OpenStudioを効率よく運用する方法
EnergyPlus/OpenStudioの日本語版テキストや講座資料を見ると、ほとんどがSketchUpプラグインで建物の形状を作り、OpenStudioのインターフェイスで簡単に編集をして、細かい所を出力されたファイルをIDF Editorで直すという作業を行っている。この方法で致命的なのは、IDF EditorからOpenStudioに戻れないということで、もし形状が変わったり、モデルに間違いがあると、元のOpenStudioファイルから編集して、IDF Editorでの作業をやり直さなければいけない。しかしOpenStudio Measureを使いこなせるようになれば、そもそもIDF Editorを使わなくてよくなり、効率よくEnergyPlusを活用できるようになる。そこで今回はOpenStudio Measureの概要とその使い方について解説する。
OpenStudio Measures
OpenStudio MeasureはRubyで書かれたスクリプトのことで、インターフェイスでポチポチクリックして編集しなければいけないところを一気に編集させることができる。さらに通常インターフェイスで編集できないSchedule:Compactなども触ることができるので、IDF Editorを使用せずにモデルを修正することができる。個人的によく使うのは、SketchUpからモデルを作ると、不要なスケジュールや外皮などがいっぱいついてくるので、それらを全部削除してくれるMeasureで、モデルをかなりスッキリさせられる。
しかし、建築の専門家にRubyの勉強のをしないとこの便利な機能が使いないとなればハードルが上がってしまうため、利用者が少なくなってしまう。そのため、開発者のNRELはMeasureを共有するためにBuilding Component Library (BCL) を作り、他の人が公開しているものをダウンロードし、そのまま自分のモデルに適用することができる。先ほどの例のように、色んな人がよく行っている作業は既にBCLに共有されていて、様々な作業を効率化されることができる。2023年8月現在、約270のMeasureがBCLに公開されている。
Measureの使い方
例えば建物全体の照明を20%下げる例を見てみる。インターフェイスのみで編集する場合は、LoadsタブからLights Definitionの中身を一つ一つ変えていかなければいけない。
Measureを適用する場合は、ツールバーの"Components & Measures"の"Apply Measure Now"を選択し、そこから出てきた画面で、"Electric Lighting"から"Reduce Lighting Loads by Percentage"を選び、入力で照明負荷を20%下げる。"Apply Measure"を押すとすべての部屋の照明負荷を編集することができる。
もし、10%減、20%減、30%減のようにいくつかの照明負荷の減少を比較したい場合、元の照明負荷を変更せずにMeasureを適用する方法もある。"Measures"タブから、右側のLibraryパネルの"Electric Lighting"を広げて、"Reduce Lighting Loads by Percentage"を選択すると、上記と同じように照明負荷を変更できる。しかし、先ほど違うのは、すぐに照明負荷を変更するのではなく、解析を行う直前にMeasureが適用されるので、ここの入力を変更するだけで比較が可能となる。さらに比較を一度に行うためには、Openstudioと一緒にダウンロードされるParametric Analysis Tool(PAT)を使うとMeasureを使ったパラメトリック解析が可能になる。
これは簡単な例だが、Measureによっては空調システムを自動的に作成したり、LEEDモデリングのASHRAE 90.1 Appendix G Baselineモデルを作成することもできる。
Measureのダウンロード方法
アプリケーション内から
一番簡単なのは、ツールバーの"Components & Measures"から"Find Measures"を選び、該当するカテゴリーからMeasureを探す方法。検索バーからMeasureを絞り込むこともできる。ほしいMeasureにチェックを付けて、下の"Download"ボタンを押すと、Measureがモデルに適用できるようになる。
BCLサイトから
もう一つの方法はBCLのサイト(Building Component Library)からダウンロードするやり方。ダウンロードしたファイルはC:\Users\[ユーザー名]\OpenStudio\Measuresに入れないと現れない。