はじめに

LINEやSlackのような 上方向への無限スクロール が必要なWebアプリを作っていて、なぜか iOSのSafariだけうまく動作しない 問題に悩まされたので、原因とどう解決したかメモしておきます。
Vue.jsを使っていますがVue.js以外でも使えるテクニックです。

同じ事象で悩んでいる方の参考になれば幸いです。

上方向の無限スクロールでやっていること

そもそも無限スクロールとは コンテンツの端の方までスクロールしたら次のページを読み込みコンテンツに追加する という処理を繰り返すことで実現します。
下方向への無限スクロールの場合はこれだけです。

これが、上方向の無限スクロールの場合、次のページを追加する位置がコンテンツの先頭になるため、追加する前のスクロール位置に戻す必要があります。

イメージで説明すると・・・

１ページ目を上端までスクロールする。
上端近くなったら次のページを読み込む。
読み込んだデータをコンテンツの先頭に追加する。
しかし、このままでは「49.hogehoge」まで見ていたページが急に「99. ...」になってしまう
追加する前に見ていた場所までスクロール位置を戻す。

仕組みとしては以上です。

vue-infinite-loading を試してみる

上記の処理を自作してもよいのですが、フロントエンドをVue.jsで作成していたので、定番そうなvue-infinite-loadingを使ってみました。
https://peachscript.github.io/vue-infinite-loading/

下方向だけでなく、上方向への無限スクロールにも公式に対応しているようです。
https://peachscript.github.io/vue-infinite-loading/guide/top-dir-scroll.html

vue-infinite-loadingの上方向無限スクロールサンプル（iOSのSafariだとうまく動かない）

const api = 'https://hn.algolia.com/api/v1/search_by_date?tags=story';

new Vue({
  el: '#app',
  data() {
    return {
      page: 1,
      list: [],
    };
  },
  methods: {
    infiniteHandler($state) {
      axios.get(api, {
        params: {
          page: this.page,
        },
      }).then(({ data }) => {
        if (data.hits.length) {
          this.page += 1;
          this.list.unshift(...data.hits.reverse());
          $state.loaded();
        } else {
          $state.complete();
        }
      });
    },
  },
});

codepen で試してみたところ動作も問題なさそうです。

そう、iOSのSafari以外ならね。

もし、iPhoneやiPadをお持ちであれば、以下のデモを試してみてください。
勢いを付けて上端にスクロールすると 一気に何ページ分ものコンテンツを読み込んでしまい、元の位置に戻ってこれていません。

なぜiOSのSafariではうまくいかないのか

ChromeやFirefox、MacのSafariでは問題なく動作するのに、なぜiOSのSafariではうまくいかないのか。
調べてみると、どうやら iOSのSafariの慣性スクロール がクセモノで、

慣性スクロール中はスクロール位置を変更する処理(*)が効かない ようです。
*scrollTop()やscrollIntoView()など

そのため、上述した「4. 追加する前に見ていた場所までスクロール位置を戻す。」が動作せず、次ページ読み込み後も、スクロール位置がページ上端のままなので何ページもロードしてしまうという問題が起こっているようです。

解決方法

慣性スクロール中はJavascriptからのスクロール位置の変更は受け付けないので、慣性スクロールが停止するのを待ってから位置を変更することにしました。

vue-infinite-loadingの上方向無限スクロールサンプル（iOSのSafari対応版）


const api = 'https://hn.algolia.com/api/v1/search_by_date?tags=story';

new Vue({
  el: '#app',
  data() {
    return {
      page: 1,
      list: [],
      scrollEndTid: null,
      handleState: null
    };
  },
  mounted () {
    window.addEventListener('scroll', this.onScroll)
  },
  destroyed () {
    window.removeEventListener('scroll', this.onScroll)
  },
  methods: {
    onScroll() {
      clearTimeout(this.scrollEndTid);
      this.scrollEndTid = setTimeout(() => {
        if (this.handleState) {
          this.loadNews(this.handleState);
          this.handleState = null;
        }
      }, 200);
    },
    infiniteHandler($state) {
      this.handleState = $state;
      this.onScroll();
    },
    loadNews($state) {
      axios.get(api, {
        params: {
          page: this.page,
        },
      }).then(({ data }) => {
        if (data.hits.length) {
          this.page += 1;
          this.list.unshift(...data.hits.reverse());
          $state.loaded();
        } else {
          $state.complete();
        }
      });
    }
  },
});

修正版のデモは以下です。

iPhoneやiPadでの問題も解消されていると思います。
この修正のポイントは以下の「慣性スクロールの停止」を判定する部分です。

慣性スクロールの停止を判定する

慣性スクロールの停止判定


    // スクロールイベントハンドラに紐付け、スクロール中は連続して呼ばれる
    onScroll() {
      // timerをクリア
      clearTimeout(this.scrollEndTid); // dataのメンバ変数
      // 0.2秒のtimerを設定
      this.scrollEndTid = setTimeout(() => {

          // 0.2秒間スクロールされていない場合（＝慣性スクロール停止時）の処理を記述

      }, 200);
    }

スクロール中は上記の onScroll() が連続して呼び出されるため、 clearTimeout() と setTimeout() を使って 0.2秒以上次のスクロールハンドラが呼ばれなかったら停止した と判断するロジックを追加しています。

そして、次のページを読み込むタイミングはページの上端に到達した時に infiniteHandler($state) が教えてくれるので、その両方を満たす時に次ページをロードするようにしました。

これでiOSのSafariも含めて上方向の無限スクロールに対応できました

【参考】PureなJavascriptやjQueryへの適用

このiOSのSafariの慣性スクロールへの対応は、Vue.jsやvue-infinite-loadingには依存しない部分なので、例えば以下のようなjQueryなJavascirptにも簡単に適用することができました。

https://codepen.io/kilvistyle/pen/GRZEGjx
→デモはこちら

このcodepenは同じように悩まれた方のサンプルコードをforkして修正してみました。
今回の問題を調査するのに、このfork元コードには大変お世話になりましたmm

iOSのSafariで上方向の無限スクロールの問題を解決する