はじめに
「数年後を見据えたときの技術課題ってなに?」と問われて、「〇〇です!」と即答できる方はどのくらいいらっしゃるでしょうか?私自身、日々の業務の中で「このコード、きついなあ」「1, 2年前と比べて、なんか状況違うな」と感じることはあっても、「じゃあ数年後のために何をするべきか?」となると、答えを見つけることができませんでした。
私も同じように、目の前のことに集中しがちで、長期的な視点を持つことに悩んでいました。いくら目の前の問題を解決しても、それが本当に未来に繋がるのか分からず、どこかモヤモヤを抱えていたんです。
この記事では、そんな私が開発責任者や上司たちからもらったフィードバックを通して、どうやって「数年後を見据えた技術戦略」を立てていったのか、そしてまだ道半ばではありますが、その過程で得た学びを共有しようと思います。戦略を立てる際の葛藤やその解決策を知りたいという方に、少しでも役立つ内容をお届けできたら嬉しいです。
フィードバックの紹介とその学び
1. 現状把握と課題の具体化
技術戦略を立てる際には、現状を正しく把握し、解ける課題を具体的に見極めることが重要です。しかし、いろんな意見を聞いたり深く考えた結果、「これだ!」と思う課題に行き着いたものの、冷静になると課題が抽象的すぎて「結局、何が問題だったんだっけ?」となることがあります。こうなると、解決のための具体的な出口戦略が見えにくくなります。
そこで有効だと感じたのが、施策の良し悪しを測るための指標を先に決めることです。具体的な指標を定めることで、課題の抽象度が下がり、現実的な行動につなげやすくなります。また、原因分析を行う際も、単に原因をリストアップするだけではなく、クリティカルな要因を絞り込むことが必要です。これにより、曖昧な対策に時間を浪費することなく、効率的に問題解決へと向かうことができます。
2. 上位目標とプロダクトの展望との接続
課題を具体化した次のステップとして、それがどのように上位目標と繋がっているのかを考えることが重要です。技術的に優れた解決策であっても、上位目標との接続が不明確であれば、結果的に顧客価値に貢献することができません。
たとえば、技術的負債を返済する場合も、どの部分から取り組むことで顧客価値により大きなインパクトを与えられるのかを検討することが求められます。特定の技術的負債を返済することで、新しい機能の実装が容易になったり、パフォーマンスが向上したり、将来的なメンテナンスコストが削減されるなどのメリットがあります。こうした観点で戦略を上位目標と結びつけることで、単なる内部改善に留まらず、ビジネス全体に対して価値をもたらすことができます。
3. 帰納と演繹のアプローチのバランス
次に、課題の解決に向けてアプローチを考える際、帰納的なアプローチ(目の前の問題に少しずつ改善を加えること)だけでは限界があると感じました。もちろん、小さな改善を積み重ねることは重要ですが、それだけでは理想の状態にたどり着くことは難しいです。
そこで、理想から逆算して考える演繹的なアプローチも取り入れることが必要です。例えば、電球の寿命を延ばすためにフィラメントの材質を改善する(帰納的アプローチ)だけでは限界がありますが、「もっと長寿命でエネルギー効率の良い光源を作れないか?」という理想を掲げた結果、LEDという新しい技術が生まれました。こうして演繹的に理想から逆算することで、普段の改善作業では見つからなかった革新的な解決策が生まれることがあります。
4. 情熱と意志の重要性
そして最後に、どれだけ論理的に優れた戦略を立てても、実行に移し続けるためには情熱と意志が欠かせないことを実感しました。上司から「〇〇くんは、どれが一番やりたいの?」と問われたとき、私はハッとしました。
それまでは「正しさ」ばかりに意識が向いていましたが、自分が心から「やりたい」「やらなければいけない」と思えることに取り組むことで、困難に直面したときもその戦略をやり遂げる力が湧いてくるものです。情熱や意志があることで、周りのチームメンバーを巻き込むことができ、長期的な目標に向かうエネルギーを維持することができるのです。
私が学んだこと
これらのフィードバックを受けて、技術戦略を立てるときには次のことを意識するようになりました:
- 現状を正しく把握し、課題を具体化することで、行動に繋げる基盤を整える
- 上位目標とのつながりを明確にすることで、戦略がビジネス全体に貢献するようにする
- 帰納と演繹のアプローチをバランス良く使うことで、現実的な改善と革新的な発見の両方を取り入れられないかを常に検討する
- 自分が情熱を持てることに集中することで、戦略を実行に移すためのエネルギーを持続させる
まとめ
技術戦略を考える中で、上司たちからもらったフィードバックを通して、多くの学びを得ることができました。現状把握、課題の具体化、上位目標との接続、理想からの逆算、そして情熱を持つこと。それぞれが技術戦略を立て、成功させるために欠かせないピースだと思っています。
私もまだまだ道半ばであり、この学びを完全に活かしきれているとは言えませんが、もらったフィードバックを受け入れ、改善を続けることで、より良いプロダクトづくりをしていきたいと思っています。