15
7

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 1 year has passed since last update.

佐武の『線型代数学』学習メモ

Last updated at Posted at 2022-03-25

これは何?

佐武一郎先生の『線型代数学』という良書があります.基礎からテンソルまで,また,群論的な内容やLie代数的な位相につながるフレーバーも散りばめられた,初学者には難し目の本だと思います.

image.png

私は「からすま数理」というグループの毎週日曜朝の輪読会でコツコツ読み進めています.内容を図や表で説明することが好きなので,自分の手書きメモを公開します.内容的に説明が少なく,メモのみで分かるのは難しいと思いますが,せっかく書き溜めているので公開します.

この本を勉強している方の何かの参考になると嬉しいです.からすま数理,線形代数チャネルの Gaku Takaragi さんと sy_eng さんに感謝します.

第II章 行列式

p.81-82 偏微分の Jacobian

佐武p82.jpeg

p.82-83 巡回行列

離散フーリエ展開と同じ式が現れます.

D0241363-6F7B-4B5D-80BE-1980083BAEBE_1_102_a.jpeg

巡回行列の線形結合として表現できます.

佐武p82-巡回.jpeg

佐武p83-巡回.jpeg

第III章 ベクトル空間

p.94 基底の数の一意性

別証を行列表示

74DDD237-F36B-45B7-ACD7-C50C07F0CDCD_1_201_a.jpeg

p.97 系 Gram の行列式

18347D37-A907-4A5B-AECE-BF0EE1A85C6D_1_102_a.jpeg

p.112 定理9 次元定理

Satake p112.png
いわゆる「次元定理」とか「線型代数学の基本定理」といわれています.Strang 先生の本を元に解説した記事もあります.

第IV章 行列の標準化

p.144 例3 冪零行列から基底を作る

佐武冪乗p144.png

p.145 問4 最小多項式とブロック行列

$\phi_A$は$A$の最小多項式です.$A$が$A_1, A_2$に対角ブロック分解されたときに, $\phi_A$ は, $\phi_{A_1}$と$\phi_{A_2}$ の最小公倍式であることを示します.

佐武p145-問4.png

p.147-152 例4 固有多項式/最小多項式と,固有値の重解の関係

佐武p146-150.png

p.150 補題1-定理2 固有多項式・最小多項式,中国剰余定理

satake-p.150.png

いわゆる中国剰余定理およびベズーの定理(互いに素な多項式は,線型結合を使って「1」を作ることができる)を使って,広義の固有空間(A-不変な部分空間)にVをに分割できることを,射影子の存在を持って示しています.

和に分解された多項式は,それぞれの広義固有空間への「射影子」となります(射影子と広義の固有空間は,双対関係にあります).射影子を使って広義固有空間への分割を言うという論法です.

Steven Roman 先生は,「Resolution of Identity」と言う言葉で "単位行列を独立した射影の和に分解する(Vを充満する直和)" という性質としています.

P_1+P_2 + \ldots +P_n = I \quad \text{(resolution of identity=充満条件)}\\
P_i P_j = 0 \quad (i \ne j)  \quad \text{(直和条件)}\\
P_i^2=P_i \quad \text{(for all i)} \quad \text{(射影:上記2つから従う)}

p.151 冪零行列のブロック三角化(広義固有空間の不変ブロック)

佐武p151.png

p.152 例1 任意のn次正方行列Aは,可換な準単純Sと冪零Nの和 - A=S+N

ここでは,「相似関係による同値類」と「交換可能性による同値類」の2軸で行列を分類できることを示している.
さらに, $A=S+N$ という分解が一意にできる(S: 準単純=対角化可能, N: 冪零)

佐武p152.png

佐武Pl52-2.png

p.154 問1 射影と広義固有空間

実際の行列 $A$ を例にして,固有方程式から広義固有空間への射影行列を求めています.また,その射影行列を使って $A=S+N$ と和の Jordan 分解をしています.

佐武p154.png

p.157,8 Jordan 分解の実例

上の行列 $A$ を例にして,冪零行列 $N=A-S$ の構造を見ています.

佐武p156-2.png

p.157 問4

佐武p157-問4-p311答.png

p.157 Jordan 標準形(和の表示と積の表示)

佐武Jordan-p157.png

additive(和形式) と multiplicative(積形式) の両方で Jordan 標準形を表現.
どちらも, A を S(準単純=対角化可能)部分と N(冪零)部分に分解.SもNもAの多項式で表現でき,積可換である.
冪零部分(N) が分解の形を決める.

p.157 Jordan 標準形(広義の固有空間の分解イメージと例)

佐武Jordan-p157-2.png

p.164 エルミートと歪エルミート

佐武p164-4.jpg

p.169 正値対称行列の転置による積分解と2次形式(Sylvesterの慣性法則)

佐武p169.jpg

佐武p169-2.png

p.176 数(実数/虚数/複素数)と正則行列(特に正規行列)の類似対応

佐武p176-8.jpg

p.177 正方行列の分類と固有値

佐武p177-15.jpg

p.180 問10 実数行列の固有値の個数(Sylvester標準形)

佐武p180.jpg

佐竹p180-2.png

p.181 鏡映写像

佐武p181鏡映.png

p.183 例 Cayley 変換

佐武p183-22.jpg

p.186 O(n)/SO(n),GL(n,R)/O(n) の傍系分解と対称群

佐竹p186.png

佐武pl86-34.jpg

p.191 研究課題1(実数体以外の2次形式)

