概要
ここ数年いくつかの組織でやってきたtimesについてのあれこれ。
うまくフィットするところもあれば、組織文化的に難しいところもあったり。
そんなこんなな状態でtimesってどんなものかというのを説明するために
個人の時間で作っていたスライドの書き起こし。
Timesとは何だろう
皆さんTwitterはご存じかなと。まあ基本は個人の「つぶやき」を書くものです。
でも社内情報はTwitterには書けませんよね。ということでSlack等の社内チャットツールで以下のようなことをつぶやきます。
- 「今やっていること」
- 「困っていること」
- 「知ったことメモ」
- 「教えたいこと」
それに限らず、猫写真・昼飯、なんでもありでどんどんつぶやいて行くものです。
よかったらお互いのチャンネルに参加しあって、突っ込みを入れたり、困っていることに反応をして上げてください。
この自分のつぶやきをする場所のことをここでは「自分用チャンネル」と表現します。
日報と自分用チャンネルの違い
仕事では日報を書くというのもよくありますが、それとの違いです。
日報 | 自分用チャンネル | |
---|---|---|
書くこと | 進捗状況 体験 学習 課題 |
今やっていること 今困っていること その他なんでも |
課題共有のタイミング | 終業時 | リアルタイム |
投稿の周期 | 一日一回 | 随時 ノルマなし |
引用:https://craftsman-software.com/posts/56
結局自分用チャンネルに何を書けばいいのか
基本的になんでもアリです。
- 今日やること(やりたいこと)
- 今日やったこと
- 体調「風邪ひいた」「花粉症がひどい」「暑い」「寒い」「眠い」「二日酔い」
- 面白いと思った記事のURLを貼る
- その人向けの記事を見つけたら、その人のチャンネルで教えてあげる
- 「ちょっとコンビニ行ってくる」「おなかすいた」
- 「ほげほげがめんどくさい」「ふがふがが難しい」
- 「何かメモ」
- 試行錯誤の過程「何をどうするんだっけ」「これするんだった」
誰かに質問するとき、議論するとき、確認するときはその人のチャンネルに行って話すと良いかもですね。
メリットとデメリット
メリット
情報が属人化しにくい
個人の部屋のような概念でチャンネルを作り、そこで会話をします。
そうすることで今までDMで閉じていたやり取りが透明化され、質問・回答が誰でも見られるようになります。
また、どのような趣味を持っているか、どんな考え方をしているかも知ることができます。
その人のタスクがわかる
何をしているのかがわかると話しかけるタイミングも図れるようになります。
また、その人が抱えているタスクや進捗を把握しやすくなります。
2度手間がなくなります
DMでやり取りしていたことを第三者に確認されたとき、再伝達する事が少なくなります。
他の人のtimesを見ることで何を考え、何ができるかが見えてきます
組織に「弱いつながり」「トランザクティブメモリー」を醸成できます。
コミュニケーションが活発になります
デメリット
書く内容、書くタイミングが個々人による
これはおしゃべりな人、無口な人がいるように差がでるのは仕方ありません。
ただ、どのように使うかが見えてくれば少しずつ発言が増えてくるように感じています。
チャンネルの量が増える
こればっかりはなんとも。
muteしたりjoinするチャンネルをある程度見定めると良いです。
最初は人事の人や同じチームの人、同期の人や社内の情報ハブになっているところがあるのでおすすめです。
決して全部にjoinする必要はありません。
人数が増えたときに大丈夫か
こればっかりは何とも。それはその時に考えましょう。
slackの接続数万人・1timesあたり100人でもやっているところがあるようです。
ただ、導入するときは少人数で始めるのが良いかと。
愚痴が見える化する
自由な発言を許していると愚痴が多くなることがあります。
ネガティブ投稿ばかりだとtimesを見ているだけでも辛くなったり、批判されている気分になることもあります。
そのような場合は適宜1on1やtimesの雰囲気をどのようにしたいのかを啓蒙していく必要があります。
ただ、見えないところで言われていた愚痴が見える化したことで、それをうまく改善サイクルに乗せることもできたことがあります。
一概に悪いとは言えないかもしれません。
timesにルールは必要か
ルールとは何か
「規則」や「きまりごと」のことです。
ルールがあれば厳密に運用できるが、その分自由度は低くなります。
モラルとは何か
「道徳」や「倫理」のことです。
モラルがあればルールは少なくてもどうにかなります。
ルールとモラルどちらが必要か
ルールが増えれば効率は落ちます。ルールでがんじがらめになると、柔軟な対応も難しくなります。
そのようなtimesは楽しくなくなり、続けるモチベーションも無くなります。
最初の個人の「つぶやき」を書くもの
という面で考えると、できる限りルールは少なくしたいです。
モラルとルールを改めて考える
- モラルは、私たちが目指すべき中心点
