本番環境への新機能リリースは、常にリスクを伴います。
「もしバグがあったら?」「すぐにロールバックできる?」――そんな不安を解消する手段の一つがCanaryリリースです。
AWS API GatewayでもこのCanaryリリースが可能で、リスクを最小限に抑えながら新しいバージョンを段階的に展開することができます。
🐤 Canaryリリースとは?
Canary(カナリア)リリースとは、新しいバージョンのAPIやコードを全体に反映させるのではなく、まずは一部のユーザーだけに提供するリリース手法です。
鉄道や鉱山で「カナリア」を使って有毒ガスの検知をしていたように、異常があればすぐに検知してロールバックできるという安全性の高い戦略です。
🚀 API GatewayにおけるCanaryリリースの仕組み
API Gatewayでは、ステージごとにCanary設定を追加することができます。これにより、次のような設定が可能になります:
設定できる内容
- トラフィックの振り分け割合(例:10%だけ新しいバージョンに)
- ステージ変数の上書き
- X-RayトレースやCloudWatchログの個別記録
典型的なユースケース
- Lambdaとの統合で新しいエイリアス(
prod
,v2
など)に向けたデプロイ - 本番ステージにおいて段階的に切り替えるデプロイ戦略の一部として
🛠️ 設定方法(Lambda統合の例)
- Lambda関数にエイリアスを作成(例:
v1
とv2
) - API GatewayのステージにCanary設定を追加
- トラフィックの10%だけ
v2
にルーティングする
{
"canarySettings": {
"percentTraffic": 0.1,
"stageVariableOverrides": {
"lambdaAlias": "v2"
},
"useStageCache": false
}
}
上記では、Lambdaのエイリアスを切り替えることで、Canary先のロジックを変えることができます。
🧠 Canaryリリースのメリット
- ✅ 安全なリリース:万一問題が発生しても影響範囲は限定的
- ✅ 素早いロールバック:トラフィック割合を0%に戻せば即座に旧バージョンに切り替え可能
- ✅ 段階的な展開:ユーザーへの影響をモニタリングしながら安心して広げていける
⚠️ 注意点とベストプラクティス
- 監視を必ず設定する:CloudWatch LogsやMetrics、X-Rayなどで挙動を把握しましょう
- 新旧のバージョンで互換性を持たせる:ステージ変数やエイリアスの変更で不整合が出ないよう注意
- Canary実行期間は明確に:いつ本番100%に切り替えるのか、計画を立てておく
📝 まとめ
Canaryリリースは、APIの新しいバージョンを安全に展開するための強力な手段です。
API GatewayとLambdaを組み合わせることで、設定も簡単に行え、CloudWatchなどを活用すれば運用もスムーズです。
「いきなり本番にデプロイするのは怖い…」という方は、ぜひCanaryリリースを取り入れてみてください!