佐武p191-35.jpg
佐武p191-2-36.jpg
佐武p191-3-37.jpg

p.197 直交群のLie環

佐武p197-Lie-52.jpg

第V章 テンソル代数

p.202 双対空間

佐武p202-双対-1-55.jpg

p.202-203 双対空間と双対性を表す内積

佐武p202-双対-2-56.jpg

p.202 双対空間,例示

佐武p202双対計算-54.jpg

p.203 双対空間,再度簡略可視化と例1

佐武p203-61.jpg

佐武p203ー例-62.jpg

p.204 双対空間における直交空間

佐武p.204-双対の補空間.png

W^\perp = \{ f \in V^* ; <f,x> = 0 \quad \text{for all x} \in W \}

ここでの, $W^\perp$ は双対空間に存在します.Steven Roman 先生が annihilator と呼んでいるもの ($W^0$ と書く) を指していると思います.

p.205 剰余類空間(商空間)

何度出てきても混乱する概念.整数の剰余との類似で覚えている.
商空間は「補空間の元が集合になる」というのが混乱する元なんだと思う.しかも,法となる部分空間に対して,その補空間を1つ決めるとその補空間の元が代表元になるのだが,補空間の取り方に自由度がある.図で言うと,z軸にとってもよいし,法線方向にとってもよい.

佐武p205.jpg

注意点として,

  • 各同値類自体は,$V$の部分空間ではない!(最初の$W$のみが原点を含む部分空間)
  • しかし,各同値類は商空間 $V/W$の元である.
  • 商空間の元は「ベクトルの集合(同値類)」である
  • 商空間はベクトル空間である.

最近,Steven Roman 先生の動画を見ていて,部分空間S(Subspace)に対して,各剰余類の代表元をすべて含むSの補空間TをTransversal と呼び,$V=S+T$ と直和分解することができる.

これを基礎に Vを格子に区切ると,群論のラグランジュの定理(Vの位数=Sの標数*Sの位数)の類似(もしくはそのもの)となっていることに気づきました.

p.206 双対写像

ここは本当に難しい,,, Steven Roman 先生の動画を補助的に見ている. $^t\phi$ を "put $\phi$ first" と読み下して,引数である線形形式$f$に対して,$\phi$を掛けてから$f$を掛ける写像" という風に$f$を変換する,としている(直感的で覚えやすい).

佐武p206-78.jpg

p.207 双一次形式

佐武p.207-双一次-93.jpg

$B(x, y)$ の定義です. $x, y$ の両方について線形になる(一方を止めると一次函数).

p.207-208 双一次形式

ここは特に苦労しました.

佐武p207-208双一次-94.jpg

2つの $B$ が出てきて,一方は双一次形式であり,他方は $V'$ から $V^*$ への写像である.
それぞれの「行列」は,

  • 前者: $B(e_i, e_j')$ を $(i,j)$要素に持つ「$B$の行列」
  • 後者: $e_i', f_i$($e_i$ の双対基底)を底とする変換$B: V' \rightarrow V^*$の表現行列

で,それらが等しいと言っている.

p.212 一次写像の空間

ずっと,双対空間,双一次形式,と進んで,ついにテンソルが定義された.
うまく定義でき,その定義が一意である(カノニカルである)ことまで来た.

次に,一次写像全体 $V \rightarrow V'$ のなす空間 $\mathscr{L}(V,V') $ を $f\in{V^*}$ と $x' \in{V'}$ についてパラメータ化して, その元を $\phi_{x',f}: x \mapsto <f,x>x'$ としている.そして,これがテンソル積であると.

p.213 例1 行列のテンソル積

ずっと難しい状態が続いています.用語と繋がりだけ整理.

佐武p213-行列のテンソル積-102.jpg

  • $V \rightarrow V'$ のなす空間 $\mathscr{L}(V,V') $
  • $W \rightarrow W'$ のなす空間 $\mathscr{L}(W,W') $

から,

  • $\mathscr{L}(V,V') \otimes \mathscr{L}(W,W') $

を考え,普遍性から示しています.

  • $\mathscr{L}(V,V') \otimes \mathscr{L}(W,W') = \mathscr{L}(V \otimes W,
    V' \otimes W')$

これを使って, 行列のテンソル積,$A \otimes B$ を定義します.

p.214 問3 テンソル積の行列式の値

数式を追うのが辛いので,具体で攻めてみた.なるほどなるほど.

佐武p214問3-107.jpg

p.202 テンソルの定義

テンソルの途中で迷子になってしまったので,再度,テンソルの定義に戻る.
まず,これが定義. 写像 $\Phi(x,y)$ はこの後で $x \otimes y$ と正式に認識される過程を踏む.
佐武p202テンソル定義-1-128.jpg

この定義の下の補題.$\Phi(e_i,f_j)$が $T$ の基底になることと,定義の(T1),(T2)の同値性.
まずは,十分性より.
佐武p202テンソル定義-2-129.jpg

証明の式を正確に追いたかったので,行列表記をして,$i,j,k,r$の大きさと整合性をチェックしている.
佐武p202テンソル定義-3-130.jpg

次に必要性.ここも教科書の記述をトレースしながら,言葉を補った.
佐武p202テンソル定義-4-131.jpg

ふぅ.難しい.

p.213 一次写像の空間

少し前戻りしました。一次写像 $\mathscr{L}(V,V') = V' \otimes V^*$ を示した後で、このことに慣れる問題です。

$\quad \phi_{x\prime,f} : V \ni x \quad \rightarrow \quad <f,x>x' \in V' $

$V$の双対空間の元と、$V'$を使って写像を定義できる、という話です。$x$ から、$\lt f,x \gt$でスカラーに落とし、それを、$V'$の元 $x'$の方向倍率とします。理解のための練習演算。

綿形代数-140.jpeg

綿形代数-141.jpeg

(以下,順次追加していきます)

15
7
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
15
7

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?