これは何?
制御工学の分野で有名な足立修一先生は、多くの教科書を書かれているだけでなく、慶應大学でのとても分かりやすい講義動画を早い時期に YouTube 公開されています。
そして、これまでの集大成として、とても分かりやすく、初学者に分かりやすく制御工学の全体像を学べる教科書、『制御工学のこころ』を執筆されました。
この記事では、この本の前編(古典制御、現代制御理論が後編です)をまとめたノートを公開します。
3つの観点と全体のアーキテクチャ
古典制御工学の醍醐味は、数学的な道具としてラプラス変換を用いて、時間領域と周波数領域の二つの視点を行き来し、さらに、複素平面上のビジュアライゼーションによって制御の直感を働かせる点だと思います。
観点としては、
- 時間領域 ... 時間 $t$ の関数 $f(t)$ 。インパルス応答 $g(t)$ の線形合成(畳み込み)。
- ラプラス領域 ... 伝達関数 $G(s)$ 。
- 周波数領域 ... 周波数応答 $G(jw)$ 。
の3つの往復。そして、本全体のアーキテクチャとして、「制御要素としての部品モデルの理解(モデリング)」、「それらの特性の解析(アナリシス)」、そして、望む制御仕様を得るための「設計(デザイン)」、という全体を大きく3つに分けた構成で説明しています。
- モデリング(Modeling)
- アナリシス(Analysis)
- デザイン(Design)
1,2,3 章と4章(モデリング)
まずは、1,2,3,4章です。ここでは、数学とモデリングの部品を紹介しています。
5章(アナリシス)
次は4章のアナリシスパート。安定性、過渡特性、定常特性などを分析します。周波数領域ではボード線図やナイキスト線図が活躍します。
6章(デザイン)
最後が6章のデザインパートです。仕様を与えられてコントローラをデザインします。
低域・中域、広域にその役割分けています。時間領域での特徴量と、極配置の関係もこの章です。PID制御とループ整形法によるデザインが紹介されます。
「フィードバック補償」も導入され、本書の後編の現代制御への期待が高まります。
次の記事では、『続 制御工学のこころ: モデルベースト制御編』について解説しようと思います。