、問題のパターンは限られているため得点源になる。
- 当然だが推定、検定のパターンは全て覚えた(ただしウェルチの検定は覚えなかった)。 本を見なくても自分でパターンを列挙して式を記述できるレベルにしておいた。おかげで推定・検定は満点をとることができた。
- ベイズの定理は式の丸暗記ではなく、式の本質を理解するようにした。
- チェビシェフの不等式は自分で証明できるようにした。
- 暗記物は、過去問で出てきたものを含め、しっかり復習・暗記した。
- ラスパイレス指数
- ジニ係数の計算の仕方
- 変動係数
- 期待値の和、分散の和、共分散の各種公式
- 箱ひげ図の見方、用語の意味
- 歪度、尖度、それぞれの正負の時の特徴
- 季節変動
などなど
試験本番の注意点
以下、CBTでの試験本番の注意点について説明する。
- CBTでは、ビニールっぽい表面の計算用紙とペン2本が渡される。計算用紙は1度書くと消せないため、ある程度埋まったらためらわずに代えてもらおう。自分は3回代えてもらった。
- 最終的に時間は余裕があったが、最初の3問でかなり時間を使ってしまい相当焦ってしまった。ちょっと考えて分からない問題や時間のかかりそうな問題があれば思い切って飛ばそう。
結果
結果はこんな感じ。やはり記述統計は手ごわい...