この記事は, VR・メタバース教育 Advent Calendar 2022 の10日目の記事です.
VR機器の種類
みなさんは, VRを使用する際, どのようなデバイスを使います? 現状で購入できるデバイスとしては, 次のようなものがあります.
- 高性能VR機器 (それなりの性能を持つパソコンが必要なタイプ, 例えば HTC Vive Pro)
- スタンドアローンVR機器 (VR機器単独で動作するタイプ, 例えば Meta Quest 2)
- スマートフォンVR (Cardboardに代表されるもの. 動作にはスマートフォンが必要)
これ以外にも, 部屋をまるごと使ったVR機器やメガネ型デバイス(例えば, Google Glass)などもあります.
さて, ここに上げたVR機器は, 値段に差があります.
- 高性能VR機器: 本体 10万円程度 + パソコン = 30万円弱
- スタンドアローンVR機器: 6-7万程度
- スマートフォンVR: 500円から3000円程度 + スマートフォン
費用に比例して, 体験の質や解像度は良くなります. つまり, 体験という面で言うと次のような順になります.
高性能VR機器 > スタンドアローンVR機器 > スマートフォンVR
細部が気になる, レイテンシーがというと, 高性能VRしか使用に耐えないでしょう. 手軽にというとスタンドアローンやスマートフォンVRに軍配があがります. 当然ながら価格は, (スマートフォンにかかる費用を除けば,) スマートフォンVRが最も安くなります.
教育現場へのVR機器の導入
さて, ここでVR機器を中等教育や高等教育で導入することを考えてみましょう.
1クラスが 30人から40人程度と考え, スタンドアローンVR機器を人数分揃えると,210万円から280万円となり, 簡単に揃えることはできません. かといって, 1台から2台程度では一回の講義の中で, 全員が体験するというのも難しいところでしょう. 少なくとも 1クラスの 1/3程度の台数が必要になってきます. つまり, 10台購入するとして, 購入費用として60万から70万が必要となります. この費用を結構大きな金額となっています.
また, 実際に体験をおこなう際は, 2/3の生徒の相手をする教師, 1/3の生徒の体験を担当する補助員(できれば2名)がいたほうがよいでしょう.
以前に私立の高等学校の先生と話したときに, 授業料以外に特定の科目だけで使うような機器やシステムを購入するのは難しいと聞いたこともあります. 逆に言えば全教科で使うということであれば, 初期費用として, 導入することも可能であるということです. パソコンのBYODはこれにあたります. 実際, N高/S高ではVR教育を導入しています.
スマホVRのススメ
ここまで, VR機器の種類と導入のための費用について話をしてきました.
費用面からみると, 中学校や高等学校で導入ができそうなのは, スマホVRということになります. スマホVRを使うために, 次のような枠組みを考えました.
- 生徒のスマートフォンを活用
- 学校でVRデバイス(Cardboardベースのもの)を購入
- VRアプリは開発者が作成したものを利用
この枠組に沿ったアプリとして, 次のようなアプリがあります.
- VR科学の実験
- VR Education Museum
- 分子運動力学計算 VR-MD, 2022 VR学会
- 斜方投射 Fly Ball1
- 音声入力による曲面描画 VVrplot for smartphone2
これ以外にもありますので, Google Play(Android)やApp Store(iPhone)で VRやEducationで探してみてください.
スマホVRの問題点
スマホVRには, 次のような問題点もあります.
- 生徒のスマートフォンが使えるのか? Android と iPhoneに対応しているアプリがあるのか?
- Cardboardがクラスの人数分買えるのか? (ここは買うしかないところです)
- 自分の目的にあったアプリがあるのか?
- UIはどうなっているか.
最後のUIは少し大変な部分を含んでいます. 高性能VRやスタンドアローンVRでは, 基本的に入力デバイスがあります. しかし, スマホVRでは,(標準で)入力するための機器がなく,視線での入力(しばらく対象を見る)ことが多くあります.
これ以外の手法として, 音量ボタンを入力として使う方法や音声での入力もあります. 音声ボタンだけでは簡単な入力しかできず, 音声入力には慣れが必要です. 今後は, ハンドトラッキングを使う方法もあるかとは思いますが, バッテリー消費もあるので, 万能ではありません. そのため, VRでおこないたいことを考え, それに応じたUIを利用する必要があります.
まとめ
現状で, 中学校や高等学校で VRによる教育を導入するには, スマホVRが最も適しているのではないかと思います.
色々と問題点もありますが, 今後ともVRを用いた教材開発を進めていきますので, こういうものが欲しいというのがありましたら, 連絡をもらえればと思います.