- ルールは、モラルからこれ以上離れてはいけないという限界を示す境界線
このように言い換える事もできます。
そう考えるとtimesを使うのにルール(マニュアル)をもって運用するのではなく
モラル(ガイドライン)をもって運用をしていきたいです。
今までのtimes運用でこころがけていること
セキュリティ編
アカウント名やパスワードはpublicチャンネルに書いてよいか
自分が意図していない方も見ることができるため、ログイン情報等については注意しています。
なぜ公開してはいけないか
セキュリティの観点で、必要な人に必要な情報を渡すのと同時に、不要な人には情報を公開しない事が鉄則です。
例えば「お金を盗む」という行為について考えてみましょう。
- 道にお金が落ちていたら拾うか
- 鍵がかかっていない家に忍び込んで机の上のお金を取るか
- 銀行にお金があるが、銀行強盗をするか
ハードルが高いものはどれでしょうか。逆にどれが低いでしょうか。
表現編
自分の発言内容が他者に与える影響を考える
直接暴言を吐かれた人は処理能力が61%、創造性58%落ちる。
自分の属しているグループに暴言を吐かれた人は処理能力が33%、創造性39%落ちる。
他人が暴言を吐かれるのを目撃しただけでも処理能力が25%、創造性45%落ちる。
⇒ これは個人に対してだけでなく、プロダクトや会社組織についても言えるのでは。
⇒ どのように表現するか(ネガティブ表現ではなくポジティブ表現にする)。
引用:「暴言を吐かれた人は処理能力が61%、創造性58%落ちる」暴言が#職場 にもたらす悪影響
https://togetter.com/li/1201526
元論文:https://journals.aom.org/doi/abs/10.5465/amj.2007.20159919
発言内容編
雑談の必要性
ある程度仕事内容と直接関係の無い雑談はありだと考えます。
それは、雑談をすることが「ヒントをつかむ」「別の発想をする」といった、
知識創造のプロセスに重要なかかわりがあると言われているからです。
『雑談』という交流からその人の価値観や過去の体験を共有し、
人となりに共感し信頼関係を築くことでチームは強くなるそうです。
正式な報告・連絡・相談は適したチャンネルで行う
timesはあくまで「非公式な場」。
昔で言えば「タバコ部屋」や「飲みの席」と同等なので、正式な作業依頼や報告などは適したチャンネルで行いましょう。
作業内容編
キーワードを含めるようにする
将来の自分が検索するときに、何で検索するかを意識します(ファイル名や技術的なキーワード等)。
結果だけではなく途中経過も発言する
何をどのように考えてそうなったかを残すことで、自分の思考プロセスを確認できます。
具体的なコマンドやキャプチャを残す
コピー&ペーストしたり、キャプチャがあるとわかりやすいです。
HRT原則編
HRTの原則とは以下のものです。
- 謙虚(Humility)
- 尊敬(Respect)
- 信頼(Trust)
優れた開発チームではこの3つの価値が大切にされており、エンジニアとしてもチームや組織、
顧客との対話においてこれらの価値を重んじていくことが成功につながる、というものです。
引用:Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか
最後に
物理的に同じ場に居なくてもコミュニケーションは取れる!
timesがあることによって、その人の席に行って会話するのと同じ状況を仮想的に作れます。
楽しくやっていきましょう。
将来の自分へ、まだ見ぬ新人さんへのメッセージを残すことができます。
自分の試行錯誤の記録、考えていたことがあることによって、
作業のバックグラウンドや、同じ作業をするときの参考にできます。
時間泥棒には気をつけましょう
愚痴を言いたい人は一緒に飲みに行きましょう 🍻
参考
Slackで簡単に「日報」ならぬ「分報」をチームで実現する3ステップ〜Problemが10分で解決するチャットを作ろう
Slack分報についての質問と回答:僕のチームではどのように分報しているか?
社内にSlack上での分報を導入しないかと提案してみた
slack分報を導入してみた
社内の情報共有で悩んでいるなら!「日報」ならぬ「分報」のススメ!
雑談の捉え方で組織の生産性が変わる、という話
分報を導入して3年経ったので振り返る
またSlackでtimesを始めてしまった
情報セキュリティ10大脅威 2019
ホウレンソウからザッソウ(雑談・相談)へ
エンジニアを窒息させる「職場のよどみ度」計測法
ビジネスチャット「チーム手帳」での雑談が成果につながる理由
「暴言を吐かれた人は処理能力が61%、創造性58%落ちる」暴言が#職場 にもたらす悪影響
HRTの原則 ~ソフトウェア開発はバーでしっとり語り合うように ~
なぜ、ルールの多い組織では仕事の質が低くなるのか
チャットコミュニケーションの問題と心理的安全性の課題 #EOF2019
リモートワークをする人必読。組織パフォーマンスを左右する「デジタル心理的安全」とは?