前置き
近年、AIへの開発工程の移譲が急速に加速しています。
最も大きな進化は「プロジェクト全体の解析」ができるようになった点だと考えます。
かつては、RAG(Retrieval-Augmented Generation)手法を採用し、プロジェクト全体の文脈を把握するために複雑なシステムを構築する必要がありました。
しかし、今日では、Cursor や GitHub Copilot などのツールがプロジェクト全体のコンテキストを自動で認識・解析することで、複数ファイルにまたがる改修提案が実現されています。
素晴らしいですね。
私自身、上記ツールたちを日々の開発現場で積極的に利用し、エージェント機能を筆頭に業務効率化に大きく貢献してくれています。
従来の既存コード理解や共通化&分離の手間が大幅に軽減され、実装作業やコードレビュー作業がより一貫性のある効率的なものに変わりました。
こうしたツールの登場は、全体最適化を実現する上で強い追い風となっています。
この記事で伝えたいのは
- AIエディタが進化したことで、活用の幅がぐっと広がったよ
- その中でもコードレビューでの活用方法についてAI選択基準から伝えるよ
- その準備や環境整備が、AI導入前のプロセスにおいてもレビューの質向上と認知負荷の軽減に役立つよ
コードレビューの課題とAIがもたらす解決
開発者の1日の約20%がレビュー作業に費やされているという現実をご存知でしょうか。
誰しもコードレビューの大切さは理解しているが、ついつい後回しにしてしまう経験はあるはず。
生成AIに任せられんじゃないかと考え
ChatGPTでコードレビューを試してみたものの、プロジェクトの文脈が理解できていないため表面的な指摘に留まってしまう...
これも多くの開発者が同じ経験をしているのではないでしょうか。
しかし、この状況は大きく変わろうとしています。
エージェント機能の普及とコードレビューへの追い風
コードレビューにおけるAIの活用は、大きな転換点を迎えています。
従来のAIレビューでは、提示されたコード差分のみを対象とした限定的な分析しかできませんでした。
「前後のコード」や「使用する型やメソッドの情報」などの重要なコンテキストが差分に含まれないため、AIの指摘は表面的なものに留まり、精度の高い回答を得ることは困難でした。
しかし現在、多くのツールがプロジェクト全体の解析機能やエージェント機能を搭載し、プロジェクト全体の文脈理解に基づいた提案を行えるようになっています。
たとえば、Cursor の Composer 機能に加え、GitHub Copilot のエージェントモードは、複数ファイルにまたがる改修提案を自動で生成する仕組みを提供し、従来の局所的な検証から全体最適化へと進化しています。
これにより、単一のコード断片だけでなく、システム全体の整合性や依存関係を踏まえた指摘が可能となり、
チーム全体の開発効率やコード品質の向上に大きく寄与しています。
では、それを踏まえて「どのようなAIを選ぶべきか」
どのようなAIを選ぶべきか
コードレビューを任せると言う観点で言うと、以下の3点が最も大切だと考えます。
- プロジェクト全体の解析が可能
- エディタ内でのリアルタイムコード変換提案
- カスタム指示が可能
プロジェクト全体の解析が可能
エディタ組み込み型や拡張機能型など、エディタ上で利用するAIツールは、単一ファイルの解析にとどまらず、プロジェクト全体の構造や関連ファイルまで統合的に把握できます。これにより、以下の利点が得られます。
全体把握の自動化
個別に設定情報や依存関係を記述する必要がなく、設定ファイル、ライブラリ、分割されたメソッドなどの関連ファイルを自動で解析するため、前提情報の記述量が大幅に削減されます。
レビュー精度の向上
プロジェクト全体の文脈に基づいた指摘が可能となり、分散したコード間の関連性や構造上の問題も包括的にチェックできるため、より正確なフィードバックが期待できます。
エディタ内でのリアルタイムコード変換提案
エディタ上で完結するAIのコード変換提案機能は、開発者の作業効率とレビュー精度を高めるための重要な要素です。主な特徴は以下の通りです。
-
シームレスな操作環境
エディタ内で提案が受け取れるため、ブラウザや外部ツールとの切り替えが不要となり、作業の流れが途切れることなくレビューが進められます。 -
具体的な差分表示
AIが提案する変更箇所やコードの挿入ポイントが明示され、どの部分をどう修正すべきかが視覚的に示されるため、採用判断が容易となります。
カスタム指示が可能
高品質なコードレビューを実現するには、AIにプロジェクト全体の文脈をしっかりと伝えることが不可欠です。
たとえば、Cursor ではプロジェクト直下に「.cursor」ファイルを配置するだけで、そのプロジェクト全体の構造やルールが自動的に取り込まれるため、都度プロジェクト全体をスキャンせずとも効率的に安定して文脈を把握できるようになります。
これ簡単な設定により実現できるようになったことの恩恵は非常に大きく、AI のレビュー精度が向上するだけでなく、プロジェクトのREADMEとしても標準化された情報として役立ち、チーム全体の理解が容易になります。
AI準備がもたらすメリット ― 人間によるレビューも楽に
AI を効果的に活用するための環境整備は、AI 自体のレビュー精度向上だけでなく、人間のコードレビューをも楽にする効果を発揮します。
明確なルールの整備、PR の分割、そしてコンテキストの整理により、レビュー対象が標準化され、レビュー担当者の認知負荷が大幅に軽減されます。
AIと協働するコードレビューの実践的方法
これらの機能の進化により、AIに任せられるコードレビューの範囲がぐっと広がりました。
それを踏まえまして、
- 実際にカスタム指示はどのように書けば良いのか
- 人とAIの強みを活かしたレビュー担当範囲の分割
- 質の高いコードレビューをさせるには
などについては以下の記事に現時点での考えを展開していますので、よろしければご覧ください